第24話 週刊誌の記事タイトルはなんかムカつく


 それは凛が仕事に行った後、

スマホで何となくSNSを見ていた時のことだった。


 SNSのトレンドに「熱愛」「アイドル」「週刊スクープ」

と並んでいるのを目にした。


 心臓がドキンッ!と高く跳ね上がり、

座っていたソファーから立ち上がる。


 まさか俺と凛のことじゃないだろうな?

すぐに何のことかを確認する。

見ると、週刊スクープのアカウントで記事が投稿されていた。

そのタイトルは、



「極秘リーク入手!アイドルグループの裏の顔を暴露!?」



 何だよこれ!

すぐにタップして記事を開く。



「今回はある筋の関係者から極秘リークを入手!清純アイドルの裏の顔を暴く!」



 ムカつく文がデカデカと書かれている。

そして記事には写真も添付されているようだ。

写真は黒いシルエットのアイドルの姿で、下にイニシャルで名前が書いてある。



「夜の街で大胆な路チュー!清純派アイドルM」


「アイドルが大御所相手にパパ活か!?駆け出しアイドルS」



 よかった!凛のことじゃなさそうだ。

そう安心したのも束の間、記事の最後にとんでもないことが書かれていた。



「大大大ニュース!国民的アイドルグループ所属の人気メンバーの熱愛入手!」



 ま、またまたぁ〜

どうせ人気メンバーって言っても凛じゃないだろ?

それにイニシャルも・・・



「グループのエースでテレビ引っ張りだこの美少女アイドルH!ファンに隠れて巣篭もり愛か!?」



 え、え、H!?

凛の苗字は姫野、姫野凛だ。

・・・Hじゃねーか!


 いや、イニシャルがHのアイドルなんていっぱいいるか!

それにシルエットの写真も凛じゃ・・・なんか似てるな。


 ・・・国民的アイドル、グループのエース、テレビに引っ張りだこ、ファンに隠れて巣篭もり愛。

全部綺麗に当てはまってる。


 

「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」



 立ち上がって部屋の中をぐるぐる歩き回る。

どう考えても凛のこととしか考えられない。

記事の文が頭に浮かぶ。



「美少女アイドルH!」



 凛って美少女だったっけ?

いや違う、そんなに可愛くない。

それに凛の苗字って姫野だったっけ?姫村とかじゃなかったか?


 頭が現実逃避しようとしている。

凛は美少女だし苗字は姫野だ。


 でも待てよ。

グループのエースでテレビに引っ張りだこ?

凛は・・・エースじゃない!テレビも・・・そんなに出てない!

現実を捻じ曲げる。



「ファンに隠れて巣篭もり愛」



 そもそも巣篭もり愛ってなんだよ!変な比喩使いやがって!

ようやく頭が現実に戻ってきた。

一旦ソファーに座り込み、現実を受け入れる。


 まだ凛のことだと確定したわけではない。

落ち着いて、できることはないか考えよう。

深呼吸をして体と脳を落ち着かせる。


 そういえば記事のタイトルに極秘リークって書いてあったな。

誰だよ!そんなことしやがったのは!


 ちょっと待てよ。

リークって・・・


 最近の出来事を振り返る。

俺と凛の関係を知っているのは2人。


 1人は凛の妹の鈴ちゃん。

鈴ちゃんがリークするとは思えない。


 そしてもう一人・・・隣に住んでいて、凛のライバルアイドルの三島だ。 

まさか三島がリークしたのか!?

あいつ、契約とか言って本当は週刊誌にリークしやがったんだ!

そうに違いない!


 俺はそう勝手に決めつけた。

途端に怒りが込み上げてくる。



「あのやろぉ!」



 怒りに任せて隣に住んでいる三島の方の壁をドンドンドン!と叩く。

反応がない。



「無視しやがって!」



 玄関を飛び出す。

俺は奴隷として三島が家にいない時に掃除等をやらされているので、

三島の家の合鍵を持っている。

三島の家へ荒々しく入っていく。



「おい!無視すんなぁ!」



 飛び込んでそう叫んだが、

三島はいなかった。

仕事に行ってるのか。



「くそが!」



 三島が帰ってくるまで待つ気はない。

今すぐに、どうにかして週刊誌のことを三島に問いたださなければ。


 三島の携帯番号さえわかれば!

俺は三島の家のありとあらゆる引き出しを開け、

ようやく三島の携帯番号を探し当てた。

そして三島に電話をかける。



「はい、もしもし?」


「てめぇこのやろ!このやろてめぇ!」



怒りすぎて文法がおかしくなる。



「な、なんですかいきなり。間違い電話だと思いますけど」


「俺だよ俺!」


「はい?オレオレ詐欺には引っかかりませんよ」


「俺だっつってんだろ!お前の!奴隷の!」


「え、なんで私の番号知ってるんですか?」


「そんなの今はどうでもいんだよ!今話題になってる記事見たかぁ!?」


「記事?なんのことですか?」


「しらばっくれんじゃねぇ!」



怒りに任せて暴走する。



「はぁ!?何言ってるかわからないですけど、今はダンスのレッスン中なんですよ」


「知るか!今すぐ帰ってこい!今すぐ!」


「無理ですよ!」


「今すぐ今すぐ今すぐ今すぐ今すぐ今すぐ今すぐ!」


「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!」



プツンと電話を切られる。



「ああああ!帰ってきたら問い詰めてやらぁ!」


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