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所変わって、俺たち3人は近所の定食屋〈桜亭〉に来ている。

昔馴染みの店で、昔はよく姉ちゃん2人に連れられよく来ていたので店主のおっちゃんとも親しみ深かったのだが…


ガラガラ、ッパーン!

「雪人さーん!来たよー!お腹すいたー!」


涼夏の元気な声が店内に響く。


「おう!菜月!それに悠太も久しぶりだな!好きな席に座ってくれ!丁度お客さんが、はけたところだから貸し切りだ!暖簾下ろしてくるわ!」


高身長、イケメン、明るいとモテ要素の三拍子が揃ったような男が厨房から出てきた。


来る途中で涼夏に聞いた話だが、元の店主のおっちゃんは息子が20歳になったのを機に息子に店を譲り、奥さんと世界を回る旅に出たらしい。


なので、今の店主は息子の桜雪人(さくらゆきと)俺は雪兄(ゆきにい)と呼んで慕っている。

姉ちゃん達の同級生で、こっちにいた頃はちょくちょく一緒に遊んで貰っていた。


「久しぶりー、雪人君、元気してた?」

「うっす」


暖簾を下ろして戻ってきた雪兄に挨拶を返しながら俺たちは厨房に一番近いカウンター席に3人並んで座った。


「まぁ、あれから4年たってやっと前を向こうと思ってる所だな…それにしても悠太は髪が伸びたな〜!身長は変わらんけど益々姉ちゃんに似て来てるぞ!本当に付いてるのか??」


「うっせぇ、姉ちゃんに似て来たからって俺に惚れんなよ?」

雪兄の不躾な質問に軽くイラついた俺は挑発気味に返してしまった。

デリカシーのかけらも無いところも変わってない。

「こら悠太、その言い方は良く無いよ」


そんな俺を姉ちゃんが嗜める。


「いいんだよ、思いも伝えられず、好きだった女も守れなかった……俺は情けない男だ…」


葉月姉ちゃんの時間があったあの日、雪兄は一緒にいなかった事を葉月姉ちゃんの葬儀の最中ずっと泣いて後悔していた。

雪兄にデリカシーが無いのは元々だ。相手の心の傷を抉るような自分の無神経な発言に罪悪感が募る。

「わりぃ、言い過ぎた…」


「気にすんな、葉月の事を忘れたり軽視するわけじゃないが、いつまでもへこたれてんのは性に合わないし、葉月も俺たちの暗い顔は望まんだろ」


「雪兄は凄えな、俺は寝ても覚めてもあの日のままだ…」


「悠太…後で話がある。まあ、取り敢えずみんな腹減ったろ?今日は俺の奢りだ!好きな物頼め!」


どんよりとした空気を払い除けるように雪兄が声を張り上げた。

「よ!雪人くん!太っ腹!じゃあ、私は野菜炒め定食にしようかな」

「俺は唐揚げ定食にしようかな」

「雪人さんの奢り♪雪人さんの奢り♪じゃあ私は唐揚げ定食と!単品で海老フライとイカフライとアジフライ一人前ずつ!もちろんごはんは大盛りで!」


「野菜炒め定食と唐揚げ定食ね…このチビ怪獣は遠慮ってものをしらんのか……」


「ふふん、育ち盛りの私にはカロリーが必要なのです!」


雪兄の悪態に胸を張って涼夏が返す。

こいつは昔から大飯食らいだ、どんだけ食べても縦にも横にも前にも育ってないけどな。


「横に育たなきゃ良いな…まあいいや、少し待ってな!」


帽子の上から頭を掻き、恨言を言いながら調理を始めた。

隣で涼夏と姉ちゃんが女子トークを始めたので、俺は雪兄の調理をぼーっと眺めている。

無理に混ざる必要はないからな。




――――――――


「ようし、できたぞー!野菜炒め定食、唐揚げ定食2つお待ちぃ!」


10分ほど経っただろうか、お盆に載せられた料理が目の前に運ばれてくる。


「あれ?私の足りてないよ!」


「お前の単品料理はこれから作るからもう少し待ってくれ」


「じゃあ先に唐揚げ定食から…いただきます!!」


先に食べ始めた涼夏に続くようにして、俺と姉ちゃんも

「「いただきます」」


「雪人さーん!ご飯おかわり!」


「はや!丸呑みか!?」

たまらず雪兄がつっこむ。

俺たちはまだ割り箸すら割っていない…なんだこいつ化け物か?


「やだなー!ご飯は熱いうちにって言うでしょ!?それに丸呑みじゃなくてちゃんと噛んでるよ!きっとご飯中だけみんなと時間の流れがちがうんだよ!きっとね!」


「お、おう…」

諦めたようだ。


気を取り直して、俺たちも割り箸を割って食べ始める。

……うまい。


「雪人くん料理の腕さらに上げたねー、美味しいよ」

昔から雪兄の料理は美味かった。

うちの両親も蓮さんも帰りが遅い時は、雪兄を呼んで料理作ってもらってたっけ、うちは姉ちゃん達が料理できなかったからな。

ちなみに俺は、雪兄に教わりながら簡単な料理は作れるようになった。

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