赤ずきん1
勝手にアバターの名前と容姿を決められ、雑なチュートリアルを終えた王子たかしは何処の話世界ストーリーワールドに行くか悩んでいた。
「うーん、どれにしようかな?俺のレベルだとまずは赤ずきんちゃんか。定番だな」
ポーション等の回復アイテムを用意し、いざ出発する。
・赤ずきんちゃんのあらすじ
赤い頭巾を被った可愛い女の子がおりました。赤い頭巾を被ってるので、周りからは赤ずきんちゃんと呼ばれていました。
赤ずきんちゃんはお母さんのお手伝いで森の奥に住むお婆ちゃんの所へパンとワインを届けに行きました。
パンとワインのビンが入った籠を持って歩く赤ずきんちゃんを見つけたオオカミは毎日、お婆ちゃんの家へ向かう事を知っていたので先回りをし、お婆ちゃんの家で待ち伏せをする。
オオカミはお婆ちゃんを食べ、お婆ちゃんに成り済ますと赤ずきんちゃんまで食べてしまうのでした。
近くを通り掛かった森の猟師がオオカミを殺し、オオカミのお腹を切り裂き赤ずきんちゃんとお婆ちゃんを助けたのでした。
めでたしめでたし。
「初めて入ると、あらすじが流れるのか。一般に知られてる赤ずきんちゃんの話だな。まぁ、実際は少し違うけどね」
「出現するモンスターも獣系というかオオカミしかいないな。まぁ、ゲーム素人の俺でも楽かな」
ガウガウと襲ってくるプチウルフやチャイルドウルフを初期装備の刀で倒していく。
「はあぁぁーー、十字切り」
パランとプチウルフが光の粒子になり消滅したとこで、プロローンとレベルアップの効果音なりレベル3に上昇した。
「ふぅー、レベル3か....ん、あれは赤い頭巾?....赤ずきんちゃんか!?さっそく、見つけてしまったよ。声を掛けるか」
声を掛けるか悩み中に赤ずきんちゃんがプチウルフ5匹に襲われそうになっていた。
「きゃーーー!誰か助けて」
『ガルルルゥ、ガウ!』
「はぁーーー、喰らえ」
・クエスト:赤い頭巾の少女を守れ!
・内容:残りのプチウルフを倒せ!
・クリア条件
勝利:プチウルフ全滅
敗北:王子又は赤い頭巾の少女死亡
・報酬:EXP500、お金300ゴル
・受けますか?
イエスorノー
もちろんイエスだ。イエスを選ぶと頭上にカウントダウンの数字が現れた。
3....2....1....GO
カウントダウンが0になると、一斉にプチウルフが王子たかしだけではなく、赤ずきんちゃん?にも遠慮なく襲い掛かってくる。
「危ないから後ろに下がって」
「うん、ありがとう」
赤ずきんちゃん?を後ろに下がった事を確認すると、
「はぁぁぁー、回転切り」
『ギャウ』とプチウルフの首が飛び、リアルに血が吹き出しパリンと光の粒子で消滅する前にダッシュし次々とプチウルフを全滅させたのである。
・クエストクリア
・報酬:EXP500、300ゴル
プロローンとレベルアップの効果音がなり、先程の報酬でレベル5に上昇したようだ。どうにか、初クエストをクリア出来て良かった。
「た、助けて頂き、あ、ありがとうございます。えーと、お名前は....王子様?」
「あ、いえ、王子と書いて"たかし"と読みます」
まぁ、普通はそう読むよな。自分の名前にコンプレックスを持ってるので、別の名前でプレイしたかったが仕方がない。
「す、すみません。でも、私を助けた姿は、まるで王子様です。だから、王子様と呼んでも構いませか?」
赤ずきんちゃん?は王子たかしの手を握り、キラキラと瞳を輝かせ見詰めている。これでは、断れるはずないだろう。
「はぁ、分かりました。それで、君は....赤ずきんちゃんだよね?後、手を離してくれると....」
「あぅ、す、すみません。確かに周りからは赤ずきんと呼ばれてますけど、お会いした事ありましたっけ?」
「いえ、初対面のはずです。有名ですから」
「えぇー、有名なんですか?何か、恥ずかしいです。あ、私の名前まだでしたね。私はシャルルと言います」
赤ずきんちゃんことシャルルは赤い頭巾を取りお辞儀をした。赤い頭巾を取ると、顔全体が露になり髪は金髪で肩まであり可憐よりは美人である。
「それで王子様は、ここら辺では見ない顔だけど外の世界から来たの?」
やっぱり王子様と呼ばれるのか。まぁ、こんな美人な人から呼ばれるなら悪くないかな。
完全に鼻の下を伸ばしてる
「えぇ、そうですよ」
「わぁー、私、外の世界に憧れてるの。ここ、草原や森しかないから。もし、良かったら、その~、外の世界でのお話聞かせて貰えませんか?お願いします」
また、キラキラと憧れの眼差しが眩しい。これを断ったら男ではないと、了承しようとした瞬間クエストが発生した。
・クエスト:赤ずきんシャルルとお話せよ!
・クリア条件:赤ずきんシャルルとお話して満足させる事
・報酬:???
受けますか?
イエスorノー
へぇー、こんなクエストもあるのか。もちろんイエスを押した。
「いいよ。それじゃ、どんな事から話そうか」
近くにある木の切り株に座り雑談をする事にした。
「王子様はどんな所にお住まいですの?」
「そうだな。もし、シャルルさんが俺の世界を見たら驚愕するだろうな。それだけ、こことは違いすぎて。見せれば良いんだけど....」
シャルルを見ると「うふふふふっ」と笑顔満面で楽しんでいるようだ。とりあえず、不満でないようで安心するが、クエストのクリア条件が曖昧で油断は出来ないままだ。
「あ、笑ってすみません。久しぶりに母さんとおばあちゃん以外と話すもんでしたから。楽しくて。後、私の事はシャルルとお呼びにしてください」
「え、でも....それなら、俺の事も
「それは譲る事出来ません。王子様、私の事をシャルルと」
シャルルに手を握られ、これは呼び捨てしないとループしてしまうと感じ諦めた。今、思ったがシャルルの手柔らかく花の香りだろうか髪からフワッと良い香りが漂ってくる。
「わ、わかったよ。シャルル、これで良いかい」
「はい♪王子様」
満面の笑顔でニッコリと笑い、王子たかしはシャルルの笑顔にドキドキと心臓が早くなっていた。もしかしたら、一目惚れかもしれない。現実でも恋をした事ないので、この感覚に王子たかしは手間取ってる感じである。
「そ、それでシャルルはお母さんとおばあちゃんの三人暮らしなのかい?」
まだ、クエスト中なので話題を変えようとした。
「いえ、母さんと二人暮らしです。おばあちゃんは、この先にある森の中で暮らしています」
シャルルの指先の方向を見ると、奥深そうな森が存在したいた。
(童話の赤ずきんもおばあちゃんの家は森の中だったな。お話通りだとすれば、問題はオオカミが何時いつ現れるか?だな。
オオカミが現れなければ、話が一向に進まないからな。しかし、今はこのクエストクリアだな)
「へぇ~、おばあちゃんは一人で大丈夫なの?」
「はい、それでこれをおばあちゃんに届ける途中なのです。届ける途中でオオカミに襲われて━━━その時にあなた、王子様が現れたのです。颯爽とオオカミを倒すお姿は....なんて素敵だったんでしょう」
シャルルは突然立ち上がり、クルクルとその場で回ったり、実際には見えないがハートのオーラが出そうな程クネクネと動き王子たかしの事をベタ褒め....というかシャルルの頭の中では王子たかしはどんな事になってるのだろうか?何故か怖くて聞けない。本能がそう訴えかけている。本当にNPC(AI)なのだろうか?
「ところで、王子様のところは何人家族ですの?」
くるりとシャルルがこちらに向き、急に話題を変え、こちらに話を振ってきたのでビックリした。
「ん、俺は母さんと父さんと妹の四人暮らしだ」
「まぁ、妹さんがいらっしゃるのね。会ってみたいわ」
ここはゲームの中なので無理なのだが、何故か妹とシャルルを会わせたらいけないと、頭の中で警報がなっている。
俺の妹はゲームやらないので、この二人が出会う確率はゼロのはずだが、俺の頭の中では将来確実に会いそうで怖い。
「あはははっ、そうだね」
シャルルに気づかれてないが苦笑いしながら答える。だって、怒らせたらダメだと思ってしまったから。
「王子様は普段は何してるんですの?」
「学校と言う建物に通って勉強をしているんだ。学生だよ」
「王子様は学生さんなのね。聞いた噂によると、この世界の何処かに魔法学校があるみたい。いつか通ってみたいのが私の夢の一つよ」
一つということは、まだあるのだろうか?
「その....夢はまだあるのかい?」
「えぇ、あるわよ。今出来た夢がね。でも、ひ・み・つよ。あらやだ。もうそろそろおばあちゃんの家に行かないと━━━━あ、そうだわ。王子様、頼みが有るのだけれど、おばあちゃんの家まで護衛してくださらない」
・クエストクリア
・報酬:赤ずきんシャルルの好感度+5
新たにクエスト発生しました。
・クエスト:赤ずきんシャルルをおばあちゃんの家まで護衛せよ!
・内容:赤ずきんシャルルをオオカミから守りながら、おばあちゃんの家まで行く事
・クリア条件:おばあちゃんの家に到着
・失敗条件:王子たかし又は赤ずきんシャルルの死亡
・報酬:EXP1000、1500ゴル、???
受けますか?
イエスorノー
赤ずきんの話を進めるためというのは、建前でまだシャルルと一緒にいたいという思いでイエスを押したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます