第10話 犬よ廻る廻れ
「大事な話があるの」
「うん、どうした。缶詰に不満か?」
「ちゃんと聞いてほしい」
「え? どうしたの?」
「別居してから1年と半年、あなたと暮らしてきた。そろそろ本当の話をする時がきたわ」
玄関に行き、ドアを叩いた。すると美里が3匹の小犬抱き、他に一匹大人の犬がいた。
「何事だよ……寒いだろ、早く中に入れよ!」
美里がモグに「あとは私が話すわ」と伝えた。「お願いします」とモグは返した。
「ごめんね。突然。でもあなたにも知ってもらわなくちゃならないの」
「うん。何?」あまりに用意周到なのでちょっと腹が立っていた。
「六道輪廻というものあります」
「地獄界」
「餓鬼界」
「畜生界」
「修羅界」
「人間界」
「天上界」
「私とあなたは人間界にいるわ。モグ達は畜生界にいる。モグとトラは私達の生まれ代わり……」
「何を言っての?トラって誰だよ?」
「ここにいる。モグの旦那様よ」
「え? じゃあ、おまえが抱いているのはモグの子供か?」
「そうよ。可愛いでしょ!」
「可愛いいけど……トラは僕の生まれ代わりなの?」
「そうよ」
「でもそれっておかしくないか?現世と来世が同時進行してるじゃない?」
「おかしいわよ。私もモグから初めてあなたの生まれ代わりと言われた時は信じられなかったわ。輪廻とか知らなかったし!でもモグは前世に行き、冒した罪の深さを知らしめることを許されたの。ブッダにね」
「ブッダ? 仏教か?」
「そうかもね」
「う~ん、人間界から畜生界へとやられるほどの罪を冒したということか。確かに僕がそうなるのはわかるよ。しかし美里が畜生界に行くのはおかしくないか?」
「うふ、あなたのせいよ。私達は輪廻してもず―と夫婦なの。次、その次も、その次の次も……」
「う~ん。そんなものなのかな~、で冒した罪とは何だよ。借金か?」
「違うわ……親への大恩に背いたからよ」
「親への大恩?」
「そう、これを怠ったが故に畜生界にやられた。でもモグ達を見れば子供を授かってるわ。今の私達には出来なかったことよ。畜生界でも子供を授かることができるなんてモグがうらやましい」
「お前、そんなに……」
「だから親への大恩を感じるのよ、そしたら来世で畜生界でも子供が持てるわ!」
「いきなり来て、来世で子供を持つ為に親への大恩を感じろと言われても……正直、なんか、これモニタリング?」
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