2話.不死身と天才と全知全能
午前中から降りしきる雨は、夜中になっても止むことを忘れていた。
「別にカプセルホテルでもビジネスホテルでも、どこでもよかったのだけれど」
「そう言うわけにもいかないだろ。それに、一応ビジネスホテルだ。最近のビジネスホテルは設備が整っている場所が増えているそうだ」
出来ることなら、今日中に京都に到着したかった。二人用のダブルベットの片側に横たわる
「明日、京都に到着する」
「……
「思い出の地……ねぇ。……その玲衣の画像とか、スマホに送ったり出来るか?」
「ちょっと、待つですわ」
染毬の両目の眼球が、
「染毬……人間性を疑ってもいいか?」
「どうでもいいから、早くディスプレイを見るのですわ」
「この子が、玲衣か……」
「あなたの隣の試験室にいた、
冷静に人間を、
「毛色は
「あなたの事を彼は知っているみたいだったけど、一度も会ったことはないかしら?」
「……」
どれほど思索しても私には、
「いいえ。
「ん?」
「いえ、違うの。私たちが捜索している無限坂 玲衣は、貴方とは根本の異なる特殊体質の持ち主ですわ」
***
部屋は物色され、足元には脱がれた衣服が散乱している。呼吸は正常である。ただ深い睡眠に落ちているのだ。その手元には、『ありがとう。おねえちゃん』と書かれた書き置きと、ピン札の一万円札のみが添えられている。閑散とした一室という情景の引き金。
その背景の中心に立つべき一人の子は、数キロ遠方の、建設中という張り紙や立て札で厳重に隔離されている建造物にいた。
鉄柵と青いビニールシートに囲まれた要塞。最奥の角で、荒い息遣いのみが反響する。一人の子はうつ伏せになり、下腹部を抑えながら唾液と精液で床を汚損させていた。
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。ああああああああああーー!!」
その金切り声が、外に届く前には雨音で掻き消された。
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