瑞樹の思案
トイレの個室で私は思案する。
便座のフタを開けず、そこにちょこんと座る。
この光景は、他者が見たらシュールかもしれない。
にしてもてんちゃん、今日は一体どうしたのだろうか。
自分から手を繋いできたり。それはまぁ、交流会を理由付けていたけど、いざこんな大勢の人がいるところで手を繋ぐとなると、やはり恥ずかしい。でも、繋ぐ。
まぁ他にも、好きって言っただけで、過剰な反応を顔に出したりして。
前に好きって言った時も、あんな顔はしていなかった。
てんちゃんは、私のこと好きなんだと思う。勝手に思ってる。
というか、最初も好きって言ってたし。
ということは、両想いということになる。
向こうが好意をあらわにすることは無いだろうと思っていたけれど、これなら話は早いのかもしれない。
付き合ってくれたら、もっと一緒にいてくれるよね?
そしたら、キスしたり、ちょっとえっちなことしたり出来る。
安心感のさらに上の気持ちを、得られることができるのだ。
中二でこれは、ませすぎかな?
でも、いいこと尽くめじゃないか。とは思う。
私を苛ませていた母さんが死んだことに対する思いが、てんちゃんのお陰で和らいできている。
昔のことに、なよなよしていても仕方がない。今だけを見ればいい。
そう、てんちゃんは私に思わさせてくれた。
愛の力? そういうのは恥ずかしいけど、それが正しいのだろう。
もう。私は、次の段階だ。
あれ? まだてんちゃんが、うちに来て四日目だったよね?
早い? いや、早くない。
それほどまでに、てんちゃんの存在は私にとって強大だから。
でも、だからこそ、再びいなくなったらと思うと、私はもう耐えられない。
だから私は、てんちゃんに求め続ける。求め続けないといけない。
焦りすぎかもしれないけど。それでも。
「水族館デート」という言葉の響きに騙されて、告白するのも別にいいのかな。
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