第17話 家政"夫"と和子のたくらみ
「康太、ココ痛い?」
朝、仲良く浴槽に浸かる2人。京介は康太のお尻を触り言う。
「大丈夫です」
「嘘!痛いんだろ?」
「そりゃ痛いですよ、僕はじめてだったんですよ?なのに、こんな何回も……」
「ごめん、康太があまりにも可愛すぎるから。お詫びに今日は俺がお前の世話をするから何でも言って。何して欲しい?」
「じゃぁ……」
「じゃぁ?」
「キス……してほしいです。」
「そんな俺をまた煽るようなこと言って……後悔するなよ!」
音がなるほど吸い上げるようなキスをする2人。
風呂の温度が高いせいか、湿度が高いせいか、さっきまでベッドで愛し合ったのにまた風呂釜の中で愛し合っていく。
「康太……お前を好きで好きでおかしくなりそうだ……」
「京介さん、京介さん!あぁそこ……もっとーー!あぁぁぁ」
風呂上がりに時計を見ると、10時45分になろうとしていた。
「!大変です京介さん。昼には和子さんが帰ってくるのでは!」
「あぁ、そうだったな、もう帰ってくるのか……
もう少しどこかにいってくれてもいいのになー……。
そうだ!今度はさ、海外旅行でもプレゼントして行ってきてもらう?ヨーロッパ辺りなら2週間ほど時間作れるんじゃないかな?
そしたら2週間ずっと康太とセックス三昧!」
「もう!バカなこと言わないでください。そんななったら僕は死んじゃいます!」
「大丈夫!お前を死なせたりしない。」
そういって康太の手にキスをする。恥ずかしくて俯く康太
「もう……。お昼ごはんの準備してきます」
康太が部屋から出ていくと、ベッドの布団の上に京介はゴロゴロと転がる。
幸せだ…………。
キッチンで昼食の準備を始める康太も、いまの幸せを噛み締めていた。
あんなに好きって。僕のこと京介さん好きって。
鼻歌混じりで料理を作っているとふと和子の言葉を思い出した。それは、この家に初めて訪れたときのことである。
『あ、康太さん、職場恋愛は禁止ね!
恋心はクビ対象だからいいわね?
先日の家政婦にもちゃんとこのことを伝えてたのに、
京ちゃんのこと好きになったみたいで辞めてもらったの。
京ちゃんのこと好きになるのはわかるけどね、
こんなにいい男だもの。ね。
でもほら、
自宅で仕事するのにそんな気持ちの人がいたら困るじゃない?
それに、
京ちゃんにはしっかりとした人と結婚してほしいしね』
幸せいっぱいだった康太にそこ知れぬ不安感が襲ってきた。
どうしよう、この気持ち、和子様に知られたら……。
どうしよう、京介さんは僕を好きと言ったけど、今までの人はどうだったんだろうか……
僕以外ともこんな……
こんなことをしていたのだろうか……
みな、京介さんとこんな関係になったから辞めて行ったとか…
ないよな……?
ダメだダメだ!こんなことを考えてちゃダメだ。
不安感を払拭させようと必死で料理に集中していった。
昼食の準備がほぼ終わりが見えた頃、和子は帰ってきた。
「ただいまー!」
「おかえりなさいませ和子様、楽しかったですか?」
「うんとっても!あとで写真見せるわね。京ちゃんいるかしら?」
「はい、お部屋に。ご飯もちょうど出来ましたので、呼んできます。」
「ありがとう」
和子はダイニングに腰掛けた。康太は京介を迎えに行った。
ノックをし、いつも通りに部屋へと入っていく。
「京介さん、和子様もお帰りになりました。
お食事の用意も出来ましたので食卓までよろしくお願いします。」
頭を下げると京介は康太の腕を掴み
「お食事? 康太をまた食べていいの?」
誘うように康太の腕にキスをする
「お…お…お母様との昼食です!どうぞ!」
と京介を抑え言います。
そんな康太がまた一層かわいいと思う京介なのでした。
「仕方ないな、2人きりは夜までお預けか。夜はまたたっぷりと……な。」
顔が赤くなってしまった康太は慌てて部屋から出てキッチンへと向かった。
京介は身なりを整え、ダイニングへと向かった。もう既に和子が座っている。
向かいの自分の席に座る京介に和子が話しかける
「京ちゃんただいま!とっても楽しかったのよ!
景色も良くて空気も良くて。料理も美味しくてね。最高だったわ。
エステも気持ち良くてね。たまにはあんなのもいいわ。
今度は京ちゃんも一緒に行く?」
康太は昼食をテーブルに並べ終わると自身も座った。
「よし、じゃいただこうか。いただきます。」
3人でテーブルを囲み日曜の昼みんなで食事をとる。
何気ないこの行動でも、康太は涙が出そうなほど幸せを感じる。
「旅行の話をたっぷりしたいんだけど、ちょっと急がないといけないのよね。
康太さん、今日がお休みなのは十分わかってるんだけど、少しお仕事頼んでもいいかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。なんでしょう?」
「今日はね、このマンションの8階に引っ越してこられる方が夕方にはご挨拶にいらっしゃるの。だからそこでお茶とケーキを出していただきたいのよ」
「ケーキをでは買ってきます」
「いやいいわ、ケーキはもう買ってきたから。だからあなたには美味しい紅茶を用意してほしいの。この前のあのダージリンがいいわ。あれを用意しといて。」
「かしこまりました。引越しの挨拶にここにまで来るなんて珍しいですね」
「そうなの。いつもは誰がいつ入居しようが私たちに挨拶などしてもらうことは無いのだけれど、今回はちょっとね。
京ちゃん、髭もきちんとして!
よければ美容院に行ってセットしてもらってきたら?
服は、まぁそれでもいいか?」
「別にこのままでいいよ」
「良くないわよ!
もう京ちゃんが何も言わないからわたし、戸上(京介の会社社員)から聞くまで知らなかったじゃない。だから慌てて帰ってきたのよ!
京ちゃん、あなたは知ってたのよね?
今日から8階に高柳のお嬢様が入居すること!
知ってたんでしょ!」
「別に誰が来てもいつも通りの対応でいいんだよ、特別扱いする必要ないだろ」
「高柳家?」
1人、何も知らない康太はキョトン顔。
「そう!高柳家のお嬢様!
資産数百億と言われている名家でね、そこのお嬢様はまたそれはそれは素晴らしいと有名なのよ。
眉目秀麗で賢くて気立ても良くて。非の打ち所がないとはまさに彼女のような人のことね。
そんな彼女がね、なんでも大学院にこの春から通われるから初めての一人暮らしをしたいと申し出て、今日からうちのこのマンションで、1人暮らしをすることになったんですって!
初めての一人暮らしよ?不安も困難なこともたくさんあるでしょう?是非ともお近づきになって、仲良くしましょ。助けてあげなくてはね!ママ楽しみだわ!
22歳と29歳!年の頃合いもちょうどいいわね!
ね!ママね、絶対京ちゃんにはお似合いだと思うのよ!」
和子のそんな言葉はどうでもいいと言わんばかりに返事もしない京介。
そう…… 和子は京介の将来の伴侶として相応しいであろうお嬢様がこれからこられるということで、旅行の余韻を楽しむことなく、来客への準備をしに帰ってきたのだ。
せっかく手にした幸せが逃げていきそうな
そんな不安を康太は感じずにはいられないのだった……
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