第23話 不審な手紙

夜寝る前に、届いた手紙を整理することにした。 


手紙の中に、王弟殿下の娘…つまり私とカヒラの従妹にあたるオデリアナ=ルーベルスカイ公爵令嬢の手紙があった。


実は…カヒラの一番酷いイジメ対象だったのが、従妹のオデリアナなのだった。


オデリアナが私と似ている外見なので、美醜の外見の事と、王位継承権持ちの公爵令嬢…私を除く中でカヒラと同じ年で、自分と一番比較対象にされやすい身分というのがカヒラには気に入らなかったと思われる。


それになんといっても、オデリアナは気が強いのだ。それは悪い方向の気の強さでなくて、曲がったことは大嫌いで売られた喧嘩は全て受けて立つ!…という性格なのだ。


当然、大型白饅頭(カヒラ)のような理不尽なことでキャンキャン噛みつく女なんて、オデリアナには許せるはずもなく…カヒラにしてみれば、暖簾に腕押し状態の私とは違い真っ向から噛みついてくる強敵にして、中々勝てない相手としてオデリアナを意識しているようだった。


そんな白饅頭は、オデリアナとの真っ向勝負を継続している…ということはなく、最近ではオデリアナを自分のテリトリーに入れないように躍起になり始めたのだ。


ところがオデリアナを社交界から追い出そうとしても、王弟殿下に睨まれて叶わず…母親(現王妃)に泣きついてオデリアナに小細工したらしいのだが、別部隊のイガモノに阻止されて悉く不発。(注:お頭が「全て適切に処理されたようです」の言葉から私なりの推察)


今現在は、双方の陣営(現王妃と王弟殿下)が2人が社交の場でかち合わないように、スケジュール調整を行って何とかしのいでいるらしい。


オデリアナとカヒラ…姿形は赤薔薇と雑草くらいのレベチだけど、二人共に気が強いんだよね、故に反発も凄いけど…


と言う訳で、オデリアナは白饅頭にも臆さずに王城に遊びに来てくれていたので、私には心強い存在だった。


オデリアナからの手紙を読む前に、薔薇のような美しいオデリアナの容姿(この世界ではド級の不細工)を思い浮かべながらゆっくりと文面に目を落とした。


オデリアナの手紙にはこう書かれていた。


ナノシアーナが嫁に行って、話し相手がいなくなってすごく淋しいこと…実はカヒラが急にナノシアーナの婚姻に謎の対抗意識を持ちだして、自分も婚姻する!と宣言し…お相手探しに乗り出したこと。まずは近隣国の王族を狙っているとかなんとか?


オデリアナの文章を要約すると、どうやら私より格上(公爵位より上?)の旦那を手に入れて私にマウントをとりたいらしい、との事だった。この辺りのオデリアナからの説明は丁寧で上品な言葉遣いを選びつつ、だが内容はギタギタにカヒラをこき下ろしていた。気持ちは分かる…


そしてカヒラを下げに下げた文章の後、これが一番伝えたかった事らしい文面が長文で書かれていた。


こんな時期に隣国のリスガレリア帝国の第二皇子殿下から、自分に婚姻の打診があった。お父様(王弟殿下)は是非お受けせねば!…と大喜びなのだが、婚姻が~婚姻が~とカヒラが騒いでいる時に自分に隣国の皇族から打診があったなんて知られたら、また煩く騒がれるのが面倒くさい。しかも第二皇子殿下はすぐにでも自分と顔合わせしたいと言ってきており、不審に思って返信の手紙でさり気なく探りを入れると、事情は会ってから説明する…と、これまた不審な返事を返して来て益々怪しいこと…等々。


「帝国の皇子殿下が何か企んでいるのじゃないかしら?」


なんて、気の強いオデリアナの声が文面から聞こえてきそうな手紙の内容だった。


何だろうね?…そして同じく私の友達の一人、ミレージュ=フレオ伯爵令嬢からの手紙はこうだった。


『お兄様が急に不摂生を正そうと目覚めたようで、お前のように痩せるにはどうしたらいいんだと、聞かれたのですが…私の場合は太れない体質だと思いますけど…と答えたら怒られました。何だと思われます?』


「??ホントに何かしらね?」


手紙を読みながら私も首を捻ってしまった。

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