桜木 利春

次の百年のための祈り

すべては夢から生まれてくる

僕が存在を獲得する前の夢に

まどろみの中で鳥が置いていった

言葉を忘れてはいけない

いつでも胸の中に

とどめておく必要がある。


僕はいまポンペイの町にいて

悠然と聳えるヴェスヴィオ山を

眺めている。

町は豊かで、僕は街道沿いを

歩いている。

僕にとってのポンペイを。


誰かが呼んでいる気がする

南国に渡った燕たち

帰っておいで、ここまで

帰っておいで

あの子はどこへ行ったの

南国に行ったきり、どうしてしまったの?


ソドムとゴモラは享楽に満ちている。

人々は遊び、楽しんでいる。

僕は恋人とこの町に来た

ばかりだが、陽気さに当てられて

そうだ僕の生まれ故郷なんだ

ここはずっと住んでいたんだ。


おお、一時の喜びを

僕とお前とに

与えてくれ

ファウスト博士が望んだように

おお、燃える僕とお前とが

燃えてゆく


跡形もない廃墟に

燕が去った古巣に

美しかった頃の夢が交わり

燃えた、僕の夢から

生まれてくる

思い出せ、約束を。

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