幽霊編
特殊設定ミステリ
「ボブ、このニュースを見たかい?」
スマホを見ながらアリスが話しかけてきた。
「いや、このニュースってどのニュースだよ」
ボブはアリスのスマホを覗きこんだ。
「なになに、幽霊による殺人が問題化?」
「そうなんだ」
「そうなんだ。と言われても……なにこれフェイクニュース?」
「いや、実際に起きてる問題だよ。ミステリで言えば"特殊設定"ってやつさ」
特殊設定とは、主にミステリ小説で使われる技法の1つだ。
例えば、"死んでからも幽霊として活動できる"といった設定を考えてみる。幽霊として枕元に立って犯人の名前を告げることができるとしたら、犯人はそのことを前提にして慎重に殺人計画を実行しなければならない。こうした現実世界ではありえないようなSF・ファンタジー要素をミステリに持ち込んだ作品を"特殊設定ミステリ"と呼ぶ。
「でも幽霊が殺人なんて出来ないだろ!?」
「そこは設定次第さ」
「それにここは現実の世界なんだし」
「僕らは幽霊じゃないか」
そうなのだ。
アリスは僕を殺してから自殺しており、その結果めでたく……では無いけれど僕らは幽霊になったのだ。アリスは"ゴーストライター"とやらを満喫しているらしいが、僕としては毎日が退屈で仕方ない。
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