第4話召喚

「母ちゃん、みんなごめん。もうすぐそっちに行くから待ってて。ロン、お前ともっと話しておきたかったよ。短い人生っだったけどつまらない人生だったな。あぁ、まだ生きていたいな。」


アランは死ぬ間際に見える走馬灯を見ながら、まだ生きたいと強く願っていた。


「ヴモー!!」


急に目の前でムッカの声がした。


本来なら自分はすでに角に刺されて死んでいるはずなのに。


不思議に思いながらもゆっくりと目を開けてみると、ムッカを囲むように炎が広がっていた。


「なんだこれ」


アランは目の前に広がる光景に驚いていた。


先ほどまで自分に向かってきていたムッカが炎の輪の中で暴れまわっているのだ。


「はぁ~、しょうがねぇガキが主になっちまうとは、俺の人生一生の不覚。」


ため息交じりにもフラウロスの声が聞こえてきた。


アランは自分の右手を見てみるとまた右手の内側に宝玉があり手は家が燃えたときとは違く、今回は指先から右肩までが炎で燃えていた。


「これは、あの時と似ている。」


アランはまた驚いた。


「お前が死ぬと俺も死んじまうからな。だから、俺が自由に動ける体を手に入れるために、体を入れ替える権利などと嘘をついたというのに。最悪だ。」


悪魔は、残念そうな声で一人しゃべっていた。


「お前、嘘言っていたのか。」


アランは悪魔に問い詰める。


「あ、俺が嘘をついているだと。」


悪魔は不思議そうだった。まるで自分が何を言っているのか分かっていないようだ。


「さっき自分で嘘をついたって。」


「俺が嘘をつくわけないだろうが。」


悪魔は頭の中ではそう言っているはずなのに実際の口で出た言葉は。


「あぁ、そうだ俺は嘘を付いた。」


悪魔は自分の言いたいことと出てきた言葉が違うことに困惑していた。


悪魔は何かに気づいたかのようにアランの手を見た。


アランの手は家が燃えたときと同じではなかった。


今回のアランの手には宝玉の他にもロンに教えてもらった、逆三角形の魔法陣があった。


「おい、ガキその魔法陣はまさか!!」


アランは、ロンの説明を思い出した


「逆三角形の魔法陣があれば真実を話す。」


‐ブワ!!-


目の前から急に突風が吹いた。


その正体は、ムッカが翼を使い炎をかき消したのだ。


「俺の炎がこんな牛ごときに消されるだと。」


悪魔は自分の炎に自信があったのか、炎が消されたことに驚いていた。


「おいガキ、話は後だ俺の炎を消したこの牛の命を奪って、燃やして、燃やし尽くす。」


悪魔は憤怒しているようだった。


「早く俺を召喚しろ。」


アランはその言葉を初めて聞いたとは思わなかった。


まるで、以前にも使っていたかのようだった。


「ソロモン72柱の悪魔のうちの一人、地獄の侯爵フラウロスよ、汝に命じる我の召喚に応じてその姿を現せ。」


宝玉のついた右手を前に突き出しそう唱えると、目の前の地面に魔法陣が表れ炎が空に向かって噴出した。


炎が収まると現れたのは炎を目に宿し、前後の脚は炎で包まれ、口からは炎がこぼれている豹が姿を現した。


「やっと、外に出れたな~。」


アランは、その声を聴き


「こいつがフラウロスなのか。」


声を出しながら確信を得た。


「召喚者には従わないといけないからな~、早くこの俺に命令をしろ。あの牛を燃やせと。」


アランは悪魔が言うとおりに命令をした。


「ムッカを燃やし尽くせ。」と


アランの様子はいつもと違っていた。


その目はフラウロスと同じように炎を宿し、まるで別人の雰囲気が出ていた。


命令をした後フラウロスはムッカに向かって、飛び掛かった。


炎の爪が当たる瞬間ムッカは空を舞った。


「ちっ!、あの翼面倒だな。」


上空を見上げどう燃やすか考えているフラウロスに向かいムッカは突進してきた。


その速さは地上で見た速度とは段違いの速さだった。


ムッカの攻撃をかわすとムッカの着地地点には大きなクレーターができた。


ムッカが着地した瞬間を狙ってフラウロスは口を開けると口の前に魔法陣が浮かび上がった。


「インフェルノ・フィアンマ!!」


そう言うと魔法陣から炎が出てきてムッカの翼を燃やした。


‐ブォー!!-


ムッカは大声で鳴いた。


飛べなくなったムッカはフラウロスとは逆の方向に走った。


それを追うフラウロス。


一歩遅れて気づいたアランは、二匹の後を追った。


「この牛野郎、俺から逃げられると思っているのか。」


ムッカの目の前には川が流れていた。


それを気にすることなくムッカは全身に水を浴びて水の中に入った。


ムッカが水の中に入るとムッカを中心に透明だった水が紫色に変わった。


「水の中に入れば俺は入ってこれない。そう考えているんだろ。なぁ、牛野郎。」


ムッカが笑っているように見えた。


「なぁ、お前なんだろハーゲンティ。牡牛の姿をしてさっき燃やしたグリフォンの翼、それにこの紫の水、これ、ワインだろ。」


そういうとフラウロスは飛び上がった。


瞬間ムッカは自分の足元を見て絶望した。


「今更気づいたっていうのかよ。ただの動物を主にしたせいで喋れないだけではなく、頭まで馬鹿になったか?」


ムッカはまた、フラウロスに背を向け逃げようとしたが、時すでに遅し。


フラウロスがワインの川に着地する瞬間だった。


「丸焦げになって、燃え尽きろ。」


フラウロスがワインに触れるとあたり一面のワインが燃え始めた。


炎は勢いよく広がり、ムッカまでたどり着くとムッカ全体を炎で包んだ。


ムッカは、燃えながらも川から上がり少ししたところで倒れた。


ようやくたどり着いたアランが見た光景は、倒れて燃えているムッカと、


 燃え上がる川の中に佇むフラウロスの姿だった。


そしてアランは突然その場に倒れた。

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