第3話 ギルドマスター

 エルフを見ることは滅多にない。長命種族、美貌、体力に魔力も全然違う存在だから。


 それにここのギルドのマスターも、たしか男性のエルフだった記憶があった。間違っていなければだけど。



【なんや、イカツイ兄ちゃんやなあ?】


『フランツ!?』



 自分の声が多分聞こえないからって、失礼な事言わないでよ!?


 けど、聞こえない会話で言い合いしている場合ではないので、僕はエルフさんがこちらに来るとフードを外そうとしたら。



「ああ、そのままで。ミア、他職員も。このゴロツキ達の冒険者カードは剥奪、並びに警邏に回して牢屋にでも入れてもらいましょう。君、少し二階にいいですか? お話したいことがあるのです」


「わ……わかりました」



 職員の人達にささっと指示するんだから、やっぱりこのエルフさんはギルドマスターなのだろう。僕を呼んでから、ついて来るようにと降りてきた階段を先に登って行く。僕もフランツを軽く背負い直してからゆっくりついていった。市民の出の僕でもわかるくらい、質の良い木材で出来ているとわかる。


 二階に着くと、エルフさんがこっちだと扉の前で待っててくれていた。



「さ、どうぞ」



 にっこり笑顔で僕に先に入るように促すけど……あのゴロツキさん達をフランツと連携して倒しただけなのに、何の用事なのだろうか??


 とりあえず、中に入ると綺麗なお部屋だった。立派な机や椅子があって、中央には柔らかそうな素材で作られたようなソファ。エルフさんは僕にそこに座るように言ったのだ!



「い……いいんですか?」


「もちろん。荷物も置いて構いませんよ? 私は少しお茶を淹れてきます。苦手なものは?」


「な……ない、です」



 今からどんなお話があるのか、ちょっとずつ怖くなってきた。フランツを抜いたことが、ここでバレてしまったのだろうか??


 けど、エルフさんはちっとも怒っているようには見えない……。僕の考え過ぎかな??


 フランツはさっぱり話しかけて来なかったが、背負ったままだとソファに座りにくいので、フランツを包んだ布ごと横たわらせた。これについても、フランツは何も言ってこない。



「さ、私特製のミルクティーです。遠慮なくどうぞ?」



 で、エルフさんは僕にミルクティーを出してくれた。飲みやすそうで、良い色。喉が渇いていたので、お礼を言ってから飲んでみた。



「……お、美味しい」



 貴族様のお屋敷とか行ったことないけど、引けを取らないくらい美味しいと思う。飲み口はまろやか、ちょっとした渋みがあって、でもあと口は落ち着く感じ。少し温めだったので、すぐに半分くらい飲んでしまった。



「それは良かった。さて、君にお話と言うのは簡単な内容を確認したいだけです」


「確認……ですか?」


「はい。私はギルドマスターをさせていただいてます、エクレア=ヴァインと申します。先程はゴロツキ連中を成敗してくださりありがとうございました」


「い、いえ」


【ぷくく〜! エクレアって、菓子の名前か?】



 やっと、フランツが話したかと思えばギルドマスターさんの名前が食べ物だったことについて笑っていた。あとで聞いてみよう。



「あの連中は大した討伐依頼もこなさずに、ギルド内で飲み食いするばかり。……下手に強いので職員では対応出来なかったんですよ。私も少々訳有りで対処が出来なかったもので」


「……そうだったんですか」



 お役に立てたのなら何よりだが、それでどうして僕をここに呼んだのだろうか?


 確認、とも言っていたけれど。



「そこへ、少し妙な魔力をまとった君が現れた。君は……たしか、とあるやんちゃなパーティーの一員だったはず。今日はおひとりですが」


「! えっと…………その」


「脱退してきたとか?」


「…………はい」



 相手はギルドマスターさんだから、下手に隠し事はしないでおこう。フランツの事も話そうと、フランツを包んでいた布を取ったら。



「!? これは……魔剣??」


「は……い」



 どう言うことなんだろう??


 今朝、一緒に湖で過ごした時とも違い。フランツのはずの魔剣が、立派な魔剣になっていたのだ。

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