SS2-5、アリスのレストラン暮らし~3時のオヤツ:プリン・ア・ラ・モード~

「ハァハァ、こんな魔道具があるなんてね」

「えぇ、室内にいながら訓練…………運動が出来るとは!」


 アリスとシャルがいる部屋は様々な筋トレ器具が設置してるトレーニングルームだ。

 レストラン〝カズト〟からの外出を禁止されてる身の上だ。

 地下にある訓練部屋か今いるトレーニングルームしか汗を流し朝・昼・夕方の食事で生じたカロリーを消費出来ない。

 このままでは、肥るばかりで見目麗しいアリスやスレンダーなシャルの面影が無くなるのを危惧してかレイラとドロシーが二人にご提案したのだ。

 やはり、女性同士というのもあるだろう。男であるカズトには理解が及ばない話だ。

 でも、アリスとシャルの二人は元々肥り難い体質らしいが自分が肥ってる姿を妄想したのか危機感を覚えたようだ。

 毎日のように食事後に二時間程トレーニングルームにて運動トレーニングをしている。

 今となってはトレーニング自体が趣味となってる程だ。やらない日があれば、禁断症状とまでいかないが落ち着かない様子になる。


「妾は、このランニングマシーンとやらが気に入ってるぞ。走ってるはずなのに、常に同じ場所で画期的な魔道具だな」

「私はこれです」


 シャルがやってるのは、ショルダープレス━━━所謂、バーベルやダンベルでやるトレーニングだ。

 この部屋には、重さや形で数十種類のダンベルが用意してあり子供~大人までやれる仕様だ。

 バーベルの錘に関しては、プロのボディビルダーが使いそうな大きさの物まで揃ってる。


「いやぁ~、筋肉に効きます」

「久しぶりに聞いたのぉ。シャルから筋肉という言葉は」


 ムキムキと右腕に力こぶを作ってみせる。

 シャルは普段、袖が長い服装を着てるせいか服の上からでは筋肉があるか分からない隠れ筋肉の持ち主だ。

 もしかしたら…………この世界にボディビルダーの大会がもしも存在していたなら………優勝していたかもしれない。


「えぇ、こんなに筋肉が疼いたのは久方ぶりですね。それにレイラ殿が用意してくださった〝プロテイン〟という飲み物は筋肉に効くらしいですから。うっはははは」

「何処が良いのか妾には理解不能じゃが、汗を掻いた後には〝スポーツドリンク〟が一番じゃ」


 シャルはプロテインを水のようにガブガブと消費し休憩する度に空の缶が床に転がり増加していく。

 その一方でアリスは〝スポーツドリンク〟が気に入ったようでガブガブと良い飲みっぷりだ。

 脱水症状という言葉は知らないが本能からか適度な休憩と水分補給を欠かしていない。


「プハァ、運動の後の一杯は最高じゃな」


 風呂から出た後の〝コーヒー牛乳〟を飲むかの如く腰に手を当てて一気に飲み干した後、空のペットボトルを天井に掲げる。


「それで今日のオヤツは何じゃ?」


 レストラン〝カズト〟では、宿泊客から希望があれば午後3時に『3時のオヤツ』という名の甘味が支給される。オヤツの内容は当日にならなければ分からない。


「食堂の掲示板によりますと、今日のオヤツは〝プリン・ア・ラ・モード〟であります」

「ふむ、聞いた事はないが…………何か妾の…………カヨワイ乙女な心にトキメクような響きじゃのぉ」

「ぷっくすすすす、姫様がカヨワイ?姫様が乙女?…………ぷっくすすすすわっははははは」

「…………くっ!わ、悪いか!妾がカヨワクて乙女で何処が悪いのじゃ」


 未知のオヤツに対するワクワク感で、つい口にしてしまった鬼人族オーガの姫らしかぬ言葉を従者であるシャルに笑われ、顔面真っ赤に染めながらアリスは叫ぶ。


「ぷすっ、それよりも…………姫様、着替えて食堂に行きませんとオヤツの時間になってしまいます」

「ちょっと待つのじゃ!まだ、話は終わっておらんぞ」


 プンスカと怒りを顕にしながらもシャルを追い掛け、自室にて私服である浴衣に良く似た鬼人族オーガ伝統の装束を身に付ける。

 装飾も王族らしく所々に施されており、一段と見目麗しい容姿へと格上げされてる。

 アリスが部屋を出たのと同時にシャルも着替え終わったようで出て来る。

 シャルは従者らしく、装飾はほぼなく控え目な鬼人族オーガ伝統装束を着用している。


「お、お待たせ致しました。こ、こちらが今日の〝3時のオヤツ〟であ、あります〝プリン・ア・ラ・モード〟でござい………ます」


 アリスとシャルが席に座ったのと同時にルーシーがどうやって作製したのか分からない複雑な装飾を施された器を二人の前へと運んで来た。

 その器の上には宝石が散りばら蒔いたと錯覚してしまいそうな程に色とりどりな果物が黄色い物体を中心にバランス良く飾りつかれている。

 その様相の美しさに食べるのを忘れ、アリスとシャルの二人は惚けていた。


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