第79話
マユガカの群が乱れ飛び、あちこちで乱闘や共食いが。
そんな混戦が樹上と森中で別々に発生。
いや、樹上と森中を行き来している個体や群れもあるため、明確には分けれないのだが…
マユガカ乱れ飛ぶ中を擦り抜けつつ、マユガカをぉ、斬る!
弓は既に仕舞った。
混戦の中で弓を引き絞るなどと、悠長なことができる筈もない。
こういう時に、忍術が扱えればなぁ…などとな。
魔術や精霊魔術は、発動に時間が掛かるため混戦には向かない。
陰陽術は符を用いるため、魔術などよりは発動が早いが、やはり混戦では厳しいだろう。
まぁ魔術は一撃の威力がデカく、大量の敵を殲滅するには適しているのだが…
ただ、環境的には厳しい術で、こんな所で大規模魔術など放てば、森は壊滅だろう。
環境を操り戦う精霊魔術や、大量の符は必要とはなるが、放った符を起点に術が限定範囲へ放たれる陰陽術の方が、ここでの戦いには合っているだろうな。
そして忍術。
完全に単独使用が前提の術であり、素早く印を結ぶことで術が放たれる。
高速かつ無音にて放たれる術には、様々な種類はあるが殺傷能力が高い術が多く、マユガカさえも複数体は殲滅可能であろう。
術の影響範囲も限定されており、周囲に及ぼす被害は最低限に抑えられるらしい。
しかも、発動し放たれた後、速やかに消える。
隠密にて扱う術としては最適と言えるのではなかろうか?
無数の敵を、ただ斬るしかない状態の今、殲滅力の高い攻撃手段が是非欲しいところだ。
まぁ、無い物ねだりだがな…
終わりが見えない現在、現実逃避的に考えながらも、機械的にマユガカを斬っては移動を。
視界隅に縦線が見えているのだが、緑色だったのに上部が赤くなっている。
徐々に赤い部分が増えてるが…なんだぁ、これ?
分からんが、良いことではない気がする。
っと、陽が登り始めたか。
繁殖地からもマユガカが森へと押し寄せている。
逆に繁殖地の成体が減った状態となった訳だ。
これはチャンスだっ!
マユガカの成体は、幼体から孵化し増えるため、それを絶たなければ増援が止まない。
つまり孵化しそうなマユガカ幼体を潰せば、成体増援を阻害できる訳だ。
しかも孵化前の幼体は身動きしないため見分け可能だし狙いやすいときた。
そんな訳でマユガカ繁殖地へとな。
樹上から孵化前の幼体を、次々に狙い打ち潰す。
併せて、その近くへいた幼体もな。
傷を負った幼体へ、近くの幼体や成体が群がり、共食いが。
幼体を害した敵を探して成体が動き回る。
成体の数が少なく、今が狩り時だと言えよう。
樹上から矢を放っていたが、効率を考え繁殖地へと潜入。
横からの水平射撃へと切り替える。
そうすることで、一度に複数体の幼体へ傷を負わせることに成功。
殲滅は厳しいが、かなりの数を減らせただろう。
っと、ヤバイ。
森へと散っていたマユガカが、繁殖地の異変に気付いたか、こちらへと集まり始めてるな。
群がられては、こちらの動きが阻害されてしまう。
そうなれば、討伐速度も落ちるだろう。
急ぎ、ここの繁殖地を離脱。
別の繁殖地へと。
そんな繁殖地潰しを続ける内に、陽が落ち始めている。
視界隅の線だが、赤い部分が3分の1近くになっている。
これ…鎧を纏えるタイムリミットを示してね?
纏えるのが3日であり、夜中に纏ったことを考えれば、1日には満たないが、それ近くは纏っていたことになるだろう。
鎧は脱いだ後にクールタイムが発生するらしい。
今、鎧を脱いだと仮定するならば、次に鎧を纏えるのは2日近く後になるだろう。
正直、鎧なしだと、詰む。
ここは一時的に撤退するのが、妥当だろう。
そう考え里の方へと。
俺が繁殖地にて暴れまわったせいか、森は静かだ。
大半のマユガカが、複数の繁殖地方面へと移動したためだろう。
マユガカの気配が絶えた森の樹上を走り抜ける。
そんな疾走中に、前方の一部が騒がしいことに気付いた。
んっだぁ?
行ってみると、複数体のマユガカと乱戦中である鎧姿の戦士達が。
って、先王様?
アータ、通常のフルプレートアーマー纏って、巨大戦斧振り回しとりますが…なにしとんの?
っか、教皇様と枢機卿が癒してるから持ってはいるが、完全に足で纏いですよ?
教皇様たちは、護衛する騎士たちをも癒さねばならず、非常に忙しそうだ。
鎧を纏った戦士たちの方は、鎧が攻撃を防ぐためダメージはない。
ただ、武器の性能にてマユガカを討伐するのに時間が掛かっているようだな。
俺は樹上からマユガカを狙い打ち仕留める。
ここのマユガカならば、弓を使えば楽に倒せるからな。
まぁ、マユガカが先王様たちへ意識を向けているからでもあるのだが…
十数体のマユガカを射殺し樹上より降りる。
いきなり降りた俺も悪かったが…武器向けんなやぁっ!
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