第69話

鎧掛けへと掛かったディサピィルトーカーの鎧を見て、ロンダルトさんがな。


「見れば見るほどに、怪しい者が纏うような鎧だ。

 ダリルには悪いが、このような鎧を纏って行動する気が知れん」ってことをな。

もしかして、ロンダルトさんは忍者を知らないのだろうか?


「ロンダルトさんは、ヤマト領を知ってられましたが、忍者はご存知ない?」って尋ねたらさ。


「ヤマト領独特の斥候上位職であろ?

 特殊な技や術を使う者と、書物へ載っておったであるな」


なんだ、知ってるじゃないか。


「なら、この鎧が忍者の装束だと分かってるんですよね?」

そう確認したらさ。


「そうなのであるか!?」って、驚いてんだが…なんで知らないんだよっ!


「書物へは挿し絵などないゆえ、姿形すがたかたちは想像するしかないであるからなぁ。

 そうか、これがなぁ」っと、しきりに感心している。


なるほどなぁ、絵で知らない限りは、どのような姿かなど、実際に見なければ分からないか。


「しかし、これを俺が纏うのはなぁ…

 敷居が高すぎるんだが」


「はて?

 ディサピィルトーカーであるダリルが纏うに、問題はないと思うが?

 所詮、忍者ど斥候の亜種であろうに。


 剣では剣士に、体術では武闘家におよばず、術では魔術師に劣り、使役にてはテイマーに届かない。


 劣化薬師にて毒の扱いには長けるが、癒しには聖術へ及ばない。


 全てが中途半端な者であろうに」


なんて、とんでもないこてをな。


「あのなぁ、忍者は斥候の上位職なのっ!

 斥候みたいに偵察や情報収集だけでなく、変装による敵地浸入から情報操作、破壊工作に暗殺や内部撹乱など、斥候では行えないことをこなしてるんだぞ。

 なのに、体術に剣術を含む武術を修め、忍具を駆使し、忍術を操る。

 忍犬などを操り、薬学にも通じている…


 有り得んほどに優秀なんだがな。

 なんで中途半端なんだ?」


まったく意味が分からん?


「なるほど…

 そのように考えるならば、確かに優秀であるなぁ。

 私は、その筋の達者である者達と比較しておったが、1つの道を極めてか…」


「そう言うことだよ。

 俺は潜むことくらいしかできないからな。

 様々なことが行える忍者の装具を身に付けるのはなぁ」

忍者として扱われても、困るんだが。


「ふむ、しかしな。

 伝承通りなれば、適合者以外は纏えぬ鎧にて、その性能は破格とか。


 まず、アダマンタイトやオリハルコンで造られた武具では傷1つ付けられず、衝撃は一切内部へ通さないらしい。


 装着者を包むようにフィールドが展開され、周囲の魔那を取り込むことで、魔那を使う術全てを吸収してしまうとか。


 聖術も吸収無効するが、装着者を常に癒し、正常に保つとあったな。

 むろん、鎧内部は常に適温で湿度も調整され、空気が清浄に保たれることから窒息の危険もない。


 まぁ飲食と排泄の問題はあるはずだが…魔那にて供給し魔那へと分解とあってな、これが理解できん」


だぁぁっ!

一気に告げるなっ、ご高説パートⅣ!


だが…纏えれば、一切ダメージを負わない無敵の斥候兵になれると?


「ただし、適正が無い者が纏うと干からびて死ぬらしい。


 また、連続使用は3日が限界で、越えると衰弱死するそうだ。

 そして纏った倍の時間を空けねば、装着は危険。

 纏えば死ぬ場合もあるそうな。


 正直、適正が有っても、私は要らんな」


絶大なメリットに対し、絶望的なデメリットですか…堪らんなぁ。


「鎧装着のリミット時間に、鎧が再装着可能となるタイミングは、なにかで分かるんですよね?

 その方法を、教えて欲しいんですけど」


知らんと使えんわいっ!


「ないぞ」

「はぁ?」

「だから、そんな機能はないっ!

 自己管理で使用せねばならんのだよ」ってさ。


「使えるかぁっ!」


余りに腹が立ったので、鎧へドロップキック突っ込みした俺は悪くないはずだ。

鎧に吹き飛ばされたけど…合点がいかんっ!


纏っていたら何時死ぬか分からん鎧など着れるかっ!

そんなん思ってたらな、鎧が消えた。


鎧掛けは存在するのに、鎧だけが見えなくなったんだけど?

見えなくなっただけかと、鎧掛けを調べるが、見当たらないな。


まぁ、あんな鎧はいらんけど。


って、ん?

俺って、いつの間にかリストバンドなど着けたけか?


右手に着けた覚えのないリストバンドが着いているんだが?

変わったマークが刺繍されているので、何気なく触ると…手甲に変化した。

意味分からんわっ!


そしたらな。

「ダリル…いつの間にディサピィルトーカーの鎧を纏ったのだ?

 まぁ生きてるゆえ、適正はあったようだが、いきなり無茶をするものだ」っと。


へっ?

鎧を纏ってる?

そんな馬鹿な?


ロンダルトさんが姿見がある場所へ案内してくれ、自分の姿を確認。


うん、忍者だね。

ユンファ、俺…なんちゃって忍者になりました。

見棄てないでね!

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