第47話

「あ~っと、そのな、先王様が…」

「先王様が?」

「卵を取って来てってさ」

嘘は言っとらんぞっとな。


「えっ?

 卵を取って来るだけなの?

 変なの???」


おっしやぁっ!

切り抜けたぁっ!


「それでな、その報酬の前払いとして、俺達を夫婦めおとにしてくれるそうな」ったらな、少し食い気味にな。


「それって…どうやって?」ってな。

だが、生憎なことに…


「ごめん、具体的なことは、教えて貰えてないんだよ。

 ただなぁ、明日はユリアーナ様が帰って来られるそうだから、何かお力添えいただけるんじゃね?」


「お母様が?


 そう言えば…明日は教皇様と枢機卿様が、ご来賓として参られるって、話があったわ。


 だから表へ出ないようにだって。

 失礼がないように控えろってことらしいわね。

 なんだか失礼しちゃうわ!」


シスター達は下賤ゆえに控えろってことか?

教会って、何気に男性上位の気風らしいからなぁ。


だが…教皇様と枢機卿は女性なんだが?

阿呆なのか?教会幹部達。

知られたら、更迭されんじゃね?


いや、別にさ、チクったろなんて…思ってますよ、ええ。


散々、俺とユンファの仲を邪魔してくれてますからねぇ。

教会内監査を行えば、埃レベルでは済まないだろうよ。

俺が調べただけで、犯罪紛いのことをしている形跡があったかんな。


まぁ、隠蔽されたけど…

あれさぁ、外部からは探れないけど、内部からなら丸わかりに出来ると思うんだわ。


ユンファの父さんは、名前を利用されてんだけど、本人は気付いてないみたいだしなぁ…

まぁ知ったら犯人がミンチになるから、扱い注意だけどな。


でぇ、そんな話をした後で寝ましたよ。

えっ、プロレス?

なんのことでしょうか?


朝…雀が五月蝿いですよねぇ。

毎朝のことです、はい。


今日の朝食は、ユンファと一緒に喫茶ウイユ・ドゥ・シャでモーニングです。

序でに、人と待ち合わせておりますです、はい。


「ウォルフ様、おはようございます」


そう、先王様やね。

一緒に教会へ向かう話になっとるとです。


「うむ、来たか。


 ほぅ…そちらのメンコイ娘がユンファかのぅ。

 ふむふむ、ユリアーナの面影があるわい。


 初めて会うが、儂が、そなたのじじじゃて」

好好爺然とした笑顔でな。


誰だ、この人?

昨日の悪巧みを巡らすことを、画策する笑みが良く似合う強面さんと同一人物?

嘘っしょっ!?


「なんか、失礼なことを考えてはおらぬかえ?」


「いえいえ、滅相もない」

事実ですから…


「マスター、モーニング2つね」

注文しただけだぜ、誤魔化した訳ではないさ。


しかし…ここのモーニングは、いつ食べても美味い!


「美味しいわねぇ。

 私が作るのと、なにが違うのかしら?」

ユンファが味の違いを気にしている。


いや、ユンファ?

挨拶しただけで、後はモーニングに夢中って…

爺さん構ってあげなよ。


まぁ…俺は照れ隠しって気付いてるんだが…不器用な子だよ、全く。


まぁ、王だった先王様も分かっているみたいでな、微笑ましそうにな。

照れるユンファは、ほんのり顔へ朱がさしてんぞ。


そんな先王様との邂逅の後、しばし歓談をな。

ユンファも先王様に慣れたので、教会へと向かうことに。


無意識に歩くと2人を置き去りにしてしまうため、意識して、ゆるりと歩く。

ある意味、難儀な体になったものだ。


辻馬車に乗り込み教会へと。

俺1人ならば、歩いても辻馬車使うより早く着くが、2人には無理だからな。


辻馬車で教会近くの乗降場まで移動し下車。

値段はモーニングの半値以下と思えば良いだろう。


教会前には、教会幹部がズラリと並び、それを信者達が遠巻きに見ているな。

朝のミサはどうしたんだ?


どうやら信者達を締め出してるみたいだな。

俺達の姿を見た幹部の1人が、文句を言おうとした時、1台の質素な馬車が教会前へと。


したらな、そちらの方へと。

「停まれっ!

 そのような下賤な馬車にて教会前へと乗り付けるとは、なんと無礼なっ!

 このようなことが、許されようかっ!」ったらな、他の幹部連中全てが同意して騒いでる。


そんなバカ共にユンファパパのガリアン様がな。

「静まれ!

 教会に集まれし者に貴賤などない!

 貴様らは、なにを言っとるのだっ!」ってな。


あれ?ユンファの父ちゃんって、案外まともかも。

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