第20話 ビアトル王国の野望

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シリアス?回 勇者と魔王と勇者と聖女編

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 「おぉ、勇者よ、よくぞ世界を救いに参った。


そして聖女よ、民の希望の象徴となり民衆を導いてくれ」


出会って早々、王は勇者と聖女を激励する。


「どうか、お任せください」


戸惑って口ごもる宗一に対して、加奈は当たり前のように回答する。


「お、おぃ、本当にできるのかよ?」


「馬鹿ね。こういう時はアピールしておけば、何とでもなるのよ!


ほら、宗ちゃんも期待に応えますとでも、言っておきなよ」


「お、おお」


加奈とひそひそと話し終わると、


「世界を救うために、尽力いたします」


と改めて、王に向かって発言するのであった。




 宗一と加奈が召喚された場所は、ボー大陸のビアトル王国と呼ばれていた。


人口五十万ほどの大都市を有し、貿易が盛んな事から、大陸の中核の位置づけであった。


近年は魔物たちが勢いづき、ビアトル王国もそれなりの被害が出ていたが、


国防軍の出動で事態の沈静化はできていた。


ところが、魔王が出現したという、うわさが流れると、貿易が縮小傾向となり財政難へと傾き始めた。


これには各国も頭を痛めたが、ビアトル王国としてはボー大陸の覇権を手中に収め、


いずれは世界制覇をしようとする企みまで画策していた。


勇者召喚を行ったのは、魔王討伐に乗じて、別の大陸に軍を派遣し、


魔王の手先とこじつけて、他国を侵略する計画を立てていたからであった。




 「これから、民衆たちに王自らが演説をします。


どうか、勇者様と聖女様も一緒に立ち会ってください」


老人が宗一と加奈に告げると、二人は二つ返事で了承した。


王と共に城から城壁に移動すると、そこには民衆たちが押し寄せていた。


「我が偉大なビアトル国の民たちよ! 我が国に勇者と聖女が降臨した!


これを機に我がビアトル国は魔王を討伐し、永久に反映されることだろう!」


王が演説を行うと、民衆たちから、歓声が一気に沸き起こった。


「我らが偉大なるビアトル国の民たちよ! 勇者宗一と聖女加奈をここに紹介する!」


王は二人を民衆たちの前に立たせる。


最初に紹介を始めたのは加奈であった。


「皆さん、私が来たからには安心してください。


私が全身全霊で皆様のお役に立てるようにいたします」


続いて、宗一が紹介を始める。


「い、いいか! 俺が来たからには安心しろ!


魔王なんて奴は俺が必ず倒してやる!」


一瞬、静まり返る民衆たちであったが、すぐに歓声に変わり、


勇者と聖女の誕生を歓迎した。




 「さっきの見たか?民衆たちが俺に向かって歓声あげてるの」


宗一は満足げに語りだす。


「すごかったよね! まだ、何もしてないのに頑張りますって、


言っただけで、馬鹿みたいに歓声あげるんだから!」


「最初はどうしょうか考えたけど、この世界悪くなさそうだな!」


「そうね。歩くたびに皆お辞儀して、女王にでなった気分だわ!」


宗一と加奈は優越感に浸っていた。


今まで味わったことの無い民衆たちからの崇拝の眼差し、


騎士や侍女たちの敬する態度は、二人の優越感を傲慢へと変えていった。




 一方、妖精の村の位置するアディス大陸では、


ティコアの手により、すでに魔王討伐が完了されており、


妖精村と人間たちが併合した、ルター国は平穏に包まれていた。




 「すごいな!」


イノは妖精村の歓迎を受けている真っ最中であった。


「私もこんなに、妖精たちを見たのは初めてです」


天使のティコアですら驚愕するほどの妖精たちが集まり、


イノとティコアを称える祭りが開催されていた。


妖精村の場所は昔から変わらず、湖畔にあり、


バンスの一族が長を務めていた。


魔王討伐から一夜にして、妖精界では話が広がり、


イノを一目みようと世界中の妖精たちが集まっていた。


夜だというのに湖は妖精たちの光で照らされ、神秘的な空間を作り上げていた。


「バンス、今日は招待ありがとう」


イノがバンスに礼を言う。


「私もこんなすごいの初めて見ました! お呼び頂きありがとうございます」


続けて、ティコアが礼を言うと、


「そんなにかしこまらないでください。救われたのは我々の方です。


それに神や天使である、あなた方にそんなに礼を言われると……」


バンスの困惑した表情を見て、イノとティコアは互いに笑っていた。


妖精たちの催し物はイノとティコアたちを楽しませ、妖精たちとの交流も十分に深まった。


「いけねぇ、ゴンタの餌忘れてた……」


「あっ、そういえば幼女ちゃんは?」


「あっ……そっちも忘れてた……」


「何かゼニス様に似てきましたね」


「バンス、楽しい時間だったけど、飼い犬の餌をやらないといけなくて……」


「もしや、外壁の門のところで、口を半開きに開け、涎を垂らし、鼻提灯を作っていた


神獣の事ですか?」


それは間違いなく、ゴンタだ。


「そうそう、ゴンタという一応神獣だが……」


「それでしたら、先ほど、妖精が伝えてくれたのですが、


王宮にいた女の子と森に行ったそうですよ」


「なにぃ!!!!!!!!」


幼女は城を抜け出し、ゴンタと森に行ったのである。


「とにかく、ゴンタを追いかけないと!」


目を離すと昔から何をするかわからない犬だった。


異世界で自分の目の届かない場所で勝手に移動されては、


探しようがなくなる。そんな、不安を覚えつつ、


イノはゴンタの元に行こうとしたが、バンスが呼び止めた。


「イノお待ちください、魔王がいなくなったとはいえ、夜の森は危険です


どうか、私どもから護衛を付けさせてください」


バンスが伝えると、一人の女性が目の前に現れた。


「彼女は私の娘です。名はニャムと申します。


魔法などは下手なのですが、剣と弓に関しては大陸でも五指には入るでしょう、


さぁ、ニャム挨拶をして」


「ニャムです。精一杯、イノ様をお守りさせて頂きます」


突然の申し出、少々困惑するイノであったが、素直にバンスの意向を受け入れた。


「こちらこそ、よろしく! 早速だけど、森に向かいたのだけど、


ニャムさんは大丈夫?」


「もぅ、準備はできてます」


「わかった、じゃぁ向かおう」


イノはティコアとニャムを連れて妖精村を後にした。




 「お肉♪ お肉♪ ワイの美味しいお肉♪」


「ゴンタちゃん、それ何の歌?」


「歌? お肉食べる時に口ずさんじゃう」


「ぷぷぷ! 変なの!」


ゴンタの背中に揺られながら、幼女は空を見上げると、


満月が三つ浮かんでいた。


「この異世界、月が三つもあるんだ。ロマンチックね」


「着いた、お肉の場所!」


ゴンタが到着したのは、イノに集めて貰ったオークを埋めた場所だった。


懸命に掘り出すゴンタの姿を幼女は、月と共に優しく見守っていた。


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ここまで、お読み頂きありがとうございます。

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次回の話はまだ決まっておりません。

多分、ゴンタと勇者がわを書く予定です。

ご期待ください。

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