第15話朝
「ん?もう朝か…」
さすがに昨晩の睡眠だけではすべての疲れを取りきるのが無理だった凪は重い体を持ち上げるように体を起こし、瞼を上げるように目を大きく開く。
時刻は朝の6時、この世界は夜が存在しないため外の明るさでは何時ごろなのかさっぱりわからない。
凪は完全に目を覚ますためカーテンを開け外の光を浴びてみるが、思ったより眩しくてすぐ閉じる。
昨日、この世界のことをロティから説明されたことを凪は思い出した。夜が存在しないこの世界は光を放つベールのようなものに囲われていて、それが、地球でいうところの太陽の役割を果たしていて、光の強さもほとんど一緒らしい。ただし、この世界の建築物の材質のせいか、建物が光を吸収せず反射しているせいでこの世界に来たばっかりの凪にはかなり眩しく見えていた。これだったら『ずっと夜の方がまだ暮らしやすかったのに』とどうしようもないことを思ってしまう凪だった。
「さて…どうすればいいんだろう?」
この世界に来て初めての朝を迎えた凪は、ロティが起こしに来るのを待てばいいのか、それとも自分で身支度を済ませればいいのかわからず、部屋の真ん中で立っていた。
どうすればいいか少し考えているとトイレに行きたくなってしまう凪。結局、考えていた時間を無にするように自ら部屋のドアを開いた。すると『ゴンッ!』という鈍い音とともに開ききる前に扉が止まってしまう。
「ご、ごめんロティ…」
今起こったことがなんとなく想像できた凪は、慌ててドアの向こうにいるであろうロティに謝ろうとした。しかし、ドアの向こうを覗くと凪の予想とは少し違っていた。
「痛た…」
「なんでセレーネがここにいるの?」
ドアに頭をぶつけた正体はセレーネだった。てっきり、起こしに来てくれたロティだと思っていた凪は少し意表を突かれる。
「あんたを起こしに来たのよ!」
頭を押さえながら少し強めな言い方で怒りを露わにするセレーネ。しかし、そんなことなどどうでもいい凪は話をつづける。
「ロティはどうしたの?」
当然のようにセレーネではなくロティが起こしに来るだろうと思っていた凪。それに、ロティが起こしに来なくてもセレーネが来るなんて凪には予想外だった。
痛みが治まってきたのか、頭を押さえしゃがんでいたセレーネが立ち上がる。
「あの子は朝がすごく弱いのよ、だから私が起こしに来てあげたのよ」
「そうなんだ…」
セレーネの言葉にいつも通りに返している凪だったが、凪はドアを開ける前にトイレに行きたかったことをすっかり忘れていた。そして、そのことをセレーネとの会話中に膀胱の違和感で思い出した。
「セレーネ…トイレ行きたいからどいてくれない?」
「え…?」
急な話の切り替わりにさすがに動揺を隠せないセレーネだったが、凪の表情は真剣そのものだったため、セレーネは何も言わずドアから離れる。その瞬間、凪は勢いよくドアを開け、トイレの方へと駆けていく。
「リビングに朝食があるわ…」
セレーネの言葉を耳で拾いながら、凪はトイレへと入った。
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