第32話 闇の契り
朝、目覚めるとバナナが顔の上に置かれてあった。バナナは冷たく期待していた三女の姿はない。ユキはちょっと寂しい気持ちになるが起き上がって周りを見回す。やはり三つあったはずの素材の山が二つになっている。昨夜の出来事が夢ではなかったことを背中に当たっていたゴツゴツするものが物語っていた。
"寂しさを紛らわすためちょっかいを出した相手が闇の一族、それも大陸一の歌い手として第3世代にその名を轟かせていた女にぶち当たってしまった。いや違う、あれは丁重な招待だったはずだ。朔の夜、闇の深さに魅了されて開けた扉の向こうに女が膝ま付いていた。所望されダンスを三曲、不得手な分野なので彼女のリードで刺激的な甘美な時間を過ごす事が出来た。
鍛冶の時間だ、
「彼女は一途な女ですよ背負えますか?」
「どういう意味だ俺は彼女のために得物を鍛えるだけだ。」
「たらしの聴雪の後ろに魔女の屍の山ですね。」
「やめてくれ、思い入れがなければ最良のものは作れない。」
「その通りです、だから貴方は他人のために手を出すことはありませんでした。変わりましたね。」
「間違っていたから失った記憶だと考えている。」
「まあ、気に入ってしまったのてすね。」
「そうだ、始乃もニ
「それを傲慢と言うのですよ。」
「知っている。だが確率の問題だ。」
「おかしいですね、あなた自身が死そのものだと思っている人もいる筈です。」
「その通りだ、先ほどもそんな顔をした女をに出会った。名前は何だったか。」
「もし生き残ることができても傷つくことに変わりありません。」
「死ぬよりはましだ、もしかしたら変えることが出来るかもしれない。」
「それを決めるのは貴方ではありません。」
「もう一度言おう、死ぬよりはましだ。」
「知っているのですね。」
「そうだ知っている。」
「わかりましたお手伝いしましょう。」
「何を欲っしている?」
「頂けるのですか?」
「何とかしよう。」
「本当に傲慢な男ですね。」
「吐き気がするほど嫌になるよ。」"
彼女は血に飢えることも太陽の光を恐れることもない恵まれた体質のヴァンパイア名をシューレル。その不死の大魔導師の所望するものは一人の人間の男だった、彼女が唯一と認めた男を求めた。
「悪い条件ではなかったがさらに難題山積だな。」
ユキは一人つぶやく、いずれにしろ特効薬的な便利なものがあるわけでなく問題は一つ一つ解決していくしかない。そこでドクンと心臓が嫌な音を立てて鼓動する。
「クソが」
仲間を友を無表情に戦場に送り出しながら何が問題は一つ一つだと、あの女の顔を見たか、偽アリスとかふざけた名前を付けたあの女の偶然居合わせてしまった後悔に
だから愛しき者が仲間が必要だと闇の向こうから女が囁く。
その時ノックと同時に少しだけドアが開かれ二女のニ胡が顔だけ出してきた。
「ど、どうした。」
「お邪魔?」
「いや、大丈夫だ考え事をしていただけだ。」
「びっくりするような暗闇。」
「唯の自己嫌悪だ。」
「よくあるの?」
「そうだな、日に一回いきなり後ろから斬りつけられる気分だ。」
「かわいそう。」
そう言ってニ胡は部屋に入っていいかと視線で確認してきたので招き入れた。
「槌打つ音してたけど鍛冶場に火は点ってなかった。」
「そうか外まで漏れていたか、すまんな。」
「それはいい、でもチョーセツ危なっかしい。」
「そうだなあ一歩踏み外せば谷底って感じだな。」
「ううん、途中で引っかかって動けなくなる。」
考えているより、もっと悪い現実をニ胡に指摘されため息をつく。
「泣きたくなるよ。」
「泣いていい。」
そう言ってニ胡はベッドの縁に座るユキを抱きしめる。柔らかい胸の感触を頬に感じユキは逃れようとするが。
「大丈夫、楽しい話をしてあげる。」
だが、ニ胡が語る話は決して楽しい話ではなかった。彼女は生まれてこの方学校に通ったことはなく。幼いころは母親から母親が亡くなった後はネットで勉強を続け大卒の資格を取り。17才の現在アメリカの大学院で博士号取得のための研究をリモートでしていると言う。そんな典型的な
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