第31話【はじめまして】
由紀ちゃんの家は僕の実家から1時間かからない所で、何度も訪れたことがある見慣れた街だった。
今まで写真を見たり、声を聞いたりはしていたが会うのは初めてだ。
「はじめまして。急に来てごめんね。」
「全然いいよ。私も1人だとヒマだから良かった!」
そのまま近くのファストフード店に入ってお昼を食べた。
由紀ちゃんはハンバーガーを頬張るのが恥ずかしいのか小さい口でちょこちょこ食べていた。
一方の僕は人見知りは全くしないはずなのに、由紀ちゃんの目を見て話すことができなかった。ずっと横を見たり下を見たりしながら喋っていた。
お互いが照れながら改めて自己紹介をした。
お昼を済ませたあと由紀ちゃんの家に向かった。
家は1人には広いが2人には少しせまい間取りだった。
「これから仕事はどうするの?」
「こっちで探すよ。その前に少し休みたいから2週間くらい休もうと思う。」
「そっか。分かった。」
由紀ちゃんは頼んでもないのに毎朝、毎晩ご飯を作ってくれた。
いつも栄養バランスを考えてくれた和食中心の食事だった。
和食が好きな僕にとって最高だった。
2週間はあっという間に過ぎていった。
「もうちょっとここにいようかなぁ~」
と由紀ちゃんに聞こえる様につぶやいた。
「え~2週間って言ってたじゃん!」
「まぁ~そうなんだけど、、、、居心地よくてさ~。」
「ん~・・・・じゃあ今月までにバイトでもなんでもいいから仕事を決めて、家賃を半分だしてくれるなら居させてあげる。食費だって2人分なんだからね!」
とニコニコしながら言われた。
「分かった。とりあえず仕事を見つけてくるわ!」
仕事は経験のある日雇いバイトが始めるには気持ちが楽だった。
それにこの仕事は2つ好きなところがあった。
1つは毎日ちがう現場に行くこと。
毎日おなじ職場に行くのは飽き性の僕には向いてなかった。
車で現場に向かうときはドライブしてる気分になれたし、電車で遠征するときはタダで旅をしている気分になれるのが好きだった。
もう1つは基本的に毎日ちがう現場に行くので、人間関係を築き上げなくても良いところだ。
とうぜん何回もお世話になる会社もあるのだが、嫌いな人ができても毎日会わなくてもいいし、嫌いな人がいる現場を他の人に行ってもらうこともできた。
あと、日雇い会社は仕事を断ればすぐに辞められる。
体力的には力仕事でしんどいが、気持ち的には逃げ道がある楽な仕事だった。
なんとかまた働き始めた。
今回の日雇い会社はかなり働きやすくて、体力的にも以前の仕事に比べるとかなり楽だった。
仕事のペースも自分で決められるので最初の2か月は休みなく働いた。
こうして今までのサボっていた分を取り返そうと思った。
こうして、借金を返済しつつ順調な生活を送っていた。
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