第6話【スパロボ店長】

高校3年の夏に部活を引退した。進路も決まった。

家庭の状況からして働く方がいいとは思っていたのだが、大学に行きたい気持ちもあったので色々と調べていた。


すると僕の成績では無利子の奨学金は無理だが、一般的な利子のあるタイプの奨学金を借りられることが分かったので、母に相談して進学することに決めた。


受験はAO入試で論文と面接だった。

論文はあらかじめ課題が3つ用意され、その中の1つが当日出題される。


—受験当日、3つの課題から1番得意にしていたスポーツについての課題がでた。

「ラッキー」と思い、練習で原稿用紙に書いたそのままを暗記していた僕は時間を余して受験を終えた。


その後、面接を経て見事【合格】


進路が決まった3年生はライオンに翼が生えたかの如く最強になる。

自分は何もやることがないのに周りには焦っている人が大勢いるからだ。

最上級の優越感である。


こうして余裕のできた僕は人生で初めてのアルバイトを始めようと思った。

フリー求人誌で探し、バイクで配達をする仕事の面接を受けてみることにした。


面接当日、店に入り『面接にきました』と伝えると奥から190cmは超える背の高い人が出てきた。店長だ。

190cmと聞くと大きいことに間違いはないのだが、体重は60kgくらいしかないのでは?と言うくらい細身の人だった。

後に知ったのだが、その容姿と仕事のこなし方から陰で【スーパーロボット】と呼ばれているらしい。

悪口ではない。むしろ尊敬されている人だ。


履歴書を渡し、これまでに述べてきた境遇を話した。

『それは大変だったね』と、とても理解を示してくれた。


そのあとバイクの適正テストが行われた。

店長がいくら欲しい人材であっても、テストに合格しなければ働けないらしい。

だが難しい問題ではない。

採用試験の内容は「運転中イライラしますか?」などの常識問題のようなものだ。

その問いに『はい』か『いいえ』で答える。


テストが始まるや店長から一言『落ちたらまた来なさい。採用されるまで受けさせてあげる。』

そのやさしさに心が震えた。『この人はいい人だ。』と思った。


—結果は【合格】


『よろしくね。』


『よろしくお願いします。』


こうしてバイト生活が始まった。





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