たった一度の片思いでメンタルやられた捻くれボッチの俺が、学年一の美少女から送られてきたラブレターを丸めてポイした結果、望まぬラブコメが始まった
第11話 お洒落な場所だとカッコつけたくなる気持ちは……なんとなくわかる
第11話 お洒落な場所だとカッコつけたくなる気持ちは……なんとなくわかる
【↓○○キャンプ場 入り口】
そう記されていた看板の先の上り坂は更に勾配がきつくなっていて、地味に辛いから地味を取ってただただ辛かった。
途中『キャンプ場入り口の右手側に温泉施設があったんですね……となると夜、湯に浸かってさっぱりした後に再度、ここを通らなくちゃならないわけです…………やだな~しんどいな~』などと、俺の中の
そんなこんなで。
「くうううううぅ――着いたああああああああああッ!」
「ひゃっふぉおおおおおおおおおおおいッ! ――――ヤッホオオオオオオオオオオッ!」
俺含めた柊一向は目的地に無事到着した。駅の時と同様、柊と春名がはしゃいでおられる。
林道を抜けた先には広大な大地が待っていて――なんて簡単な想像をキャンプ未経験の俺はしていたがそんなことはなく、キャンプ場は木々に囲まれていた。山の中にあるんだからそりゃそうだろって話だがな……何事においても未経験のイメージは大袈裟である。
ひとしきり到着の喜びを言動で表していた柊が管理人さんの元へ向かい、今日お世話になるコテージへと案内される。
木造のコテージが左右で向かい合って建てられていて、それが奥へと連なっている。
その中から管理人さんが足を止めたのは最奥の右側にあるコテージの前だった。
「――以上となります。なにかご不明な点はございますでしょうか?」
「いえ、大丈夫です!」
器具の扱い方や注意点等、ひと通り説明し終えた管理人さんは柊が頷くのを見て、俺達に頭を下げ去っていった。
「とりあえず、荷物置いちゃましょ」
そう言って中へと入っていった柊の後に皆が続く。
「うおおおッ⁉ なにこれなにこれめっちゃお洒落じゃん! あのクルクル回ってるやつとか特にッ!」
「あはは、春名君てば大袈裟すぎ」
「わかってないね~片瀬っち! 男ってのはさ、あの天井でクルクルしてるやつ見つけちゃうと無性にお酒が飲みたくなるもんなんよ! あれーなんだっけ……カーボン? をさ!」
バーボンな。
「カーボン? そんなお酒あるの? というか未成年で飲酒はダメだよ」
「わかってるって、あくまで飲みたくなるってだけ! こうさ、グラス片手に葉巻をフゥーって吹かしてさ」
「喫煙もダメなんだよ?」
「あ……うん」
天井に吊り下がっているシーリングファンを見て大興奮していた春名はしかし、片瀬に2度も注意され肩を落とした。
片瀬の言ってることは至極正しいのだが……まあ、あれだ――ドンマイ春名。
二人のやり取りを横目に俺は室内をざっと見渡す。
春名の言っていた通り、お洒落の一言に尽きる内装だ。
床はヒノキ……天井はスギだろうか? 木目調の内装は夏の暑さを和らげてくれる。吹き抜け構造で解放的な空間、冷暖房も完備、家具も揃っていてトイレも風呂もあり、テレビもある。実に充実、一介の高校生には贅沢な内容だ。
「部屋割だけど、女子は下で男子は上でいい?」
「人数的に妥当だね。問題ないよ」
柊の言に両国が快く了承。俺と春名も構わないと頷いて見せ、2階へと向かった。
失礼な感想だが、1階と比べ2階は簡易的なスペースだった。男3人が川の字で寝れば使用率100%になるだろう丁度良い広さで、無駄がないとも言える。
「なあなあ、女子の誰かここの風呂に入ったりしねーかな?」
荷物を置くなり春名がやらしい笑みを浮かべながら両国にそう訊いた。
「ん? どうして?」
「いやさ、ちょっと見てみたいじゃん? というかスゲー見てみたいじゃん? ……普段学校で顔を合わせてる女子達の裸体を!」
「……やめておいた方が良いと思うよ」
「ちょ、なにビビってんのさ~数多っち~! 時にはリスクを冒さないと手に入れられない青春もあるんだぜ?」
「やめておいた方が良いと言ったのは行為じゃなく発言のことだよ……多分聞かれてるぞ? 下に」
「嘘だろッ⁉」
慌てて動き出した春名は観音開きの窓を開け、身を乗り出す。
「あ――うそうそッ! さっきの全部嘘だからマジで気にしないで! 覗いたりなんか絶対しないから――だからそんな冷たい目で俺を見るのやめてッ!」
哀れ必死に弁明する春名の背には自業自得という言葉が似合っていて、階下にいる女子達の顔が目に浮かぶ。
「馬鹿だな」
呆れたような笑みを浮かべている両国が俺の感想を代弁してくれた。
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