第14話 一方通行の先は行き止まり

 両国の気持ちとやらを打ち明けられてからというもの、柊の〝お節介〟は日に日に頻度を増していき、ついでに粗さも目立つようになった。


 毎日毎日あの空き教室に連行されては、やれ沙世ともっとLINEしなさいよ、やれ沙世と次の予定を早く立てなさいよ、やれこれだからボッチは……ここ最近はずっとそんな感じだ。


 それだけじゃない、片瀬から俺のLINEを聞き出したのか、メッセージでも催促してくるようになった。


「花厳の意向はどうでもいいとして、沙世は賑やかな場所は苦手だから……」


 そして本日も空き教室で説教タイムのお時間、というかしこたま言われた後だ。今は俺が行動に起こさないからという理由で柊が勝手に遊びの計画を立てている。


 ここまでされたらもう断言できる。柊のやってることは単なるお節介じゃない。ただ、自分のためにやっている。


 俺と片瀬を仲良くさせたがってるのもそのため。そして最終的に恋愛関係に持っていくっく腹積もりなのだろう……そう考えればラブレターを用いたドッキリの考案者が誰だか見えてくる。


 柊だ。彼女の好きは両国に向いていて、両国の好きは片瀬に向いている。ならその片瀬を誰かとくっつけてしまえばいい。


 そうすれば両国は片瀬を諦めざるを得ない。さらに、恋に破れて心が弱るというおまけもつく。恋が成就する可能性が上がる。


 柊は両国の気持ちをなんとなく察していた、だからドッキリを企てた。両国本人の言葉を聞いてエスカレートした今がなによりの証拠。


 となると必然的に片瀬はグルということになる。ヤツは柊の気持ちに気付いていないんじゃない、無知を装っただけなのだ。


 彼女の演技と思わせない演技に俺はまんまと嵌められたってわけだ。でもまあ、真に友達思いなのは片瀬なのかもしれない。


 友達の恋を応援するため、好きでもない相手と彼氏彼女の関係になるのを容認したのだから。中々できることじゃあない。


 何故、片瀬の相手に俺が選ばれたのか……想像はつく。きっと柊は『花厳ならチョロそう』なんて浅い理由でターゲットにしたんだろう。


 大誤算、状況を停滞させているかせ、柊は内心後悔しているだろう。俺じゃなく別の男にしておけばよかったと。


 詰めが甘い、その一言に尽きる。


 でも、だからといって彼女を悪く言うつもりはない。今の柊はいわば盲目もうもく、両国と両想いになる未来しか視ていないんだ。


 かつての俺と同じ……柊も片思いに自分を見失っている迷い人。


 しかもただ迷ってるんじゃない。先に道がない場所で足踏みしているだけ。それが迷惑という形になって俺にふりかかっている。


 両者とも得をしない……だったら別の道を探すようにしてやればいい。たとえその道の先に柊の望むものがなかったとしても、俺に固執して時間を無駄にするよりはマシだろう。


「……なあ柊」


「なに? 今忙しいんだけど」


 スマホを見つめたまま不機嫌そうに返してきた柊に、俺は告げる。


「もう、やめにしないか? こんな無駄なことは」

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