第5話
「どうだった?」
エリナのところに戻ると、エリナは目を輝かせて聞いてきた。
「そんな気になるなら一緒に来ればよかったのに」
「それは無理!」
ケイトの建設的な提案をエリナは全力で跳ね除ける。
「とりあえずざっくりとわかったことは、この街はここ3年で面影もないほど変わってしまったらしい」
「え? この街を3年で!」
ビルを建てるのにかかる時間、道路を敷設するのにかかる時間というのは中学生でしかない彼らにはわからないが、それでもニューヨークのような町並みが数年でできるわけがない、というとはわかる。
しかも、建築理論、技術、重機すら整っていない異世界において、だ。
「そこについてはもう一つキーワードがあった、サラディだ」
「サラディってエタニティラバーの悪役令嬢の?」
「そう、だがさっきの人は新領主と言っていた」
「領主? いや、そもそもサラディは令嬢だし、まだ学生だし、弟だっているから家は弟が継ぐはずだったはずよ」
「ちょっとその辺詳しく教えてもらっていいか」
エリナが言うには、サラディは学生でゲーム世界では王都の魔法学校にいるらしい。そして、そもそも公爵「令嬢」であり、領主ではない。だが、先程の話を聞く限りこの発展はサラディが領主になってかららしい。
ちなみにご多分に漏れず、そういったゲームにありがちなように、ゲーム通りであればその悪役令嬢がヒロインの聖女をいじめて処刑なり追放されるらしい。
「つまりそのサラディが転生者ってこと?」
「多分な、そこから歴史、と言っていいかわからんがズレが発生して、今この状態があるわけだ。実際町の人達はこの発展について何も知らないようだった」
「知らないって気づかないわけ無いでしょ?」
「技術的なことだな、ある日突然地面が真っ黒になったって言っていた。多分チートスキル的なもので作ってるんだろう。重機とか使って地道に作ったわけではなさそうだ。ビルも多分ある日ニョキッと生えたんじゃないか?」
「そんなことできるの?」
「出来るも出来ないもわからんが、そうじゃないと説明がつかん。サラディが転生者だとすれば、貴族として魔力を持ちつつ転生時にチート能力を手に入れた可能性がある。そのうえで自分が破滅することを知っていたら? 何かしらストーリーの修正を行うんじゃないか? 自分が破滅する事がわかっていて何もしないとは思えない」
「でもねぇ」
「その結果がこれかぁ」
二人は摩天楼を見つめなんだかやるせない気持ちになった。
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