第16話
「まずレベッカ。貴女は余裕がなさすぎる」
「余裕、ですか?」
「ええ。キアノ王子のことが好きなのはいいけど、それで周りが見えなくなるのは良くない。結果が今回のような事態を招くのよ」
「そう、ですわね……お姉様の言う通りです。私、昔から一つのことが気になるとそれ以外見えなくなってしまうみたいで……」
そういうところもレベッカというキャラクターの魅力ではあるんだけど、それだとあの堅物王子には通用しないのよね。
彼のタイプは素直な子。何事にも真面目でひたむきな子に弱い。レベッカもその辺は当て嵌まっているのよ。ただちょっと短気なだけ。そこさえクリアできれば、元々幼馴染という一番近いポジションにいるんだから攻略は難しくない。
ただ幼馴染って負けポジでもあるのよね。でもヒロインの方にその気がなければ問題はない。今のキアノはあくまで姫の護衛という任務であの子の近くにいるだけ。今はまだ知り合いのレベルよ。勝てるわ。
「もっと視野を広く持ちましょう。キアノ王子と結婚したら、貴女はチェアドーラ国の女王になるのよ。国のトップが些細なことで癇癪を起していたら国民はどう思う?」
「……良くは、思いません。キアノ王子の顔に泥を塗ることになります」
「そうね。だったら、女王としての器を持ちなさい。元々貴女は王子の婚約者候補なのよ。誰よりも彼の近くにいるのに、出逢ったばかりの姫に負けるわけないじゃない」
「で、でも……シャルロット姫はとても可愛らしくて聡明なお方ですし……」
「あら。私の言うことが信じられないの?」
レベッカは自分に自信がないから気持ちが焦って、ああいう行動に出てしまうのね。
だったら自信さえつけば落ち着きも出て、立派な淑女として振る舞うことが出来るんじゃないかしら。
でも自信ってどうやって付ければいいの。私の場合、今はベルだから何をするにも「ヴァネッサベルなら出来る」っていうキャラクターの元々の性格ありきの根拠のない自信を身に付けちゃってるけど、それは参考にならないものね。
だったら、この自信とプライドの塊であるヴァネッサベルの力に頼るしかないわ。
「レベッカ」
「はい、お姉様」
「貴女は、今日知り合ったばかりの私の言うことを信用できるかしら?」
「え、ええ。勿論ですわ」
「それはどうして?」
「だってお姉様は常に堂々としてて、佇まいも凛として、言葉一つ一つに揺るぎない自信を感じるからですわ」
さすがベル。中身が私でもベルの元の性格は溢れ出ちゃうものなのね。
だったら話は早い。
私はカップを置き、レベッカの前へと移動した。
「なら、私の言うことを信じなさい。貴女の頭のてっぺんから、足の先まで全てに私の言葉を刻み込みなさい」
「は、はい……」
小さく頷くレベッカの頬を両手で包み込み、真っ直ぐ目を見つめる。
頬を赤く染めたレベッカは、震える瞳で私の目を見つめ返してる。うん、貴女は十分可愛い。実際、人気投票でも上位だったし。
「良いこと、レベッカ。貴女はとても愛らしい。その大きな瞳も、ふわふわの髪も、そのピンク色の小さな唇も……」
「あ……お姉様……」
「この私が言うのだから、間違いないわ。貴女はとても魅力的な女の子よ。自信を持っていい」
「はい、お姉様っ」
よし。次はキアノの方ね。どうにかレベッカとの恋愛フラグを立てないと。あの堅物、今の段階ではレベッカのこともただの幼馴染くらいにしか思ってないはず。
でもレベッカが積極的にアピールすれば変わるはずよ。もうレベッカは感情に流されたりはしない。本来の彼女の魅力を引き出してあげるわ。
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