第2話 星祭りその1
ソールとルナは、星祭りの出店が出ている広場までやってきた。広場は沢山の人で賑わいを見せており、その中には学院の生徒も何人か見えていた。
「それ、今日も持ってきたんだ」
ルナは、ソールがズボンのポケットに掛けている懐中時計を指さして言った。
「うん。いつも持ち歩いてるし」
「今日くらいは置いてきたって良かったんじゃない?そんなに帰りも遅くはならなそうだし」
「……」
「……もしかして、例の約束ってやつ?」
返答に困ったソールに対し、ルナは察しをつけて彼に問いかけた。
「うん……。どうしても、あの約束は守りたいから」
少女ルナも、ソールの恩人については一通り知っている。とはいえ、直接会った訳では無く、かつて彼から話を聞いた時、その存在を知ったのだった。
「……そっか、それじゃ仕方ないね。いいんじゃない?」
「ごめんね、ルナ。しんみりさせて」
「そんなことないよ、だいじょうぶ」
湿っぽい空気になりそうだったのを、ルナは一言で一蹴した。こういったことも、二人の間ではよくあることだった。
「それよりほら、何か買ってこ。せっかくのお祭りなんだから!」
広場では大きな噴水を中心にして、出店がそれを囲うかのようにして展開していた。二人は広場の入口から順番に見て回ることにした。
「ほら見てソール!星飾りがある!」
「ホントだ、よく出来てるね」
屋台の中には食べ物だけでなく、星祭りの象徴とも言える星を象った木飾り、『星飾り』などの工芸品が売られているものも多い。
「お嬢さん、これが気になるかい?」
話していると、店主である老婆が声を掛けてきた。
「えぇ、木で出来てるのに何か光ってて素敵」
「そりゃぁ『星の樹』から出来とるからねぇ」
「『星の樹』?」
気になってソールが老婆に訊く。
「あぁ、普通の木ならこんなに光沢は出ないんだが、『星の樹』は星の光に反応して光る性質があるからねぇ。こういったもんにはうってつけなんだよ」
何処か得意げに説明をする老婆。ルナは気になったそうで、
「これいいかもね。でもちょっとするな〜」
「欲しいの?」
「うーん……。でもいいや、向こうの方行ってみよう!」
「あ、うん」
「見てくれてありがとね。また来ておくれ」
買わなかったのにも関わらず、その老婆は笑顔でルナを見送ってくれた。次の出店に歩いていくルナだったが、一方で明らかに星飾りを欲しがっていたルナに、ソールは色々と思う所があった。
「……」
暫しの間、ソールはその屋台を見つめていた。
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