Beautiful sky love~空の上で誓う愛~
水瀬くらら
flight 1.
カツカツ
早朝の閑散とした成田空港にヒールの無機質な音だけが響く。
ただいま午前5時。私、天野美空は午前9時、成田発、北京行きのクルーのため、一人でこんな朝早くに出勤している。
私は今年で28歳になる。もうアラサーかと思うとなんだか残念な気持ちだなぁ〜。
24歳で国立医大を卒業し、25歳でインターンを終えたがそのまま大学の医局には就職せず、航空会社に就職して、CA(キャビンアテンダント)になった。
身長は169㎝とかなり高く、目が切れ長のせいで無表情の顔でもにらんでいるようにとられてしまうことがしばしば。だから自分のこの容姿があまり好きではない。
でも飛行機に乗って世界各国を飛び回っていると、私よりも大きい女性が多くいて私が特別なわけではないと思わせてくれる。それに、飛行機のあの無駄のないボディーを見ているとやる気がわいてくる。だから私はこの仕事が大好きだ。
そんなことを考えながら歩いていると職場に到着。
「おはようございます。」
「「「おはようございます。」」」
挨拶をすると先に来ていた何人かの同僚や先輩が挨拶を返してくれた。
ここにいる人たちはみんな、あさイチのフライトで上海や北京などのアジアへ飛ぶ人たちだ。私たちクルーはみんな出発の4時間前までに出社していないといけないため、あさイチの便は結構ハードなのだ。
「美空、おはよう!仕事前からそんな疲れた顔して、大丈夫なの?」
朝から心配しているのは同僚で同い年のソン・サラちゃん。お父さんが韓国人でハーフのとっても面白い親友だ。実は彼女、もともとは看護師になろうと思っていたけど方向転換してCAになったらしい。
「まぁね。ちょっと眠いだけよ。」
「眠いだけって!ちゃんと起きなよ?北京線タイトなんだから。」
「はーい。」
サラは行動でもなんでもとってもテキパキしていて頼りになる。
”出来る女!”オーラが半端ない。そのうえ、スタイル抜群、165㎝と大きすぎない程度の高身長で顔まで美人。
突っ込みどころがない素晴らしい人だ。
「でもさ~ぁ私北京日帰りで行って、明日もまたロス便が入ってるんだよ?もう過酷すぎるでしょ。AJAってブラック企業なの?」
私たちの勤めている航空会社は『A(All) J (Japan) A (Airways)』通称AJAは国内最大の航空会社だ。
「まあまあ。私もおんなじスケジュールだから元気だしなって。」
サラに励まされても全然元気でない。それもそのはず、私は今日からの連勤なのだ。連勤というのは通常一か月に4本ほどのフライトが、近場のアジアなどが入ってしまうと連続勤務で半端な勤務時間となってしまうため、二日連続で出勤しなければならないことを指す。これがまたとてもつらいのだ。
でも今回は奇跡的にサラと同じスケジュールだからちょっと嬉しいのは事実。だから
「サラ~!心強いわ~!」
仕事も頑張れる。私はチーフパーサー資格も、ファーストクラスの資格も持っているからチーフパーサーをやることが多い。今回も次回のロス線も多分もれなくチーフパーサーだ。一番責任が重い立場だから、と~ても疲れる。頑張るしかない、か。私がどの位置(立場)に着くのかはその日にアサインされる。ちなみにファーストクラスのサービスは、資格がいるの。
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そして無事、北京から帰国した時には、私もサラもクタクタだった。北京路線はフライト時間が短いにも関わらず、フルサービスをしないといけないため座る暇さえないのだ。そのせいで足がパンパン。辛い辛い。
「あ~疲れたわね。今日の機長怖くない?」
「うん、怖かった。チーフパーサーだから話す機会が多くて大変だったもん。」
「あー、それはお疲れさまだね。明日はコーパイも含めいい人だといいんだけど...。」
「同感同感。」
私たちの仕事は、機長やコーパイと連携をとって行う仕事が多いから機長と気が合わないととっても大変!
「あ、でも明日のコーパイ佑輔だ!」
「え、そっか。じゃあ楽でいいね。」
「うん、よかった。機長が誰か知らないけど...。」
佑輔こと三郷佑輔みさとゆうすけは私のいとこで、AJAのパイロットをやっている。ごくまれに同じフライトになったりする。
家族なうえに、仲もいいから本当に楽だ。よかった、疲れてて変な人だったらどうしようかと思った。
サラと一緒に入国ゲートを通って帰ってきた。
「は~。サラ、私明日パンツにするわ。」
「私もそうしよ。長旅だし、寒いしね。」
「うん。じゃ、おつかれ~。またあしたね。」
「お疲れ。また明日。」
パンツというのは制服のこと。私たちCAには基本二種類の制服がある。タイトスカートの制服か、ズボンの制服だ。CAはスカートをはいているイメージだと思うけれど、個人的にはズボンタイプのも好き。
特に真冬なんかは温かいし、私みたいに無駄に身長が高いと逆にズボンのほうが似合ったりする。
今は12月上旬で寒いうえに、二日連続なので足のむくみもあるだろう。それを隠すという意味でもパンツは最高なのだ!
空港からは遠い千代田区の自宅まで帰り、明日の制服も準備してその日は早めにベットにはいった。
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