-7- 「偽警官」

 森崎君と道を歩いていると、人だかりが出来ていた。


 歳をとったおじさんと、若い男の人が何か話をしていて、その他の人達は遠巻きに周りを囲んでいる。


 若い男の人は日本人の様に見えるけど、どうやら言葉が通じないらしく、おじさんは参ったなとぼやいている。


(この男の人、多分異界から迷い込んだ人だ)


 何となく、僕は直感した。


 やがて、誰かが通報したのか一台のパトカーが到着し、中からお巡りさんが5人くらい出て来た。


「警察です。その人は、我々が保護します」


 お巡りさんは全員で、異界から来た男の人を取り囲み、あっという間にパトカーに乗せてしまった。


「ご協力、ありがとうございました」


 そう言って、お巡りさん達も次々とパトカーに乗り込んで行く。


「待ってくれ。あんた達、本当に警察官か?」


 最後の一人が運転席に乗り込もうとした時、森崎君が呼び止めた。


 そのお巡りさんは一瞬ぴたりと動きを止めたけれど、何も言わず、結局車に乗り込んだ。


 パトカーはすぐに発進し、何処かへ走り去った。


 パトカーが走り去るのと入れ違いで、別のパトカーがやって来た。


 二台目のパトカーから降りて来たお巡りさんは、今度は一人だけだった。


 駐在さんである、森崎君のお父さんだ。


「親父、偽警官だ。今のパトカーが、男の人を連れてった。追いかけてくれ」


 森崎君が、お父さんに訴える。


「何だって」


 息子の言葉に驚いて、駐在さんはパトカーに戻って発進した。


「森崎君。偽警官って、どう言う事?」


 走り去るパトカーを見守りながら、僕は質問した。


「俺もよく知らねえけど、この街には、偽物の警察官が時々出るんだ。けど、あまり詳しく知らない方が良いぞ。知りすぎると、そいつの所にも偽警官が来るらしいから」


 その答えに、僕はそれ以上尋ねるのを止めた。

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