第45話 覚悟
家に着いた俺は、そのまま部屋に向かってベットに飛び込んだ。
誰も来てほしくない、話しかけて欲しくもない。とにかく誰にも関わらないで欲しいと願った。多分、今この状態の俺に話しかけたら狂ったように怒鳴ってしまうかもしれない。それくらい、俺の心身状態は深刻だった。
「――――」
俺はどうしたら良いんだ。メリーが居なくなってしまったら、また寂しい生活が戻ってしまう。まだ咲が居てくれるから良いけど、それでも刺激的な日常は消え去ってしまうことには変わりはない。
『あの⋯⋯ゆーまくん』
「――――俺に話しかけないでくれ」
『こっち向かなくても良いです。メリーの話だけでも聞いてほしいんです。ダメでしょうか⋯⋯』
「――――なんだ」
もう俺には体を動かす気力もなかった。メリーが俺に話しかけていることは声で分かっている。本当は1人にして欲しかったが、メリーがどうしても聞いて欲しいと訴えかけている気がしたから、耳だけ傾けることにした。
メリーは少し間を開けて、そして話し始めた。
『メリーは分かっていますよ。
「ははっ、そんなことないだろ。俺なんかよりも、咲じゃないか?」
『――――もう、良いですよ』
「何が⋯⋯」
『もう、我慢する必要は無いんですよ。もうここにはメリーとゆーまくん、2人しか居ないんですから』
「――――っ! うっ⋯⋯ううっ⋯⋯!」
メリーが俺に寄り添う感触があった。そしてメリーは俺を優しく包むように身体を密着させた。そしてそう言われると、俺は堪え切らなくなって泣いた。それも、自分でも制御できないほどに。
そもそも泣いたこと自体、小学校低学年以来だったと思う。そのくらい久しい感情だった。
「メリぃ、行かないでくれよ⋯⋯。寂しいだろ⋯⋯!」
『メリーだって、ゆーまくんと離れ離れになってしまうのは寂しいです。でも、もう変えることは出来ません。だからせめて残り一週間、充実した楽しい生活を送りたいんです』
「メリー⋯⋯」
『だからゆーまくん⋯⋯。いっぱい楽しいことしましょうね』
「――――っ! ああ、少ない時間だ。今から楽しいことをたくさんやろう。メリーが後悔しないように⋯⋯!」
◇◇◇
時間も時間だから、俺は布団の中に潜り込んだ。
今日は色んなことがありすぎた。久しぶりに姿を現した聖斗、聖斗からメリーがこの場所に居られる期限を伝えられたこと、そしてそれを怒り、必死に否定する咲の姿――――俺達がこんな修羅場になったのは初めてな気がする。
「はあ、疲れた⋯⋯」
ゴソゴソ⋯⋯
「――――?」
そろそろ寝ようとした時、布団の中から何やらモゾモゾと動いた気がした。誰なのかはすぐに分かった。
「メリー」
『失礼します、ゆーまくん』
ひょこっと布団から顔を出してきたのは、やはりメリーだった。
そうか、こんなことが出来るのも1週間しかないのか。そう考えると、1週間という期間はあっという間すぎる気がする。
「寒くないか――――って、幽霊には寒いも暑いもないか」
『そうですよ、幽霊は何も感じません。ただの生霊ですから』
「なのにメリーは実体化出来るっていうのが不思議だよな。ちなみに実体化しても⋯⋯」
『暑いも寒いも分かりません』
「だよなぁ」
『ふふっ、実体化しても幽霊は幽霊なのです』
そんな他愛のない話をする俺とメリー。本当にしょうもない話なんだけど、これでも楽しいと感じさせてくれるのもメリーのお陰だ。メリーが気づかせてくれたんだ。
だからこそ、この短い期間でメリーに恩返しをしたかった。俺の願いは1つ。
「なあメリー。メリーがいなくなってしまう前に、何かやりたいことはあるか? 何でも言って欲しいんだ」
『メリーがやりたいこと、ですか?』
「ああ、今までメリーがいてくれたことでどれだけ俺のことを変えてくれたか⋯⋯。だから、俺はメリーに感謝しているんだ。恩返しがしたいんだよ」
『恩返しだなんて⋯⋯。メリーはただゆーまくんのお隣りに居ただけですよ?』
「それでもだ。咲のことだって、メリーが来る前まではあんなに楽しそうにはしてなかったんだぞ? いや確かに、俺と話している時は楽しそうにはしてたけどさ。でも、メリーが来てからは咲も変わったよ。前よりももっと自分を出すようになった気がするんだ」
メリーが来る前は、ただの幼馴染として接している感じだった。でも、メリーが来てからはさらに距離が近くなったし、喜怒哀楽の表情が頻繁に変わるようになったと思う。
そうなったきっかけも、間違いなくメリーだ。同じ性別の友達が出来たこと、ある意味ライバル的な関係にもなっていたからこそ、自然と自分を強調出来るようになっていったんだと思う。
それは、異性の俺には出来ないことだ。何故なら、異性間では理解できないことも多いからだ。『男子って⋯⋯』『女子って⋯⋯』なんてことはよくある話。俺と咲も付き合いは長くても例外ではない。未だに咲についてよく分からないことだってある。
でも、同じ性別なら同調できることだってたくさんある。普段、俺以外はほとんど人と接することをしない咲は、同じ女子の友達もなかなか作れなかったことも事実で、女子特有の悩みも全部1人抱えて過ごしてきたはずだ。
そんな中で、突然現れて瞬く間に仲良くなっていったのはメリーだった。
「メリーが居てくれたから、咲も何だかんだ毎日楽しく過ごしていくことができた。きっと、咲も感謝していると思うよ」
『それは⋯⋯良かったです』
俺がそう言うと、メリーは嬉しそうに優しく微笑んだ。でも、どこか寂しそうな表情をしているようにも見えた。
「だから、メリーには最後まで楽しんで欲しい。だから、俺は何でもするって言ったんだ」
『メリーのしたいこと――――。あっ』
「何か思いついたか?」
『メリーは――――』
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