第8話 メリーさんと授業を受ける
さて、今日は座学が沢山ある。
俺は友達がいないから、かえって座学が多めの方が助かる。
体育とかだったらペアを組むことが多いから友達がいない俺は自然とボッチになるんだ。
『ふーん――――全然わかんないです……』
『メリー?』
『なんですか?』
『もしかして勉強出来ない系?』
『―――――っ! そ、そうです……』
メリーはめっちゃ難しい顔をしながら、机の上に広げてる数学の教科書を眺めている。
今数学で扱っているところは二次関数。
最大値と最小値を求めろっていうのをやっている。
『これどう求めるんですか?』
『これはまず、問題文に書かれている方程式を平方完成させるんだ。
この問題の場合は――――ってなる』
『ふむふむ……』
『んでこの問題は範囲が決められてる。
1≦X≦4になってるから、平方完成させた式に代入してあげると……ほらYの値が出るでしょ?』
『なるほど! ゆーまくんは頭がいいんですね』
『俺こう見えても学年トップ10の成績持ってるからな』
『さすがです!』
俺は頭をボリボリ掻く。
なんか今まで褒めてくれる人とかいなかったから照れるな……。
「――――ま。東! 聞いてるか!?」
「あ、はいすいません!」
「じゃあこの問題解いてみろ!」
「ま、まじか……」
みんなの視線が痛い。
しかも仲良いやつ1人も居ないから前に出るのがマジで嫌。
『ゆーまくん』
俺が席を立とうとした時、横からメリーが呼び止めた。
メリーは俺の傍に来ると、
『頑張ってくださいね。メリーはずっと、ゆーまくんの傍で応援してますから!』
はぅあ!!
なんてときめいちゃうような言葉なんだ……。
よし、俺もメリーに応えられるように頑張るぞ!
そして、俺はめちゃくちゃ張り切って黒板へと向かった。
「ん? 今日は随分機嫌が良さそうだな」
「そうですか?」
「いつもより明るい感じに見えるぞ? なんか良い事でもあったのか?」
「別に何もありませんよ」
「そ、そうか」
◇◇◇
はぁー……。やっと終わった。
早く家に帰りたい。
『お疲れ様です、ゆーまくん』
「一日中見てるだけだったけど、退屈じゃなかったか?」
『何を言ってるんですか。わたしはゆーまくんが頑張っている姿を見れるのがすごく楽しいんです』
本当に良い子だなぁ。
なんか涙出てきちゃいそう……。
『もしかして泣きそうになってるんですか? 意外に可愛いところがあるんですね。さて、一緒に帰りましょう? 家に帰ったらゆーまくんに甘えたいです!』
「しょーがねぇなぁ。はは……」
帰ろうとしたその時、
「ちょっと待ちなさいよ!」
後ろからあの人の声が。
「わたしを置いて帰るなんて許さないからね悠真」
「はいはい」
「むー」
咲は頬を膨らませながらも、俺の隣まで早足で駆け寄ってきた。
「―――――」
「―――――」
気まずっ!
朝の件があってからかめちゃくちゃ話しかけづらい。
でもあれは俺が謝らないといけない。
理由はないけどとりあえず謝んないと。
「さ、咲?」
「なに?」
「その……朝のあの件については本当にごめん」
「えっ、なんで悠真が謝るの?」
「えっ?」
「えっ?」
「「―――――ぷっ! あははは……!」」
「予想外な反応に吹き出しちまったよ」
「わたしも急に変なこと言い出すから」
咲が怒ってなくてよかった。
どんな地獄を見せられるかと思ってたから安心した。
大事な友達をなくすかとマジで不安になってたから焦ってたけど、そんなのは杞憂だったみたいだ。
「そんなことでわたしは怒ったりないよ。その……ちょっと悔しかったから」
「悔しかった?」
「まあ、そのうち分かってくれるといいけどね」
どういうことだ?
朝の出来事を思い返してみる。
メリーの存在に気づいて、咲は顔を真っ青にしてた。
その後、事情を説明したら肩をめっちゃ揺らされて俺は空に向かって行ったよな。
メリーは咄嗟に俺を掴んで俺をもとに戻してくれて、俺に飛びついてきた。
んで、それを見た咲は泣いていた……。
まさか俺のことが好きなの、か?
ありえないありえない!
俺と咲は幼馴染みだ。
昔から今日まで2人で良く遊んではいるけど、恋愛対象として見ていない。
「メリーさん、だったよね?」
『はい』
「あなたのこと悠真と同じくメリーって呼んでいいかしら?」
『ええ、良いですよ!』
「ならわたしはメリーに物申すわ!」
咲はメリーに向かってビシッと指をさす。
『な、なんですか?』
「わたしは絶対にメリーに負ける気なんてないから。覚悟しておきなさい!」
『―――――』
メリーは呆気にとられていた。
だがすぐにこりと笑うと、
『メリーだって咲さんには負けないつもりです。いつでもかかってきてください!』
な、なんか2人の間に火花が散ってる。
俺には2人の言ってることが理解できないけど、なんか戦いが始まるっていうのが凄い伝わる。
2人はしばらく睨みあったあと、くるりと俺の方へ体を向ける。
「じゃあ帰ろうか!」
『帰りましょう!』
「えっ、いきなりそうなるの?」
『別に咲さんと仲悪くなるなんてことはありませんから』
「そうそう」
「えぇ……そんなことある?」
『どちらかと言えば良きライバル、といったところですね』
「そうね」
「ソ、ソウデスカ……」
もう何が何だかわかんなくなってきた。
考えても無駄な感じがするからさっさと帰ることにしよう……。
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