第28話 双子

 双子の朝は早い。

 ガジャーノさんの一時間前くらい早い。


 起きたら顔を洗い、服を着替えて木剣で素振りをする。

 朝食の前に汗を拭き、食べたら洗い物をする。

 ここまでは騎士と同じ動きだ。


 午前中は収穫があるなら収穫と洗浄、箱詰め作業。

 収穫がなければ、水やりか手入れ。


 昼食を食べた午後からは、魔法の訓練と座学をし、カフェシエルが終わる時間に、キオラールくんとギルバートさんが来る。

 二人と双子で組手をし、一人ずつ我流の近接戦闘を教えていく。


 夕食を食べ終わると自由時間で、十時には就寝。



 規則正しい生活を送り五年が過ぎた。






 「あの子たちにそろそろ、学園に行かせるのはどうかしら」


 「うむ。 学園へは十二歳から入れる。 あと二年である程度まで詰めていくか」


 「ねえ、私まだ六十二よ? ここでの生活が、ゆっくりだからまだまだ元気が有り余ってるわ」


 何かを求めるかのように微笑んだ。


 「なら、わしは六十五か。 さて、どう過ごすかの」


 「あと一人くらいならいけそうよ」


 「ほう。 成人する頃には高齢じゃが、挑戦してみるか」




 「レン、学園って何?」


 「さあ? 聞いたことないな」


 「明日になったら聞いてみよう」






 「「父上、母上」」


「どうした、二人揃って」


 「学園って何?」


 「「!!!」」


 どこで聞いてきたのか考えを巡らせていると……。


 「昨日話してるの聞いちゃったの」


 「そうか、うむ。 そうだな……話しておこう」


 「学園というのはな、ファジール王国にあるファジール魔術学園のことだ」


 「父上が治めてた国だよね」


 「そうだ。 その学園には十二歳になったら入学の機会が得られる。 お前たち二人には知り合いと言えば、ユウトとギルバート、時折来るカフェシエルの従業員、家族のキオぐらいだ。 同年代の友と呼べる者が一人もおらん」


 「その為に、学園に通うのよ。 もちろん友達は多くなくても良いわ」


 「そうなんですか?」


 「ええ、心から信頼出来る親友と呼べる人が、一人でもいるなら極端な話、友達はいなくても良いくらいよ」


 レンは、なら何故通う必要があるんだ、と言いかけたが父の言葉を待った。


 「学園には友を探すだけでなく、貴族や平民とのやり取り、常識の違い、経験などを積むために通う」


 「ここが『神の島』と呼ばれておるのは、話しておるだろう? ここでの生活は王都での生活とは違う。 特に貴族の生活はな。 どういうところが違うか、わかるか?」


 「えーと、どこだろう……」


 「行ったことないから、わかんない」


 何があるかと思い浮かべるが、わからない。


 「わからないから、それを知りに行くんだ」


 「ひとつだけ答えてやろう」


 「貴族が農作業をすることは確実に、ない」


 「「え」」


 「農作業は平民がやり、平民から買い取った作物などを商会が売り、それをメイドや料理人が仕入れる」


 「あと、食後に洗い物をする事もないわ」


 「人任せじゃないか」


 「使ったものは自分でやらないと……」


 「だが、これもまた貴族にとっては常識で、平民にとっては非常識なんだ。 そういう違いを学園に通えば知れる」


 「何も2人を出て行かせる為に学園に通って欲しいんじゃなく、人生を豊かに様々な事を学ぶ為に通うのを勧めてるの」





 「因みに、学園に通ってる間はキオラールのいる屋敷で生活して貰う」

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