第20話 雇用と
「えーと、キオラール様がシャーノアくんで、ガリュームさんがガリムさんで良いんですよね」
タイミングよく頷く三人。
「学園が終わり次第という事は、大体二~三時間勤務ですね。 シエルでは時間給にしてるので、一時間大銅貨五枚と決めていて、働いた時間と日数でひと月の給料を渡します」
「シャーノアくんの場合は、大銅貨五枚二時間で銀貨一枚になり、銀貨一枚三十日なので、大銀貨三枚が給料です」
「三時間の場合は、大銀貨四枚と銀貨五枚です」
「大商会のアズモール商会がひと月、大銀貨一枚じゃな」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「開店から閉店まで十時間ありますよね?」
「ええ、なのでフル勤務の場合は、金貨一枚と大銀貨五枚です」
「マスター。 材料費や土地代、維持費、更に従業員の給料を払って残りはあるんですか?」
「大丈夫ですよ」
「材料費も維持費もなし。 従業員の給料が合計金貨十枚としても、商業ギルドに土地代含む五分の一を納めた残りは、白金貨二枚と大金貨八枚と金貨五枚と大銀貨二枚になります」
「材料費も維持費もなし……」
何か俯いて呟くガリムさん。
「では、シャルルさんと説明交代するので、シャーノアくんはメイドのマリナの所で持ち帰り用のパンの販売」
「ガリムさんは……ガリムさぁーん」
「はっ……ありえない金額が聞こえて……」
「ガリムさんには厨房で働いて貰いたいです。 料理スキル結構高いですよね」
「自炊出来るほどには」
「リオルクさんが作業を一通り覚えてるので、教わってください」
「あと、シャルルさんに来るよう、声をかけてもらっても良いですか?」
笑顔のシャーノアくんとぶつぶつ言ってるガリムさんは、部屋を出ていった。
「アイリスさん。 もし2人がバレたらどうしたら良いんですか」
「鑑定を使わなければ、見破ることは出来まい。 大体、ステータスは個人情報じゃからの、ほいほい鑑定する者はおらんじゃろ」
コンコンッ
「どうぞ」
「失礼します。 シャルルです」
◇
「えぇー!!」
はい、予想通りの反応ですね。
「私の場合、息子の迎えがあるので八時間勤務で、えっと、金貨一枚と大銀貨二枚……合ってますか?」
シャルルさんは指を折り曲げて計算し、答えを導き出す。
「合っとるぞ」
「ギルドマスター……紹介して下さってありがとうございます。 マスターもありがとうございます!」
その分、働いてもらうけどね。
◇
黒のフードを被った人影が夜の平民エリアで動いていた。
壁伝いに歩き、人が来ると物影に隠れ目的の路地裏まで冒険者時代に鍛えた忍び足で静かに進む。
音もなく扉を開け、猫のようにするりと部屋へ入り閉めると、部屋の奥から声がかかった。
「遅かったな」
同じく黒のフードを被った人影が木製の箱に腰掛けていた。
「魔法陣は描き終えた。 後は闇ギルドに依頼すれば完了だ」
「そうか、ようやくだ。 ようやく生意気なガキを……」
「待て」
「なんだ?」
眉間にしわを寄せ考え込むように黙る男を見かねて声をかけると、扉の方から大きな声が響いた。
「元冒険者ギルドサブマスターのゲドーと、商業ギルドサブマスターのゲラルディー! そこに居るのはわかっている! 貴様らは既に騎士団によって包囲されている。 大人しく投降しろ!」
「何故だ! 何故この場所が!」
「ゲドー!! 貴様か! 貴様が……!」
ドムッ
ゲラルディーの腹に鈍い痛みがあり、彼は腹を抱えて床に倒れるしか無かった。
腹をいきなり殴ったその拳が、流石冒険者といった所か、見事に入り立つことが出来ない。
ゲラルディーを置いてダンダンダンと慌ただしく駆け上がり、小屋の窓から近くの屋根へ飛び移った。
騎士団の一人が「屋根だ!」と叫び、数人がゲラルディーを取り押さえる中、後を追った。
そしてそのままゲドーは〈スキル 隠密〉を使い姿を闇に消した。
数時間後……
王都本部冒険者ギルドにある、通常依頼の全てが回収され緊急依頼が張り出された。
その緊急依頼の内容を見た者は愕然とした。
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