第18話 新しい仲間
黒のエプロンをしてカウンターに立ちながら、コップを磨いていた。
マリナは店の奥の机で硬貨を数えている。
そして一言僕に告げた。
「店主、ここで働かせて欲しい」
アイリスさんの言う通りになっちゃったよ……。
「うーん、レストランの副料理人だよね? 抜けてしまって大丈夫?」
「はい。 もうレストランは辞めて来ましたし、引き継ぎもして来ました」
めっちゃ行動力あるなあ……。
「僕としては調理できる人が増えてくれた方が、料理の幅が広がるから嬉しいんだけど、暫く調理法を独占しておきたいんだよね。 だから一番心配なのは情報管理。出来る?」
〈スキル 鑑定〉
「必要なら教会や商業ギルドで契約を行います」
「いや、契約は良いよ。 試して悪かった」
「マスター。 初日の売り上げが出ましたので報告させていただきます。ロールパンが三千五個で、金貨四枚と大銀貨五枚と大銅貨七枚と銅貨五枚になりました」
「続けて食パンが、三千百二十斤で、金貨七枚と大銀貨八枚になりました。」
「え?」
僕は言葉を失った。 まさかそんなに売れてたなんて。
ほら、リオルクさんを見てみなって無表情が崩れて驚いてるよ。
持ち帰り用のパンだけでも、六千百二十五個で大体、大金貨一枚と金貨二枚と大銀貨三枚の売り上げだよ?
商業ギルドに五分の一の硬貨を納めても、金貨九枚と大銀貨八枚 と銀貨四枚残っちゃうよ?
大商会の一ヶ月分の売り上げが大金貨5枚程なのだが、それを開店初日で5分の1、稼いでしまった。
特に王家御用達を取られた店からは、逆恨みされそうなんだよね。
「リオルクさん、改めてこのカフェシエルのマスターをしている、ユウト・サトウと言います。まだまだ開店したばかりで持ち帰りに殺到してるのが現状ですが、よろしくお願いします」
「平民のリオルクです。 歳は二十二。 同僚からは真面目、堅物と呼ばれてました。 こちらこそよろしくお願いします」
「それで、マスター、そちらの女性は……」
「メイド型オートマタのマリナと申します。 従業員がいない為、マスターに駆り出されております」
それさっきも言ってたよね。
「オートマタ?」
「機械人形でございます」
「どういうことですか? マス『バァン!!!』」
勢いよく扉が開かれ、その大きな音がした扉の方を見ると、リアさんが肩で息をしていた。
「リアさん。 店は閉店しましたよ。 忘れ物ですか?」
リアさんは僕の目の前まで駆け寄り、勢い込んで話し出した。
「はい! そうなんです! 忘れ物をしました! このカフェシエルで働くにはまず、お互いの事を知るのが必要だと思い、自己紹介をしに来ました! リオルクさんも来るだろうと思ったので、走って来たんですが、もう着いていたんですね!」
「リアさん……さっきと全然雰囲気が違うね」
「あ、あれは緊張してて」
「まあ自己紹介ならさっき済ませたところだよ」
「ええーーーーー!!」
「リオルクさん、二十二歳で無表情イケメン。 こっちは、メイド型オートマタ……機械人形のマリナ。 僕が、シエルのマスターであり冒険者業もしてるユウト。 はい、次はリアさんの番」
「は、はい! えっと、昨日まではノクターン酒場で、看板娘をしてましたリアです」
「酒場の雰囲気に合わなくて辞めてフラフラしてたところ、商業ギルドマスターのアイリス様に喫茶シエルを勧められました。 精一杯頑張りたいと思います!」
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