異世界行って銀行屋さん始めました!
筋男
第1話 知らない所に行っちゃいました
真夏の炎天下の中、営業のために電車を乗り継ぎ、顧客周りをしている。あー、今日も課長に怒鳴られるなー。マジでやってられないよな。
俺は社会人6年目の銀行員だ。大した理由で銀行に入ったわけじゃない。本当にただモテそうとか、給料が高そうとか俗な目的しか持ち合わせていない。その程度の思いの人間が入るには辛すぎる場所だったぜ。
時刻は15時30分、そろそろ戻って課長に今日の報告とかしないと怒られる。今日は融資案件見つかったけど、微妙な内容だからなー、悩むなー。15時35分、まだ太陽の日差しは強い。休んでいた木陰のベンチから重い腰を上げる。支店に戻ると、課長が先輩を怒鳴っている。機嫌が良くないらしい。5分経っても終わらない。企業ごとの資料が散らかされたデスクのうえで、PCを立ち上げながらタイミングを見極める。ようやく終わった。
「課長、本日の報告よろしいでしょうか?」
「何かちゃんとやったんだろうな」
「えっとー、今日はA社で5000千万円の融資の検討依頼とC社で社長の後継者の話をしてきました。」
「A社、C社はどうするんだ?」
「A社は信用保証協会を使えるか確認取ること、C社は情報整理して事業承継の話ができるか確認します。」
「内容は分かった、で、それだけか。」
やはり逃げ切れなかったようだ。課長の怒号が飛ぶ。目標が~、お前は人間として~、社会人として、銀行員として~、慣れたがいつも通りの人格否定のオンパレードだ。慣れても辛いものは辛い。課長の説教が終わり、席に着くと先輩が声かけてきた。
「悪い、あいつ今日機嫌悪いの俺のせいだ。ちょいミスった。」
「仕方ないっすよ。あいつ、命令ばっかして自分動かないんすからこっちの負担大きいですし、そんなこともありますよ。」
課長の視線を感じ、すぐに会話をやめて大量に残っている事務作業に取り掛かる。19時45分、ようやく課長が帰った。21時20分、課のメンバーもそろそろ帰れそうだ。ヘトヘトになって帰宅する。こんな生活で遊ぶ余裕も彼女作る余裕もなく絶賛独身寂しい部屋に入る。飯も当然、コンビニ飯だ。家のことはテキトーに済ませて早く寝る。そして、また地獄の朝を待つ。
次の日、夏とはいえ外がやけに明るく感じる。いつも通り5:45に起きる。モーニングサテライト、通称モーサテを観るためだ。観てないとまた仕事にならないくらい怒られるのだ。出勤準備をして、いつも同じ6時52分、家を出る。外が異常に明るい。なんだ、これ、何も見えない。
眩しすぎる程の光の中を進むと、中世ヨーロッパのような場所についていた。
どこだ、ここ、、、。
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