第42話急報が来る




オーランド王国の王都に、96式装輪装甲車1台と軽装甲機動車2台で訪ねた。


ヘンリ王子とニーナに男の子が誕生して、国民に披露する披露会を明日に控えていた。

名目上、ニーナは俺の子として扱われているので、出席しない訳にもいけなかった。

それに彼女らが会いたいことは分かっている。


綺麗な部屋でニーナが赤子を優しく抱き、傍らにはヘンリ王子が見守っていた。


「ニーナ、会いたかったわ」


シランは、ニーナを見た途端に駆け寄っている。

つられるようにアッキーとララとユナも駆け出した。


周りに居る護衛が一瞬緊張したが、ヘンリ王子が片手で止まれと合図を送り何事もなかった。

俺も一瞬だが身構えてしまった。


「この子、名前は決まったの」


「ええ、国王さまがリーンて名を付けてくれたわ」


「リーン、お姉さまでちゅよーー。笑ったわ」


「アッキー、母親の友人はその子からするとおばさまになのよ。わたしもそうだけど」


「お、おばさま、何処がおばさまなのこんな美貌のわたしに向かって失礼よ」


「リーン、あんなしわの増えたお姉さんに笑うと大変だからね」


そんな光景を、ララは無心でカメラで撮り続けていた。


そんな、なごんだ雰囲気を邪魔するように、ドアが乱暴に音を立てて開かれた。

入ってきたのは宰相で、肩で息をしている。


「やはりここだったか?緊急の知らせが入りました。王子と公爵は王室へお越しください」


急かされながら移動した先に、王は窓の周りをうろうろと歩き回っていた。


「国王、連れて参りました」


「ご苦労、ドアを閉めて誰も入れさすな」


宰相は衛兵に命令して戻って来た。


「宰相、詳しい話しを公爵にしてやってくれ」


国王はそう言って、椅子に疲れたように深く座り込んだ。


「バラン帝国の帝都が落ちたそうです。皇太子のみが難を逃れ帝国中央で防戦していると連絡がきました」


「それで攻めてきた国は、何処ですか?」


「東の羅漢らかん大陸のラカン連合国だと、もっぱらの噂です」


「通信機はどうしたのですか?」


「帝都の通信は通信不可能です」


刻々と入ってくる情報をまとめると、帝国は近い羅漢大陸を狙っていた。

しかし、戦を有利にする為に、西の国々を攻めて戦力の増強を計る計画立てて実行。

しかし裏目に出て、海軍はボロボロ状態におちいった。


羅漢大陸の国々も薄々気付いていて、羅漢大陸内で国々が秘密裏に会合。

そして連合国を暫定的に結び、今回の行動にでた。

それを推し進めた国が、ターラ国とサラン商業連合国であった。

サラン商業連合国も手広く帝国とも貿易をしていた為に、帝国の情報が筒抜け状態で裏で大金が飛び交っていた。

ラカン連合国の指揮官を数名を捕まえて、拷問による情報である。


帝都の離れた陸に、充分な軍を船で送り込み、決行日に陸から帝都を攻めた。

時間差をおいて海からも船で攻めた。

それでも陸を守り切ったが、港が制圧されてなす術もなかった。


皇太子は急な親友の死を知り、急ぎアビラン都市に護衛と行った為に戦いに巻き込まれなかった。

その事からも、帝都の城内にもスパイが居たのではと噂されている。


ターラ国は、多くの魔術士を抱えて魔法国とも呼ばれる国であった。

まとまった魔術士の魔法攻撃は【火砲】も凌ぐ攻撃力があり、魔術士の移動も【火砲】より容易いのがメリットであった。




1日が経ち、ドローンによる上空からの情報が入ってきた。


「ラカン連合国は、この国を攻めることは間違いないのか?」


モニターに小型ドローンによる盗み撮りが映し出されていた。

城内の窓か撮られた物で、盗聴の音もバッチリ聞き取れる。


「帝都を落とせたのに、何故アビラン都市が落とせない」


「あそこは、元々が城砦で有名でして、海軍のようにボロボロでない陸軍が相手です」


「言い訳は聞きたくない。オーランド王国が海から攻めてきたらどうする」


「それならば、我が魔術士集団の奥の手の【火炎の広範囲魔法】で一気に決めますよ」


「それは頼もしい。しかしオーランド王国の情報は嘘臭い話しばかりだ。真相はどうなんだ」


「どれを取っても、真実な情報は入ってませんな。高速で動く船事体が嘘です」



モニターを見ていた20人程が、真剣な顔で見ていた。


「バラン帝国を攻めた以上、この国もただでは済まないでしょう」


「ならば増援を送るのか?」


「増援を送りましょう。そして交渉して真意を確かめましょう。カメラ撮影で送るのでここで決断して下さい」


「あのモニターを見て決断か?直に見ての決断と変わりない。それでは頼む」


国王は、ふかぶかと頭を垂れた。


宰相が駆け寄り「国王、そんな事はしてはいけません」


「良いのじゃ。ワシも年を取ったようだ。疲れが溜まる一方で、この件が片付いたならば王位をゆずる」


「それで良いのですか?」


「ああ、それでいい」


「それでは、増援を行います。それと同時に戦う準備を行いましょう」



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