第32話 悩みの答え

「今日はこの辺で野宿だな。」


ハレルドが外の兵士の1人にそう声をかけると、馬車が止まった。

帰りはかなりゆっくりで、野宿することになった。


ヴォルダリアとコールは先に連れていかれ、そろそろ城に着いた頃だろう。


私達は山道は通らず、近くのベレアジノ領を通って行く事になった。


「ベレアジノ当主には知らせを送っておいた。直ぐに返事が来ると思うから。」


「だね。ベル、僕達は向こうでテント張るの手伝ってくるね。」


「疲れているところさらに力仕事をさせてしまってすまないな。」


「いいのいいの、女の子にはさせられないから。」


私はそう言って馬車を降りた二人を見送りしばらく外で鳴る音に耳を傾けながら考えた。


もしシェルジオがディアンベルの当主になりたいと言ったら、離婚…することに。


「あれ、もしかして私、墓穴掘った?」


今更気づいた。


あ、でも、離婚すればミリアの恨みが私にむくことが無くなる?


私は新たな悩みに頭を抱えた。


『シェルジオはダメだぞ。』


「うわぁっ!」


いきなり脳内で響いたベルの声につい驚き椅子から落ちた。


「ベ、ベル!大丈夫!?」


『ああ。それよりもコールの捕縛、ご苦労だったな。』


「ついでに当主も引きずって来たけど、そのせいでシェルジオが…。」


『なるほど、それで悩んでいたのだな。では、お前は、何故優秀な長男のシェルジオが人質になったか、分かるか?』


「え?」


『コール・ディアンベルという兄より劣っている次男がいるにも関わらず、何故次期当主のシェルジオがディアンベル代表としてメルデイに来たか。』


「確かに、なんでコールじゃなくてシェルジオが来たの?」


『私の記憶の中に答えはある。それが分かればその悩みは無くなるだろう。思い出せ。』


そう言ってベルリアの声は聞こえなくなった。


コールじゃなくてシェルジオが来た理由?

それが答え?


ますます分からなくなり、私はベルリアの記憶を必死に遡った。

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