第966話 ポンコツグレン

 1日1階、47・48・49階と進んできた。この3階分には特に大きな変化は無かった。しいて言うなら、階段までの距離が遠かったと言った所だろう。


 明日は、50階にいるボスとやらを倒して、ダンジョンコアを掌握してやる!


「という事で、グレン。50階にいるボスってどんな奴だ? 前にボスっぽいのがいたって言ってたけど、特徴とか覚えてないか?」


『ん~なんかおっきくて、ブレスを吐いてきたな。マグマに潜ったり、たまに空をんで俺の事を追いかけて、食おうとしてたりしたな』


 うん、わからん! こいつに聞いた俺がバカだったかもしれない。まわりを見ても妻たちはポカーンとした顔をしているし、ダマは器用に座って両前足を使って、こめかみを押さえるような仕草をしている。お前日に日に人間っぽい仕草が増えてきているな。


 それにしても、空をべるのか? その上、マグマにも潜る。そしてブレスも吐くと……レッドドラゴンみたいな炎系に強い魔物かな? まだ寝るまでに時間があるから偵察に行ってみるか?


 みんなも同意してくれたので、人造ゴーレム達に偵察に行ってもらおうか? 今まで使っていなかった人造ゴーレムを取り出して、魔導無線機を着けてカメラの調整をする。


 本当はこの人造ゴーレムを防衛に使いたかったのだけど、人造ゴーレムは複雑な命令ができないから、指示を出す者がいないと使い辛いのが難点だ。前に防衛とかに使ってた時は、護れとか命令を出していて問題が無かったんだけどね。


 ずっと使っているうちに、自分の判断が上手く出来ない事に気付いて、指示の出す者がいない時は極力使っていない。ただ、明確な指示ができる場合は、かなり便利である。統括できる魔導頭脳みたいなのがあれば最高なんだけど……今の所作成に成功していない。


 それはいいとして、今回は2体しか持ってきていなかったから、どのみに守りに使うのは難しかったしな。


 さて、人造ゴーレムよ! いってこい!


「あ~グレンの言葉を鵜呑みにしていた俺がバカだった。マグマだけじゃねーし! 氷山もあるじゃねえか! あいつは本当に鳥頭なのか? って事は、火山の方のボス以外にも、氷山の方のボスもいるのか?」


 ちょうど2体いるので、調査する方向を別けよう。


 今人造ゴーレムが立っているのは、右手に火山、左手に氷山が見えて、目の前が幅1メートル位でみえる範囲草原みたいなのがずっと続いている。なので、火山と氷山に1体ずつ人造ゴーレムを進ませる。


 俺の言葉後聞いていたダマがグレンを咥えて、俺の前まで連れてきた。何でそんな状況になってるんだ?


『主殿、馬鹿を連れてきました』


 簡潔過ぎて反対に意味が分からん。何でバカだからって俺の前に連れてくるんだ? 今は偵察に忙しいのだが。何となく察したダマが、


『グレンが適当な事を言っていたので、反省の意味も含ませています』


 って、反省の意味を含ませるって、馬鹿正直に言ったらだめだろ? それにしても、死んだ鳥のようにグデーッとするのは、心臓に悪いから止めてくれ。


「ダマ、得意不得意があるんだから、グレンの報告が適当だったのを、いちいち気にしてたら時間が足りなくなるぞ。今はグレンにかまうより先に偵察してしまった方がためになるさ」


 そう言うと、連れてこられたグレンは「私、放置されるの?」みたいな顔をしている。お前、ダマより器用に表情作るよな。お前の顔鳥だからな? あえて言うならワシみたいな鋭い顔をしているのに、愕然としている顔はかなりシュールだぞ?


『そんな~知ってることを素直に話しただけなんですよ? それなのにこんな扱い……』


 めっちゃしょんぼりしてる。顔文字の『(´・ω・`)』こんな顔をしている。お前、本当に鳥か?


 グレンは放っておいて、人造ゴーレムの送ってくる映像を見ながらボスを探す。


 30分して分かった事がある。このダンジョン、ボス部屋に雑魚が湧いてるのだ。ダンジョンの広さから考えて、あり得ない事では無いよな。


 そして再びグレンを見るが、よく考えたらこいつにダンジョンの知識があるわけないよな。そう考えると、ボス部屋に雑魚が湧くのは普通じゃないって思うよな。


 何で雑魚が湧いているか分かったかと言えば、ボスの取り巻きとしている魔物は、ボスが指示を出さないと攻撃してこないのだ。ボスを発見していない状況で、人造ゴーレムに攻撃をしてきた魔物たちは、雑魚だと判断した。


 カメラが壊れると困るので、高速移動をさせて敵の視界から逃げさせた。高速移動中の画面は気持ち悪くなるような揺れだったので、一時的に目をそらしている。


 1時間程探索すると、グレンの言っていた『おっきくて、ブレスを吐いてきたな。マグマに潜ったり、たまに空をぶボスらしきもの』を発見した。


「確かに、大きくて、ブレスを吐いて、マグマに潜って、とんでるな。だけど、全くイメージしてた奴と違う! 何で見た目がウナギの魔物が、ブレスを吐くんだよ!


 それに、グレンのとんでるっていうのは間違ってないけど、これって跳ねてるが正しいだろ! そもそも、マグマの中の魔物がお前の飛んでる場所まで到達できる時点でおかしいわ!」


 人造ゴーレムが送ってきた映像を見て叫んでしまった。グレンのいう事を真に受けないようにしていたつもりだったのだが甘かった。しかも、マグマから地上に出たかと思えば、ヘビみたいにウネウネしながら移動するのだ。


 なんかゲッソリするわ。胴回り10メートル、全長50メートル位はありそうな、ウナギだかヘビだか分からない魔物がマグマ・地上・空を自由に駆け回ってるしな。


 しかも、次に発見した氷山の方のボスっぽいのも、色違いで雪の中、地上、空を駆けまわるんだから止めてほしいぜ。


 みんなも何か疲れている表情をしている。


「あれだな。地上に上がってきたら、フォートレスで止める以外ないかもな。生半可なアースウォールじゃ、壊されるか登られて終わりだろ。結界だと、あの質量であの速度は止められなそうだしな。明日、タンク組は頼むね。後、リンド、多分あいつも打撃系の武器効かないぞ。盾に集中してくれ」


 俺の言葉にやっぱりそうかな? みたいな表情をして、俺とお揃いの大盾を使う事にしたようだ。俺も攻撃よりは盾で受け止めた方がいいかもな。そう言って作戦会議が終了する。

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