第940話 意外な物の意外な人気
まずは西に建てた見張り台に登って西側を眺めてる。
「はぁはぁ……さすがに70メートルって無駄に高すぎだよな。おーおー、元々の位置から40メートル位高いからよく見えるな~」
結構広めに作ったので嫁達が全員登ってこれるサイズがある。その屋上で息を切らせながらそうつぶやいた。身体能力的にこの程度の階段を登るのは問題ないはずなのに、かなり疲労している。
「ご主人様~あっちとあっちの森が不自然な感じだよ!」
年少組のエレノアから報告が入る。
「そうだな。目の錯覚かと思ってたけど、皆にもそう見えてるんだね。何だろね、不自然に微妙に空白がある感じなのかな? 良くわからんな」
距離はよくわからないが、方角にすると西北西・西南西のあたりだろうか? そこに微妙にスペースがある所があるように見えるのだ。たまたまあるスペースのような気もしなくも無いが、行ってみない事には分からないよな。
「距離にすると20キロメートル位先ですかね?」
誰にも正確な距離が分かっていないが、マリーがその位じゃないかと言っていた。念のため東の方にも行ってみると、東北東・東南東のあたりにスペースがある。
「やっぱりこうなるんだな。一応確認だけど、みんなにもあそこに空白があるように見えるよね? やっぱり見えるか。もし、マリーの言う20キロメートル先なら、急げば3時間でつくか?」
先日までの移動速度を考えれば早すぎるペースだが、進む方法を確立しているので、急げば3時間もあれば着けるだろうと予想してみた。
今は11時回らないくらいか? 昼食後に出発したら、行って帰ってくるだけで夜になってしまうな。さて、どうするべきだろうな?
「ご主人様、さすがに今日出発するのは、無謀じゃないでしょうか?」
俺が出発するか迷っているのがピーチにばれたようで、助言をされてしまった。良く俺の事見てるな。
「やっぱりピーチもそう思う? じゃぁ、今日はゆっくりしようか。明日は早めに出発して、東西どっちかの2ヵ所を確認しに行きたいところだね」
では、そういう予定で行きましょうと、明日の予定を決めた。俺の言った通りに今日はそのまま休息日にあてる事になった。
1日ぐーたらするのも良くないので、久しぶりに大薙刀や刀、剣と盾を使った素振りをする事にした。俺は何かの流派を学んで武器を振るっているわけでは無いので、自分が勝手に考えた方のような物や、シャドーボクシングみたいに、相手をイメージして剣を交えてみたりもした。
「ふ~やっぱり1人でやるのと模擬戦だと全然違うな。武道とかなら型とかも大切だと思うけど、俺にはそんなものないしな。自分が想像できるだけの物しか相手できないしな……んっ! とりあえず、自分に出来る事を確認するか」
自分がどのくらい動けるのか、スキルの動きをトレースしてどういった反撃に弱いのかを、自分なりに考えながら体を動かす。
ふと周りを見ると暗くなり始めていた。どうやら昼食後の食休みから夕食前まで、ずっと体動かしていたようだ。昼食が遅めだったことも考えると、休憩挟みながら5時間くらいは動いてた事になるのか。それにしては、体に疲労がたまってない気がするけど……まぁいっか。
そのまま食堂に行ったら、シルキーに追い返された。汗臭いのでシャワーを浴びて来てください! と結構強めの声で怒られたので、逃げるようにしてシャワーを浴びてきた。飯食った後にもう1回風呂に入るからささっと洗えばいいだろう。
食堂に行った時はそうでもなかったが、シャワーを浴びているあたりでめっちゃお腹が空いている事が分かったので、結構胃がきつかった。
美味い夕食を食べてから、食休みをするためにビーズクッションに埋もれながらウトウトしていた。相当疲れていたのだろう。ブッ君で小説を読んでいたはずなのに10ページも進まずに寝ていたのだ。
そこで気を利かせたニコが、俺の顔の上に乗って呼吸をできなくしたのだ。それで苦しくて目が覚めた。何で気を利かせたかという判断になったかと言えば、今寝ると夜寝れなくなる! だから起こした! とダマが通訳してくれた。触手で〇を作ったので正解らしい。
ニコが暇そうにかまってくれとプルプル震えていたので、マッサージでもしてくれといったら、3分位高速プルプルしてくれて気持ちよかったんだけど、すぐ飽きたみたいでダマの上でコロコロして遊びだした。
マッサージか……マッサージチェアでも買おうかな? 揉まれるような感じはくすぐったくて嫌いだけど、叩いたり手のひらでグーっと押し込むようなマッサージは好きなんだよね。
早速リストを開いて、全身をバイブレーション機能と少し強めに叩く球を搭載しているやつと、足全体を包み込む器具を着けて、空気でつま先から太ももにかけて圧力をかけていくタイプのマッサージ機をセットで召喚した。
さっそく試してみると、
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……ぎぼじいいいいい」
マッサージの振動に合わせて声が出てしまっている。足の方もキューっと締め付けて、ぱっと解放される感じがめっちゃ気持ちい!
こんな事をしていると、カエデに見つかってしまい、私にもやらせて! とキラキラした目でねだられたので、仕方がなく交替するハメになった。
どうしてこうなった。俺が順番待ちをしていたのに、カエデの声を聴いた妻たちが集まってきて、私も私も! となり、俺の順番はしばらく回ってこない。
こうなったら仕方がない! DPで広い建物を作って、1人1人使えるように人数分のマッサージチェアを召喚する。この際吹っ切れて、いろんなタイプのマッサージチェアを準備して、好みに合わせて使ってくれ!
それを伝えると我先に、マッサージチェアを準備した建物に走っていった。みんながいなくなった所でマッサージの続きをするか! 椅子に座り準備をしようとする。
むにゅっ!
お尻が何やら柔らかい感触につつまれた。俺はこの感触を良く知っている! 寝心地抜群のスライムだ!
「って! ニコ、お前そんな所で何をしてるんだ?」
問いかけてみたものの答えるわけがない。しばらく様子を見てみた。ブルブル細かく揺れている所を見ると、自分で揺れるのはすぐ飽きたみたいだけど、マッサージチェアのバイブレーション機能は、好きなようで移動する気配がない。
無理にどかそうとすると、顔にまとわりついて来て、えらい目に合った。しょうがないので、同じタイプのマッサージチェアをもう一台出すと、すかさずダマが占領してしまった。3台目を召喚した所でやっと俺が自由に使えるようになった。
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