第876話 オークって何なんだろ?
美味しい厚焼き玉子と、焼き鳥を食べて少しお腹が落ち着いた。
マッドな雰囲気のアマレロの様子が怖かったが、初めの2品が予想以上に美味い物だったので、否が応にも期待が高まってしまっている。
「アマレロ、次は何を用意してくれるんだ?」
「鶏の美味しさは分かっていただけたと思いますので、次は豚の品種改良を行った物を食べていただこうと思います。今、ブラウニーが準備しているので、豚について説明していこうと思います」
豚も鶏と同じように交配させて品種改良したのか? 何と掛け合わせたんだ?
「豚なのですが、魔物の豚と交配させてみたのですが、鶏と同じで母親方の種族になる事が分かっています。ですが、こちらは鶏と違い若い豚でもそれなりの味でしたが、それだけならきちんと管理して育てた豚の方が美味しかったです。
ですが! 以前オークの変異種で人型以外と、そういう行為に及ぶオークがいると聞いたのを思い出して、何とか召喚した所、豚と交配したため繁殖させてみると……」
今度はオークの変異種か、絶句してしまった。その変異種って、雌なら何でも大丈夫ってあれか? 他の生物の雌からしたら、悪夢でしかないんじゃないか?
「とてもいい肉質の豚ができました! これの種のいい所は、豚より成長が早く繁殖力が高く病気になりにくい事ですね。後、理由は分かりませんが、オークとの交配で生まれた種同士の2世代目3世代目も、味は変わらず美味しかったです」
豚人と呼ばれて、普通に食されるこの世界ではあるが、豚と交配が可能だとはな。種族の違う人間の女性を苗床にして繁殖するんだから、豚でも可能だとは思うが、少しマッドすぎやしねえか?
「そろそろ次の料理ができるみたいなので、少々お待ちください」
そう言ってキッチンへ飛んでいった。
「シュリは食べたのか?」
「私もまだ鶏だけですので、豚は食べていませんね」
「そっか~、どんな料理で出てくるんだろうな」
他愛のない話をしていると、アマレロが皿をもって登場した。
「今回の品は、ドリアードさんが丹精込めて作った小麦と先ほどの卵、ここの牧場でとれた牛乳などを使って作った食パンにトンカツをはさんだ、特製カツサンドになります!」
調理法はありふれているが、たまに食べるサンドイッチだ。それだけに味の違いが分かるという事だろうか? 切り分けられたサンドイッチを手に取り、肉を見てみる。
「ん? これってヒレ肉とか使ってるのか?」
「いえ、脂身はかなり落としていますが、普通の豚で言うとトンカツにするような部位を使ったカツサンドです」
脂身が好きってわけじゃないけど、美味い豚だとあの脂の部分も美味いんだけどな。それを切り落としてしまったという事か? カツサンドならヒレもあるけど豚ロース……普通のトンカツを作る時に使う部位も使う事が多いはずだけど、とりあえず一口食べてみよう。
「んっ!? 見た目は脂身がほとんどないのに、肉の中から濃厚な脂身の味がする!? なんだこれ!」
「気付いていただけましたか? 仮名ですが、オーク豚と名付けたこの豚ですが、元の豚の品種より2割程大きく育つのです。その2割が全部脂身であるため、可食部は普通の豚と大差はありません。
ですが、その脂身からとれたラードは質も良く使いやすいです。っと、今は肉の味の話でした! この豚の特徴は、赤身の部分はどこを使っても、肉汁に脂身の味を含んでいるのです」
何とも意味不明な肉質? といっていいのか、驚きを通り越して呆れてしまう。
「後、こちらを食べてみてください」
同じ様なサンドイッチが目の前に置かれる。食パンのサイズで言えば4分の1切れ位の大きさで食べているので、ちょこちょこ腹にたまってくるのだが、アマレロが言うんだ、食べてみよう。
「あれ? さっきのカツサンドと肉が違う?」
「いえ、肉は同じオーク豚の肉ですが、部位が違います。今食べられている部位はヒレになります。本来ヒレ肉は脂が少なく筋がほとんどない部位です。ですが、先程の赤身の部位に比べると脂の味は控えめになりますが、その分豚肉の味が濃く出ます。
どっちにしても、脂身の味が嫌いという人には、お勧めできるお肉ではないですが、それが気にならない人からすると、かなりの評価が得られるのではないかと思います」
うん、確かに美味いんだよな。繁殖も容易だし、成長も早い……後は餌代のコストさえよければ、かなり上質な肉と言えるけど、その辺どうなんだろ?
聞いてみると、餌の量は普通の豚に比べても1割程少ないそうだ。驚く事に餌が何であっても、肉の味がほとんど変わらないという事だ。餌や肉質、成長に関していうと、オークの血を引いているからではないかという事だった。
オークは魔物なので、体の大きさに対して食事量が少ない。ドロップした肉は大体同じ味。そう言った面が強く出たのだろう、と。
何よりすごいのは、俺の手が入っている街は別として、他の街では残飯処理が問題になる事も多いのだが、それを食べておいしい肉になるこの豚は、衛生面でも活躍してくれるだろうという事だ。
子豚が多くても、必要な分以外は屠殺して育てれば、餌が足りなくなるという事も無いしな。
どんなに貧しい街でも、廃棄する食材がなくなる事はないのだ。それを考えるとこの豚はかなり役に立つと思う。それに、雑草でも育つので、散歩に連れていく事ができるなら、餌に困る事はないはずだ。
外壁の外に専用の壁を作って育てても、採算は取れるんじゃないか? それに、排泄物が肥料になるだろうしな。ジャルジャンのフェピーに試してもらってもいいか?
そして、次に出てきたのは羊肉のラムチョップが出てきた。これも美味い! 朝食はこの辺で終わった。朝からヘビーだったけど、俺は気にならない質なので問題ない! それにしてもシュリはすごいな。俺の5倍は普通に食べてるのにまだ余裕そうで、試食を続けている。
昼は、加工品を中心に使った食事が出てきた。ソーセージ、ハム、ベーコン等々、どれも美味しかったが全体的にコッテリとしていた気がする。
夕食は庭でバーベキュー大会となった。どこから嗅ぎつけたのか、老ドワーフたちは酒樽をもって現れるし、グリエルやガリアも家族を連れてバーべキューに参加しに来た。バーベキューの一角では、ジンギスカンも作られていた。ラムチョップとは違う美味しさだった。
ただ、最後まで気になっていたのが、牛肉が出てこなかった事だ。牛では成功しなかったって事かな?
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