第874話 反省会

 イベントも終わり、次の日は後片付けに追われ1日が過ぎた。そして休日をはさみ、今俺たちは特別会議室に集まっている。


 本当は庁舎の会議室を使おうと思っていたのだが、大分前から使う予定があったみたいで追い出されてしまった。俺、一応領主なんだけど! って言ったら、自分で場所を準備できるんですから、自分で準備してください! と怒られてしまった……解せぬ。


 確かに自分で作れるけどさ、それはないんじゃないかと思っていたら、俺に賛同してくれる人が誰もいなかった。いいよ、どうせ!


 で、みんなで俺の家に移動して、ダンジョン農園の一画に特別会議室を建てたのだ。そして、ここに集まっているメンバーは、俺、俺の妻から姉御組と年長組が全員参加、グリエル、ガリア、ゼニス、モーリス、テオ、イベント実行委員をしていた20人程の庁舎で働いている人間が集まった。


「では、今回のイベントについての反省会兼意見交換を行っていこうと思います。まず始めに、みなさんイベント運営お疲れさまでした!」


 グリエルがこんな感じで話し始めた。


「では、反省会を始めましょうか。初めに私が……こういった大規模なイベントは、国の首都やかなり大きな都市でしか行われたことが無いと思います。初めてなのに、私を含めてですが皆様よくやったと思います。


 初めてだったという事で、武闘大会の参加者の見積もりが甘かった点は反省しましょう。他にも意見がありましたら、出していただきたいです。どうですか?」


 そういうと、テオが手をあげ発言を始めた。


「皆様、お疲れさまでした。今回のイベントでは、中心に立って色々させていただきました。皆様の支えがあり何とか乗り越えれたと思います。


 全体的には良かったと思いますが、2日目の一般の腕試しは予想以上に人が集まらず、もしものために用意していた真紅の騎士団の方々に頼る形になってしまったのは、申し訳ないと思っています。5日目はいい流れでしたので、ああいった流れを作れるともっといい形になったのではと思います」


 テオが発言を始めると、次々と意見が出てきた。多かったのは、武闘大会についての意見だった。キャパが小さかったのではないか? とか、舞台が狭かったのでは? とか、場内での飲食をもう少し充実させるべきでは無かったのか? 等々。


「今回の反省で、次回に活かしていけるものはしっかりと活かしていきましょう。いったん意見をまとめて文章に起こしますので、シュウ様からは何かないですか?」


 グリエルから急に話をふられた。なので、根本的に疑問に思っていた事を聞いてみる。


「1つ確認しておきたいんだけど、あのコロシアムって普段は何に使うの?」


 俺の質問に答えてくれたのは、モーリスだった。


「すいません! 以前にお話ししたと思い込んでおり、本来の使用用途をお話ししていませんでした!」


 思いっ切り頭を下げられて、居心地が悪くなったので頭をあげてもらい、説明してもらう事で今回の事をなかったことにすると言った。


「えっとコロシアムですが、本来の使い道としては、ゴーストタウンの住人たちへの娯楽提供が主となっています。武闘大会もその一端ですが、公開処刑や猛獣と重犯罪の奴隷を戦わせたり、予定がない時には一般開放して、訓練場として使う予定です。


 後、ホモークたちの調教もここへ移そうと思っています。性犯罪者が増えてきたので、街中では管理が難しくなってきてしまったので、コロシアムの地下や逃げにくい場所に牢屋を作ろうと考えています」


 ふむ……この世界では、公開処刑や犯罪奴隷の命懸けの試合も娯楽になるんだったな。改めて聞いてちょっとひいてしまった。街中でホモークの調教と言っていいのか分からんが、あれが行われるのはさすがに場所的な問題が出てくるのか。ちょうどいいならそれで問題ないかな?


「そうなんだ。そこらへんは任せるから、ゴーストタウンにあまり負担の無いようにやってくれ。俺は、殆ど任せていたからよくわからないけど、街中が楽しんでくれていたと思う!


 イベントの最後に勝手に飲食代を俺が払うとか言ってごめんな。あんなに混沌とするとは思わなかったよ。迷惑をかけた店には、飲食代に色を付けて払っておいてくれ」


 俺がそういうと、ゼニスが何かを思い出したように発言をした。


「あ、シュウ様。その事なんですが商業ギルドから、イベント期間中はどの店も2~3倍の売り上げをだして、最終日に限っては5倍以上の売り上げを出した店もあったようです。そこで、シュウ様からお支払いがあったら、感謝の気持ちとしてゴーストタウンに寄付金を出そうという話になっているそうです」


「はぁ? マジか? えっと、ゴーストタウンって店や屋台に税金かかってるよな? 確か売り上げを調べるのは難しいからって言って、期間毎にいくら支払うとかそんな感じになったって話してたけど、変わってないよね?」


 ガリアが変わっていないと肯定してくれた。


「儲けが出て嬉しい事なのに、全部を自分の利益にしないで街にいくらか還元する? 欲が無いな~」


 そんな事をつぶやくと、ゼニスに


「それは、シュウ様に言われたくないと思いますよ」


 そう言われ、会議室にいる全員に笑われてしまった。俺ってそんなに欲がないのか? DPでほとんど物は用意できるし、美味い物はシルキーたちが作ってくれるし、ほしい物は全部手に入れてるからな。


 この状態が欲が無いと言われれば反論できないけど、美味い飯が食べたい! という欲望のためにシルキーを召喚したりしてるんだから、大概欲張りだと思うのだが。


「とりあえずゼニス、今回は商業ギルドにお金は受け取らないと言っておいてくれ。ゴーストタウンでお金が必要になった場合は、俺のポケットマネーを使ってくれ! そうしないと、お金がたまる一方だからな! 頑張って消費してくれ!」


 その場にいた全員がため息をついた。なんとなく言いたい事はわかるよ? でもさ、お金がなかなか減らないんだよ! ある程度は貯めておかないといざって時に困るけど、ため込み過ぎは経済が停滞して不健全だからさ、いっぱい使ってお金を動かす事が大切だって、誰かが言ってた。


 その後も、いろんな意見が出されまとめられ、対策についても色々考えられた。1回で全部話し合う事はできないが、続けて行っても意味がないとの事で、時間をおいてまた開催する事で今日の会議が終わった。


 会議が終わると、外にはバーベキューの準備がされており、他の妻たちや土木組、運営に深く関わってはいなかったが、関係者として働いてくれていたディストピアの有志たち、ゴーストタウンのお偉方がすでに集まっていた。


 おぃ! ゴーストタウンのお偉方! というか、老ドワーフ! お前も会議に参加しろよ!

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