第814話 予想外

 工房に移動して作業を開始する。DPでアダマンタイトを召喚して、3人で武器を作成していく。


「ねえ、シュウ。アダマンタイトじゃなくて、ミスリル合金とかで付加価値を高くするように、魔核で付与とかしないの? アダマンタイトの加工って、魔力をいっぱい使うから大変なのよね……」


「一応理由があってな。あまり使いやすい武器だと、他のダンジョンマスターが手に入れた時に面倒だからな。特に亜人系の魔物でランクの高い奴らが持つと、格上にも勝てるようになるからな。ただアダマンタイトで作った武器なら物理的に強くなるだけだからな。


 それはそれで脅威なんだけど、アダマンタイト製の武器を購入出来たりするダンジョンマスターなら、武器に頼る必要がない強さの魔物が多いからはずだ。ガチャでその武器を引く事ができる運の持ち主なら、しょうがないべって感じだ」


「どういうこと? 私たちが作った武器が他のダンマスに何の影響があるの?」


「あれ? 綾乃は知らなかったっけ? ダンマスの還元したアイテムって、他のダンマスが購入する事ができるんだよ。他にもガチャシステムがあって、運で武器や防具、アイテムをゲットできるんだよ。だから、あまり性能のいい武器は還元したくないんだよ」


「ふ~ん、ミスリル合金の武器は値段の割に性能がいいって事なのかな? アダマンタイトは、値段相応? って言う事なのね」


「後な、アダマンタイトは自力加工できる人が少ないせいか、単価が安いんだよ。それでポーションを使って魔力を回復しても、ミスリルやオリハルコンに比べて収入がかなり高いんだよ。それに魔力の消費と還元した際の、DPのレートが一番高いんだよね」


「そうなんだ。だからアダマンタイトなのね。でも、ポーション飲んでまで加工はしたくないから、限界が来たらやめるわよ?」


「そこまで無理は言わないよ。出来る範囲で頼むよ」


 綾乃は、あまりやる気がなく了解と返事をしていた。それに対してバザールは、黙々とクリエイトゴーレムで武器を作成している。そしていつの間にか、近くに骸骨が増えていた。


「なぁ、バザール……その骸骨たちは何だ?」


「ん? あ~こいつらでござるか? こいつらはエルダーリッチでござるよ」


「それは見ればわかる……そうじゃなくて、何でここにエルダーリッチがいるんだって聞いているんだよ」


「なるほど! ノーライフキングの特性で、眷属のアンデッドから魔力を供給してもらえるでござるよ。ちょっと前に気付いて、大量に作ったでござる。頭がいいので使いやすいでござるし、同Lvの魔物に比べて魔力量もかなり多いでござるから、かなり重宝しているでござる!」


 ノーライフキングって、色々便利な特性があるんだな。眷属からの魔力供給、暗視、不眠、毒無効、他にもあるみたいだけど、かなり便利だよな。でも、食事不要はかわいそうだな。俺は美味しい食事をしたいから、絶対にノーライフキングにはなりたくないな。


 武器を俺と綾乃で合わせて、8本のアダマンタイト製の武器を作成した。バザールは、エルダーリッチからごりごりと魔力を供給してもらい、まだまだ作成を続けている。


「そういえば、今回の感染病の『魔熱病』って、なんで『魔熱病』っていうか知ってるか?」


「私は知らないわ。バザールは?」


「知ってるでござるよ。『魔熱病』の『魔』は、魔法薬……ポーションの事でござる。そもそも『魔熱病』は、ポーションを作る際の失敗作だったのでござる。だから自然には存在しない病原菌なのでござる。


 毒薬に近いでござるな。ただ言える事は、世界最凶の毒と言われているボツリヌストキシンより、質が悪いと思うでござる。食料がなくなって街の外にも出られず、食料も枯渇して奪い合いが始まり、最後には餓死する……最悪な毒でござる」


 確かに毒で苦しむのもいやだが、苦しんだ挙句、他の街に行くこともできず、奪い合いして餓死か……考えただけでも嫌になってくる。


「バザール、俺少し休憩するわ。隣の部屋にいるから、よろしく」


 俺はバザールに任せていったん休憩に入る。綾乃も休憩すると言って、工房の隅に置いてあるソファーでくつろぎだした。


 俺の睡眠は、グリエルが走り込んできた音で中断される。起こされて工房に移動すると、綾乃も眠そうな顔をして目をこすっていた。


「シュウ様、綾乃様、お休み中申し訳ありません。バザールさんも一緒に聞いてください。フレデリクに届けられた万能薬を使ってもらった所、効果がなかったとの事です。Sランクの万能薬を使っても治らなかったことを考えると、毒ではないと思われます」


「マジか……毒じゃないって事は、細菌やウィルスって事になるのか? って事は、ワクチンが必要なのか? 時間で解決するしかないのか……植物にも感染する微生物か。どうするべきか……


 グリエル! 食事の心配がない事だけは伝えてくれ。魔導列車で食料を届けて、積み下ろしはゴーレムに任せて、フレデリクのホームにつながる階段は封鎖。荷物はエレベーターで移動させて、下がる前にエレベーター内は、火で殺菌するように徹底してくれ」


 『魔熱病』が毒ではない、万能薬が効かないという事実を聞いて、俺と綾乃はどんよりとした表情になってしまった。バザールは骨なので表情は分からない。


 対応策をとるしかないので、食料を運ぶように厳命する。他の街に『魔熱病』を感染を広げないように指示も出しておく。指示を出すとグリエルが工房から出ていった。


「ウィルスとかならワクチンって思うけど、ワクチンを作る技術なんてないし……半年くらい閉じ込めておくしかできないのか?」


「何に弱いか位は、実験できるんじゃない? 例えば、毒には毒みたいに、ウィルスにはウィルスとか?」


「苦手な物質や食材とかも、あるかもしれないでござるな」


「隔離できるダンジョンを作るか? 実験はドッペルを使ってやれば、俺たちが感染源になる事はないだろう。食材、薬品等考えうるいろんなものを試してみるか。後は『魔熱病』についての情報がないかも探してみるか」


 何もしないわけにはいかなかったので、できうる限りの事をする事になった。嫁達には情報を探してもらう事にしよう。

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