第812話  ブラッシング……

 MRD合金が完成して、ドワーフのじっちゃんの所にもっていった。初めは新しい素材だ! と、喜んでいたが、話を聞くにつれてMRD合金の欠点が分かり、興味をなくしていた。


 このじっちゃんもクリエイトゴーレムで武器に加工できるので、色々造れるはずなのだが、まったく興味を示さなかった。恐る恐る理由を聞くと、


「それだと鍛冶じゃねえ! 男はな、熱い鉄を叩きてえんだよ!」


 と、胸を張って言い放った。まぁ次の瞬間に、カエデとリンドに「私たちは女だ!」って言われて、頭を叩かれていたけどな。


 まぁ2日間充実した時間を過ごせたので満足だ! 午後からは何をしようかな?


 特に何もすることが無くて、趣味部屋でアニメを見ながら従魔たちのブラッシングをして過ごした。時間が余っていたせいもあり、いつも以上に入念にブラッシングをしてしまい、みんなが無駄にツヤツヤになってしまった。


「う~~ん。みんなピカピカだな。若干眩しいぞ! クロもそれだと夜闇に隠れてって訳にはいかないな」


 シャドーウルフのクロがピッカピカに光っているのだから、隠密が得意なはずなのに自分の存在を主張してしまっている体毛……だけど、その毛並みを誇らしく思っているのか、胸を張ってドヤ顔をしている気がする。


 ジリリリリッ


「時間もちょうどいいし、夕食食べに行くか!」


 今日は目覚まし時計をかけていたので、夕食に遅れるという失態をおかす事はなかった。従魔たちを連れて食堂に行くと、年少組と土木組のメンバーがピカピカになった従魔たちに抱き着いていた。それを羨ましそうに見ていた、土木組のメンバーの従魔の視線がチラチラと痛かった……


 夕食が終わってそのままお風呂に入りに行くと、ある一団から襲撃を受けた。それは、飼い猫たちだ。従魔たちのツヤツヤの毛並みを見て、羨ましくなったのだろうか? ブラシを引きずって風呂場まで来ていたのだ。


「しょーが無いな。お前たちも一緒にお風呂に入ってから、ブラッシングしてやるからな。っとその前に、ブラウニーにあれを運んできてもらわないとな」


 廊下に出るとちょうど、アマレロがいたので例の物を持ってきてもらうようにお願いした。そのままお風呂場に戻って、猫たちと一緒に浴室へ向かう。


 家の猫たちはお風呂が好きなので、猫専用の湯船まで作っている。猫たちにはちょっと熱く感じるかもしれない温度だが、喜んで入っている。熱くなったら体を冷やせるように、ぬるめのお風呂も準備している。


 それにしても猫ってこんな風に、風呂入って平気なのだろうか? お風呂に入れるたびに思うんだよな。


 あまりにお風呂に連れていけって、うるさく要求されるようになったから、自分たちで出入りが自由にできる猫専用の風呂場も作ったんだよな。濡れた体で廊下を歩くから、体を乾かす魔導具まで作ってやったしな。


 体を乾かすのにドライヤーだと嫌がったので、猫たちより少し大きめのケースに顔だけ出せる穴をあけて、体が入っているケースの中に温風が出るようになっている。


 しかもクリエイトゴーレムで効率よく乾かせるように小さな手がたくさんあって、体をマッサージしながら毛を逆立てたししてくれるハイパー魔導具だ。


 これを作った時に、自動ブラッシングしてくれる魔導具も作ってみたのだが、あまりにも不評だったみたいで、作った次の日には無残な残骸になっていたけどな。


 猫たちの体を綺麗に洗ってからやっと、俺も自分の体を洗って湯船につかった。俺の入っている湯船の隣では、浅い猫専用湯船に入って顔だけ湯船の縁に載せている可愛らしい姿がある。そんな姿を見ていると、お風呂の外から、


「ご主人様! もってきたので置いておきます!」


 ブラウニーが魔導具を持ってきてくれた。お礼を言って、明日にでもいつもの所に戻しておくようにお願いした。しばらく浸かっていると猫たちがお風呂から上がるみたいで、上がり湯をする場所に移動して、専用のボタンを押してシャワーを浴びていた。


 水圧の好みがあるらしく、4段階に設定できるようになっている。


「本当にお前たちって賢いよな……」


 その姿を見て、何度目か分からない事を呟いていた。シャワーを止めると、体をゆすって自力の脱水をしてから、例の魔導具を使うために脱衣所に戻って行った。


 俺も十分にあったまった所で、上がり湯をして体を拭いてから脱衣所へ向かう。脱衣所では、猫たちが用意されていたクッションの上でくつろいでいた。うむ、みんな可愛いな。


「よし! 着替え終わったから行くぞ! 趣味部屋でブラッシングしてやるからな!」


 猫たちを連れて歩いていると、いつの間にかスライムも猫の後ろについてきていて、そこそこ長い行列ができていた。


 時間をかけて猫たちのブラッシングをしてやり、疲れたのでベッドに向かうと猫たちが、スライムたちの上に乗って両手足を投げ出すように、グデーッとした格好で寝ていた。ベッドの中心が空いていたので、俺もそこに移動して寝る事にした。


 体の上に重さを感じて目を覚ます。重くなっている部分に目をやると、猫たちの踏み踏み攻撃が炸裂していた。スライムたちはもう部屋にいないようだったので、腹ペコな猫たちを連れて食堂に向かうと、デジャヴな光景を見る事になる。


 年少組と土木組のメンバーが、ツヤツヤになった猫たちに抱き着いて、その様子を羨ましそうに土木組のメンバーの従魔たちが見ている……昨日と違うのは、視線が強くなっている事だろう。


 朝食を食べ終えて席を立つと、土木組のメンバーの従魔たちに囲まれて、キラキラした眼差しで俺の方を見つめてきた。ブラッシングをしてやらないとどうにもならないと判断して、今日は一日中ブラッシングをする事になってしまった。昼食は趣味部屋に運んでもらうようにお願いしておいた。


 朝食後から夕食前まで頑張ったが、それでも時間が足りず、寝る前まで頑張ってやっと終わった。


 ドンドンドンッ


 急にドアを叩く音が聞こえたので、入るように伝えると、スカーレットが少し焦った様子で扉を開け、


「シュウ様、グリエル様が緊急の用事があるので、執務室まで来てほしいとの事です。馬車は準備してありますのでお早めに準備をお願いいたします」


 よくわからないが、緊急事態らしいので着替えてから用意された馬車に乗り込む。階段をはしって登り、グリエルの執務室へ急いだ。


「シュウ様、夜分遅くにすいません。緊急事態でしたのでこちらに来ていただきました」

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