第803話 ドラゴンの卵とは……
戦闘態勢をとって、思考をはしらせて警戒する。索敵に引っかからずに、空から音が聞こえるという事は……最低でも50メートルは、離れているのに音が聞こえてくるという事だ。かなりの大物だろう。
空を見上げて探すと、目標の物はすぐに見つかった。鎧をまとった小型のドラゴンだった。まぁ小型と言ってもドラゴンなので、体長は5メートル程あるだろう。
見覚えのあるドラゴンだったので、警戒を解いてその背中に乗っているであろう人物を待つ事にした。
「シュウ様! お逃げください!」
だが、この場に1人だけ、そのドラゴンに見覚えのない隊長が慌てて声を上げ俺に逃げるように言ってきた。そして、俺の前に出て壁にでもなるような感じだった。上から来る魔物に対して、俺の前に出た所で意味ないんだけどね。
「心配しなくても大丈夫だよ。あのドラゴンは、グリエルが乗ってるはずだ」
俺の発言を聞いて隊長が目をぱちくりさせているが、おっさんなので可愛くない。三幼女が同じ仕草をすれば可愛いんだけどね。
そんな事はどうでもいい。今言ったように、あのドラゴンはグリエルの従魔ってわけではなく俺の支配下にあるのだが、ドラゴンでも一番早いと言われているエメラルドドラゴンなので、緊急時の移動に使えるようにしてある。
召喚できるドラゴンがいないのに、なぜドラゴンがいるかと言えば、レッドドラゴンの超レアドロップでドラゴンの卵がでたので孵してみたら、エメラルドドラゴンだった……
何故に? って思ったけど、レッドドラゴンからドロップしたドラゴンの卵なだけであって、レッドドラゴンの卵ではないという結論で幕を閉じている。
ちなみに、エメラルドドラゴンはあのサイズで成龍のサイズらしく、産まれてから半年ほどであのサイズになった。大人になるの早すぎだろ! まぁそれに合わせて、ドワーフたちに飛行を補助できる鎧を打ってもらったけどな。
「シュウ様ぁぁああ」
上から声がドンドン近付いてきている。ドラゴンから飛び降りたようだ。米粒みたいに小さかったのが、徐々に大きくなって、ドゴーン! と音を立てて着地した。
「グリエル、急いでくるみたいな事言ってたけど、まさかドラゴンを使ってくるなんてな。それよりいちいち飛び降りるなよ。クレーターができてるぞ。それ結構迷惑なんだからな」
グリエルが何か言う前に、俺はクレーターを魔法で整地していく。
「さすがに、門番が領主に手を上げたとなれば、他の仕事を放置してもすぐに駆け付けなければ!」
ちょっと暑苦しかったので、わかったわかった、となだめながら再度事情を説明し、それと一緒に、ライムの推理も話しておいた。その後、隊長に向かってグリエルが何やら指示を出していた。
「シュウ様、それでそこで簀巻きにされている奴らはどうしますか?」
「こいつらは犯罪の称号を持ってるから、兵士たちに任せようと思うけど、どんな裏技で脱獄されるかも分からないから、尋問とかはディストピアの兵士に任せた方がいいかな?」
「そうですね。どうやら抜け道があるのは事実なようですので、一番信頼のできるディストピアの兵士に、頼むのがいいかもしれませんね。隊長、悔しいかもしれませんが、教育の行き届いていない兵士に、シュウ様を襲った犯罪者をまかせる事はできません。わかりますね?」
隊長が悔しい顔をして涙を流している。隊長とはいえ、あくまでも門番のまとめ役なだけであって、教育係はこの人では無いのだが、そんな事は関係ないのだ。俺の顔が分かってて、通らされていたらこの事も分からなかったので、グリエルにそんなに責めないように耳打ちをしておく。
一仕事終わったので、後はグリエルに任せて部屋に戻る事にした。
「さて、今日あいつら捕まえた事で何か変わるかな? 特にあの冒険者の情報が気になるけど、どうなるんだろうな?」
なるようにしかならないよね、みたいな感じでのんびりと戻る事になった。一応、スプリガンのみんなには、ターゲットに接触する冒険者や犯罪者は、入念にチェックするようにお願いをしておいた。
今回の件はあの司祭たちにつながっているからな。ただ、それだけじゃないと俺は考えている。1つ抜け道があるとわかったら、他にも抜け道がないか探すのは、ゲスい奴らが考える事だからな。特に金になる事なら、どんなにあくどい事でもする奴らはいるからな。
みんなもその意見には賛成しているので、できれば4人の内誰か1人でも早く捕まえたい所だと、みんなで話してからお昼になった。
1人を捕まえられれば、奴隷なりなんなりすれば情報は吐かせ放題だからな。
「あれ? これってツィード君を呼べば、結構簡単な話だったりするかな?」
「そういえば、精霊には称号はつかないですから……問題はないと思いますが、ご主人様につく可能性は否めないかと。捕まえた人間をツィード君の魔法に任せるのは、間違っていないかもしれないですね。
奴隷の首輪では、100パーセントの強制はできないですからね。激しい痛みや苦しみを与えるだけで、それに耐えられたり、命令に逆らい続けて死んだりする事ができる根性があるなら、ツィード君が役に立ってくれると思います」
確かに! と思ったので、久々にツィード君の出番がありそうだ。ツィード君は魔道具作りをしていないと悪戯ばっかりするからな。まぁ街の人たちには、些細な悪戯しかしないけど、俺たちには結構面倒な悪戯をするせいで、アクアとかにいつも怒られてるから、たまには役に立ってもらおう。
ただ頼むと無茶な要求をしてくるので、アクアを通して頼む事にした。
必要な時に派遣しますね、と快く引き受けてくれた。冒険者たちの方はどこまで情報を持っているか分からないが、ってあいつらはまだ奴隷落ちもしてないから、尋問対象じゃなかったな。3人のテイマーたちは、どれだけの情報を持っているかな?
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