第791話 ルールブレイカー

 ダギアからこの街まで線路を引いて、今日出来る事は終わったかな? 鬼人のみんなが警備にあたってくれているので、特に問題なく休む事はできるだろう。でも、お風呂に入りたいので、妻たちに協力してもらって、コンテナ風呂を準備して汗を流してから寝る事にした。


 朝起きて、眠い目をこすりながら報告を受けている。取り急ぎ、王城に勤めていた人間は、仕事に戻ってもらっているとの事だ。王族がしなきゃいけない仕事などは、領主代行が到着するまで仕事を停止するように話している。警備の人間に関しては、面倒ごとになる可能性が高いので監視しているとの事。


 問題になりそうなことだけ指示して、判断の出来る人間が来るまで現状維持という事になっているようだ。


 目を覚ました俺は、自分がしなきゃいけない事をする事にした。バッハの元に向かい、今日は三幼女をディストピアまで運んでほしい事をお願いする。運んだ後は、すぐにこっちに戻ってきてほしい事を伝えておく。バッハが活躍する場面はないと思うが、念のための保険だ。その後は、朝食を食べた。


「ご主人様、今日はどうなさいますか?」


「昨日作った城型ダンジョンを調整してから、ディストピアから派遣されてくる人たちを待つくらいかな?」


「商会の方も出店するんですよね? それでしたら、先に場所を確保しませんか? 王族が王族だったようで、昨日探しただけでもかなりの汚職、賄賂等があったので、インペリアルガードに簡易裁判をしてもらって、罰金が払えないようでしたら、商会を潰してしまってはどうかと思います」


 ピーチが久々にブラックになってるな。いや、理由を聞いてみるとブラックと言うよりは、正当な理由をつけて悪い奴を追い出す感じだろうか? 確かにこういう商会が多いと面倒だからな。きちんと理由をつけて、取り壊して追放するのがいいだろうという事だ。


「じゃぁ、インペリアルガードの人に頼まなくちゃな。報酬とかは大丈夫だろうか?」


 インペリアルガードの人に話に行くと、皇帝から俺の意志に従って行動するように言われているため、報酬は気にする必要がないとの事だ。食事を出してもらえるだけでも十分報酬に値すると言っていた。


 ブラウニーの飯を出してたんだな、確かにそれで十分だろうな。大国の王でも食べれないような食事が普通に出てくるんだからな。


 証拠を確認してもらって、汚職していた官僚と、賄賂を渡していた商会や有力者を召喚してもらい、簡易裁判をしてもらった。


 召喚された理由を聞いて、金を積めば何とかなると思っていたようで、インペリアルガードの人間を懐柔しようと金を積んだところで、本格的にインペリアルガードの人間がキレて、牢屋に突っ込まれていた。


 王国の近衛兵だったら懐柔できたかもしれないが、実力主義の帝国の人間にとって一番嫌いなタイプだったのが最後、懐柔を狙った家は取り壊しや取り上げに合い、度合いの酷かった者に関しては、家族まで奴隷となってしまった者もいる。今までアコギな商売で稼いだお金で、贅沢してたんだからいい気味か。


 インペリアルガードが、全部を終わらせた頃に謝罪をしに来た。理由は、同盟国の失態についてだった。俺からすれば、自国の事じゃないんだから謝る必要なくね? って思ったが、同盟の憲章の中にそう言った項目もあるので、謝罪する必要があるようだ。


 今回の件で同盟国に色々な問題がある事が判明したので、これを機に監視体制を厳重にすることにしたそうだ。色々あるんだな。


 そんな話をしていたら、三幼女から「リバイアサンに、お願い聞いてもらえたよー」と連絡が入った。到着した時には、すでに魔導列車が出発した後だったので、バッハに乗ってそのまま帰ってくるとの事だった。


 朝食後に出発したはずだよな。確か朝食が8時くらいで、今が10時、2時間くらいで到着したことになるのか。全速力かは分からないが、早すぎんだろ! この感じだと昼頃には戻ってくる感じか? 早いな。


 三幼女から連絡をもらって、する事がなくなったので、取り潰しになった家や店の位置を確認する事にした。大人数で行くのもあれだったので、東西南北に分かれて確認しに行くことになった。俺は、本命の王城から見て南を見に行くことになった。


 この国の王都は、東西南北で住み分けをしているようだった。警備の手間を考えればその通りなんだが、この国の王族を見ると、どうしてもそう考えられないんだよな。北が貴族や富豪のエリア、南が商業区、東が一般市民、西が工房等のエリアとなっている。あくまで大体の位置関係であって、4等分ではない。


 貴族や富豪のエリアは無駄に広く、住んでいる数に対してかなり大きい。ここはちょうど4分の1ほどを占めている。一般市民のエリアは、大体都市の半分ほど、残りが商業と工房エリアになる。


 あくまで部分的に分けているだけで、南エリアと言っても王都の位置関係とすれば南西の付近になる。なので俺が見に来ているのは、一般市民のエリアになる。そこでアコギな商売をしていた、大店を見に行くことにした。


 俺の商会としては、ここが一番ベストだと思っている。商業関係のエリアには冒険者ギルドなどもあり、ケガ人がくるのには悪くない位置関係だ。しかも店がグルになって食料品などの値段を上げていた場所だ。


「敷地の広さも十分だな。一番大きい所は、他の階が終わるまで食料品などを売る店にするのがいいかな? って商会の事は、後で来るゼニスの部下に任せればいいか。北は貴族たちのエリアだから最初っからどうでもいいと思ってたけど、位置的にはやっぱりここがいいな。市民に愛される店! なんてな」


 そんな事を言うと、一緒に来ていたミリーやリンドが笑った。王城に戻り他のエリアの話を聞いた所、やはり俺が見た所が一番良さそうだという事になり、そこを丸々占領する形になった。占領と言うか、接収したので俺の物なんだけどな。


 そんな事をしていたら、バッハが三幼女を連れて帰ってきた。それより気になる事が、シェリルの頭の上に、青い蛇みたいなものが乗っていた。


「シェリル、その頭の上のやつはなんだ?」


「何言ってるの? リバイアサンだよ?」


 なんとリバイアサンは、ダマと同じように小さくなれるようだ。知っていたならなぜ行く前に教えてくれない。


「そうなのか、そのサイズでも魔法は問題なく使えるのか?」


 そう聞くと、任せろと言わんばかりに体をブルブル震わせていた。早速、ダンジョンの入口へ移動してさっそく魔法を使ってもらう事にした。


「おぉ~すげえな、小さくても魔法は関係ないんだな」


 そんな事を言って様子を見始めて15分程経過すると、リバイアサンが魔法を使うのをやめた。何かと思ったら、ダンジョンマスターが死んだらしい。


 そして、何で三幼女は、リバイアサンの言ってることが分かるのか……念話は今使ってないよな? それにしても、ダンマスがこれで死ぬとは、サクッとダンジョンコアの制御を奪いに行くか。


 その道中で、『あんた! 何てことするのよ! さすがにダンジョンを水攻めするとか、鬼畜の所業よ!』とチビ神が吠えていた。

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