第738話 意外な解決法

「〇作は穴を掘る~カンカンカ~ン、カンカンカ~ン」


 替え歌にもならない歌を歌いながら、アダマンタイトで作ったつるはしで、ダンジョンの壁に穴をあけていた。


「ご主人様……なんですかその……歌ですか?」


 一緒に掘っていた妻たちに冷たい目で見られてしまった……


「俺の国にある、由緒正しいきこりの歌を、ちょっと変えて歌ってるんだよ。みんなも一緒に! 〇作は穴を掘る~カンカンカ~ン、カンカンカ~ン」


「「「「「…………」」」」」


 おっと、冷たい目の温度がさらに下がった。これ以上は耐えれないぞ。


「んんっ! 黙々とダンジョンに穴をあけるのがあれだったから、なんとなく気を紛らわそうと思ってな」


 咳払いをしてごまかしてから、素直に思ったことをみんなに伝えた。


 そうすると、歌を聞くならゲームの主題歌になったみたいな歌を聞きたい! と妻たちからリクエストがあったので、俺が趣味部屋でよく聞いているプレイリストからランダム再生を行い、スピーカに接続し音楽を流しながら、一生懸命ダンジョンを掘っていく。


「思った以上に硬いな。今までに意図的に無理やり壊す事なんて、なかったから知らなかったけど、こんなに硬いんだな。でもさ、鉱石ダンジョン系は、ここまで硬くなかった気がするんだよな……あれは、壁の一部を鉱山にして、掘りやすくしているだけかな?」


 硬いとは言っても、人外に足を踏み入れている俺たちの力と、アダマンタイトのつるはしのおかげで、ビックリするほど早く穴を掘っている。この階の穴掘りは5メートル程掘って終了となった。俺はそのまま150階の穴まで行って穴掘りを交換した。


 今日は夕食までに何度も交代をしながら150階の部屋まで掘っていった。6時間ほどで、120メートル程掘り進めることができた。明日1日掘り続ければ部屋まで穴を掘れるだろう。それにしても150階に入ったら、思ったよりチクチクするな。


 穴を掘ってない間は、みんなで作戦を立てている。


 基本方針は、1匹倒して撤退予定だ。で次の戦闘で復活しているかで復活していなかったら、1匹ずつ倒していく方針だ。


 もし9体を1回の戦闘で倒さないといけなかった場合は、相手を最低でも6体と3体に引き離して、俺たちも相応の人数に分け、3体のチームから倒していく予定になっている。もし逃げられなくなってしまった際も、この戦闘方法で対応していく予定だ。


 もし9匹をまとめて倒したり、逃げられなくなった時には、人造ゴーレムとスケルトン達には無理させることになるだろう。もし閉じ込められたなら、なりふり構わないつもりでいるけどね。


 最悪休憩場所を確保するために、アダマンタイトの板を組み立てるだけでいいように準備をしている。いくら堕天使であっても、厚さ15センチメートルもあるので、壊すことは無理だろう。だけど、できれば使いたくない備えだ。


 馬車やブラウニーたちは、戦力としてカウントできないので149階で待機だ。


「よっし、何とか穴が掘れたね。穴の修復は予想通りだったな。壁のない穴は、1日で半分以上塞がってたし、穴の先だけ蓋をしてなかった穴も、天井や壁をおおった金属を飲み込むようにして、穴が塞がってきたからな。


 それにしても穴を掘って、その穴を金属で埋めるなんてことをした人間は、今までいなかっただろうしな、知らなくてもしょうがないか」


 日が明けて朝食をたべ、装備の準備も問題なし!


「倒しに行きましょうかね。まずは1体倒そう。倒した段階で通路が通れたら撤退するよ。もし通路が塞がれたら、休憩所を先に作ろう」


 その後簡単なブリーフィングを行い、大きな堕天使が9体待機している大部屋に突撃する。


「手筈通りいこうか。年少組は、スケルトンたちと協力して、シュリのサポートを! 出来るだけ早く1体倒してくれ。俺たちは人造ゴーレムたちを使って、防御に徹するよ。無理はしちゃいけないからな! じゃぁ、一当て行こうか!」


 気合を入れて部屋に入る。そうするとすでに戦闘態勢に入っており、俺たちが望む形で戦闘態勢に入っていたのだ。3体1組が個々に編隊を組んで、俺たちを待ち構えていたのだ。


「幸先がいいか? シュリ、ちょっと離れたあっちのやつらを頼むぞ! スケルトンたちもよろしくな。俺たちは……年長組と年中組にわかれて迎撃しようか。リンドはシュリの抜けた年長組に入って、タンクをしてくれ。


 アリスは打ち合わせ通りサブタンクの立ち位置で頼む。俺とカエデ、ミリーは状況に応じて戦闘に参加しよう。人造ゴーレムは全員タンク仕様だから、壁にして最悪壊しても問題ないぞ」


 思ってたよりは、いい状態で戦闘が開始できた。倒そうと戦闘してた時は、強く感じていたが、守りに徹しているとそこまで強く感じなかった。


 堕天使も動きが早いのだが、獣型の魔物の素早さを考えればそうでもないため、アタッカーの堕天使の攻撃から大して圧が無い感じがした。守るだけと考えると、ここまで余裕ができるもんなんだな。


 戦闘を開始してから、俺たちが入ってきた正規の通路は……案の定塞がっていた。王国の神のダンジョンと同じように鉄格子で閉まっていた。だが、俺たちが掘った通路の方は変わらず、ぽっかりと穴が開いたままだった。


「カエデ、ミリー、ここをちょっと任す。自分たちの判断で動いてくれ。俺は通路が塞がってないか調べてくる」


 そういって神歩を使って通路の中へ入る。


「全部金属のせいか歩きにくいな……お? 階段にたどり着けたな。問題なく上がれるな。って事は、最悪は避けれたってことか。よしよし、ついてるな」


 部屋に戻って大きな声で今回の結果を伝えた。ただ戻ってくる間に、正規の通路にアダマンタイトコーティングをすれば同じなのでは? と思ってしまったのは心の中にとどめておいた。


 俺がいなくても、問題なく戦闘ができているようだ。その様子を見て俺は、シュリの方のチームに加勢する事に決めた。早めに敵を減らせた方が、こっちに有利になると判断したためだ。シュリのチームの後衛堕天使に向かって突撃する。


 死角からの神歩、そこから【ローリングソバット】を放つ。文字通り回し蹴りだ。単純な技なのに上級スキルに分類されるスキルなのだ。足に負担はかかるが、腕より何倍も強い蹴りの一撃必殺のスキルなので、もくろみ通り体をくの字にして、10メートル程吹っ飛ばすことができた。


 一瞬驚いたシュリだが、自分の役割を忘れておらず、隙のできた堕天使に攻撃を仕掛ける。体の中心ではなく、人間で言えば股関節にあたる部分を強打している。


 今回はこの戦闘に合わせて、少しだけ両手槌を加工している。ダメージより、限定的破壊力を強くするため、ハンマーの先を斧のような形状にしている。目論見通り普通に堕天使の足をちぎり飛ばした。


 さすがに、千切れた足を再生させる魔法は無いため、ほどなくして魔法使いの堕天使Aはドロップになった。

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