第445話 また一歩現代化の足音が
あの街(到着してから名前を聞く予定だ)に出発する朝を迎えた。
今、貨物車発車ホームにみんなが揃っている。初めての乗り物なので、みんな緊張をしているようだ。ちなみにこの発射ホームは、新しく街の中に建てた倉庫の地下にある。中に入るためには、特殊なカードが必要になっている。
いわゆるカードキーだ。子どもたちが遊びでも、間違って入らないようにするために、セキュリティを厳重にしている。他にも安全のため、力仕事に人造ゴーレムも四体ほど設置した。向こうの街には、リビングドール(ミスリル)を十体おいている。
「さぁ、慣れるまで怖いかもしれないけど、みんなはこの客車に乗るよ」
みんなが怖がるかと思っていたがそんなこともなく、馬車に乗り込むような気軽さで乗り込んでいく。この列車は最大時速一五〇キロメートルで走るように設定している。距離にして九〇〇キロメートル程あるので、六時間ちょっとの列車旅になる。地下鉄だけどな!
退屈しないようにTVやゲームも準備している。俺は気に入ってるソファーに深く座って、ブッ君で読書を始める。
六時間の間に俺は、三冊ほど読み終えてしまった。まとめて本を読むのは、久しぶりな気がするな。
今回読んだのは、ライトノベルの学園ファンタジーで、荒廃して人が住めなくなった大地に、人間の唯一の生活の場である「移動する都市」が、無数に行き交うという未来の世界を舞台にした作品だ。俺の好きな作品で、しばらく読んでいなかったので読みたくなったのだ。俺もあんな風に無双してみたいな。
客車から降りるとアンソニとガリア、その他使用人? に出迎えられた。こちらの街のホームは、俺が拠点として購入した建物の地下だ。
「所でアンソニ、この街って何て名前だ?」
「え? 今まで知らなかったのですか? この街の名前はメギドといいます。昔の偉い人が名付けたと言われているんですよ」
そうなんだ。正直名前の由来何てどうでもいいけど、メギドって聞くとアニメや漫画が好きな人間がいた気がするな。もしくは宗教がらみの人間がかかわっているイメージしかわかんな。それに昔の偉い人って、この街を作ったと思われるダンマスの事だろ? 何か複雑だな。
「よし、無駄な話はやめようか。明日には帝国の使者が来るんだよな?」
「使者は今日には到着する予定です。明日話し合いの場を設けています。部屋は迷賊が使っていた家に、作ってもらった広い部屋を会議室に仕立てています」
「今日はすることがない、ってことでいいのか?」
「一応、対応の方針をこちらでまとめておいたので、それに合わせて頂ければ、私たちが話を進めていきますので問題ないです。確認ですが、領土が決まったら壁で囲うっていうのは、本当ですか?」
「そうだな。その頃に土木部隊が使えるようになってることはないと思うから、俺たちがやる予定だ。方法としては、ダンマスのスキルで十メートル程の壁を作って、それを破棄してクリエイトゴーレムで自動修復用に、魔核を埋め込む予定だ。門の数は決めてないから、どこに作るのがいいか決めてくれ」
「無難に考えて街道に合わせて、門を作ればいいと思います。他に魔物の領域の森の近くにも、街を作るのであればそこにも門を作っていただければ問題ないかと」
「了解。話の流れは任せる。できるだけ切り取ってくれ、そうすれば壁が壊されたとしても時間を稼げるからな」
「え? 帝国が攻めてくると考えているんですか?」
「今の帝国は攻めてこないと思うけど、ずっとそうとは限らないだろ? ディストピアと繋がるんだからここだって、帝都に比べても上位にくるほど生活水準に上がるわけだから、攻めて手に入れようとするかもしれないだろ?」
「そうですね、後々の事を考えるとさすがに保証はできないですね。自分の考えが浅はかでした」
「いいよ、話し合いは任せるからよろしく」
「頑張らせていただきます。シュウ様も明日の資料を読んでおいてください」
「ういっす」
アンソニに見送られて階段を上って行く。
「ん~さすがに階段が長いな。エレベーターかエスカレーターが欲しい。後々の事を考えるとエレベーターがベターかな。暇な時に設計してみるか、ディストピアでは荷物を運ぶ時に、収納の腕輪使ってたからな~そこまで思いつかなかった」
最近ブツブツ独り言を言っている回数が増えてきたためか、大丈夫なんだろうかという表情で、たまに妻たちに見られてしまうのだが、不本意である。
家に戻って来たとは言ってもすることがないので、そのままエレベーターの設計をすることにした。
「さてどうしたもんかな? レールで前後左右に揺れないようにして、上がったり下がったりするのは、歯車みたいなのを使うか? それともワイヤーで吊ってから、巻いたり伸ばしたりするか?
ワイヤーの先端をエレベーターの通る空間の天井に付けて、エレベーターの滑車を通して巻き上げれば、遅くなるけど力は半分で済むんだよな。滑車を複数使った方式にするか。ワイヤーが切れたり、滑車が壊れた時のためにブレーキシステムを仕込んでおくか。修復機能はつけておくけど念のためだな」
距離的にもそこまでないので、吊り下げ式のエレベーターを採用した。あまりにも距離が長くなるようなら、ワイヤー自体の自重も大きくなるわけで、その場合は歯車に近い何かを採用する予定だった。
一般的なエレベーターは、巻き上げの他に重りも使って、重くてもスムーズに移動させられるようになっているので、その仕組みも組み込んでいる。
独り言をブツブツ言いながら準備を始めていく。試作なので、ただの開閉できる鉄の箱とワイヤーに滑車、レール、巻き取るモーター、重りを手際よく準備していく。せっせとクリエイトゴーレムをかけて、組み立てていく。作業時間およそ三十分、そのうち組み立ては、五分ほどで完成している。
「よし、ハードは完成したから、今度はソフトの調整だな。ここで貨物車の経験が役に立つとは」
このシステムは簡単にしているように見えて、魔法的に考えるとかなり難しい事をしているのに、シュウは気付いていない。
「よっしゃー! 完成っと、しばらく昇降試運転しといてくれ! あ、一時間たったら止まるようになってるから、そしたら今度は荷物だけをたくさん入れて、ちょっと動かしてみて。操作はここを押すと下に行って、こっちだと上に行くようになってるから、よろしく」
自分の部屋に戻って、愛用の椅子に座りエレベーターを改良できないかと思いを巡らす。
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