第441話 試走と新移動手段
「まずは直線を走らせてみるか? このレールは一キロメートル位あったっけな? 魔核の命令はこういう事でいいかな」
魔石に書き込んだ命令は、時速六十キロメートルまで加速して、一キロメートル目途にゆっくり停止する。
上記のような命令を書き込んでいる。実際あの街……あれ? あそこの街って何て名前だったっけ? 名前が分からなくてもいいか。あの街まで貨物車を走らせる場合は、何か目印を作ってそれを通過したら、スピードを落とすシステムを追加すればいいか?
「さて、走らせてみよう。ポチっとな」
俺はダンジョンの監視機能を使って走りを確認する。
「おぉ~走ってるな、魔力の消費量はまだ三割位だったはずだから時速二〇〇キロメートル位は出せるのかな? ギアとかも使うし、単純な話じゃないか? 魔力が足りないようだったら、魔力供給用の魔核を増やせばいけるか。
お? きちんと止まったな。あ~こっちに戻す事考えてなかったな。自分で取りに行かないといけないのか。きちんと往復のプログラムも組み込まないとな」
ダンジョン農園をトボトボと歩いていく。今は近くに妻たちはいない。ダンジョン農園で物を作っているのを知っているし、俺がダンジョンに出ようとすれば、誰かが入り口にスタンバイしているので、ここにいる時は妻たちが近くにいない事も多い。
疲れはしなかったけど、無意味に歩いた一キロメートルは長く感じたな。
「たった一キロメートルだけじゃ、摩耗具合もわかるわけないよな。それに一応修復機能も付けてるしな。しなきゃいけないのは、長距離走行試験ってところかな? 試走させるなら近い環境の方がいいかな?」
ポチポチとダンマスのスキルをいじり、三十キロメートル程の一本道? 通路? を三本作成する。始点、終点の一キロメートル前あたりにスピードを落とす目印をつけておく。
魔力の九割ほどで走るようにも設定しておこう。後は停車時間は一分で、それを超えると逆走して戻るようにしている。
ゴーレム機関は前進後退の調整が楽でいいな。簡単に言えば、直流の電気(ゴーレム機関の場合は魔力)を逆に流すだけで、回転が逆になるので魔核にそういう命令を書き込むだけでいいのだ。
一応貨物車だから、貨物、コンテナを積んで、中にダミーでも荷物を入れておくべきだよな? となると、コンテナの中の物も作らないといけないか? 箱の規格は統一しているのだから、問題ない。
えっと……コンテナの中には箱が縦五つ、横五つ、奥に四つ積める一〇〇個が一単位で、それが三セット。箱の大きさは決まってるから、簡単に荷物を積めるように工夫した。
全部ゴーレム任せにすることもできるが、全部をゴーレムにやらせると仕事がなくなる人も出るので、積み下ろしは人の手で出来るようにしてある。
荷物を押し込みやすくするためにローラーをつけて、ローラーだけだと出発、停止の際に落ちてしまうので、荷物が落ちないようにロックがかかるようにしておくか。
それとロックがかかってない場所があったら、出発しないようなシステムの魔核を組み込んでおけば、荷崩れの問題ないかな? 実験してみないとわからんしな、やってみんべ!
走らせてみるか……っとあぶね! 止める時は、俺の命令で停止するように情報を書き込んで、これで大丈夫かな。
「じゃぁ、三台の貨物車よ頑張ってくれ! 一応試しに一〇〇個程頑張って荷物を積んだんだからな!」
出発を見送って、今日することが無くなった。夕食までには、まだ時間があるな。久々にハニービーの所に行ってみるか?
歩いての移動が面倒だったので、クロスバイクを召喚して移動をすることにした。
「ん~これもゴーレム機関に変えれば、二酸化炭素を出さないクリーンなバイクが作れる! あれ? もしかして、バイクにクリエイトゴーレムをかけたら、ガソリンのいらないバイクが完成する?」
ブツブツ言いながらクリエイトゴーレムをかけてみる。核をつけてもエンジンが動かなかった。それもそのはず、アクセルを回した所で魔核が理解してくれないのだ、それだと動くはずはないよな。
という事で、魔核にアクセルを回した度合いによって魔力を注ぎ込んで、ゴーレム機関を回すように設定して、ギアチェンジは面倒なのでAT車みたいに、勝手にギアが変わるようにしてある。クラッチは自転車みたいにブレーキに変わってもらった。自転車の乗り方に近いバイクが完成してしまった。
バイクにそのままクリエイトゴーレムをかけたとはいえ、ガソリンから魔力で動くようになり、エンジンのピストン部分が、ガソリンが爆発するときの力を使うのではなく、魔力の力でピストンを動かす形だ。
地球にあるバイクとは違い、ガソリンを燃やして走るわけではないので、静かだった。これなら車も同じ要領で作れるだろうけど、さすがに馬車の世界にいきなり魔力で動く車、箱が走ってたら大騒ぎだよな?
今までしてきたことは棚に上げて、俺はそんなことを考えながらバイクを走らせていた。
ハニービーの縄張りに入っていくと、ハニービーたちが騒ぎ出して、遠くからクイーンが現れた。飛んでくるスピードが、あまりに早かったのでビビってしまった。
クイーンから感じられるのは、喜びのような感情だ。一応主になる俺が久々に来たからかな?
そんなことを考えていると、クイーンが背中に乗ってくださいと言った感情を飛ばしてきたので、バイクをしまってからクイーンの上に乗る。なぜかわからないが、馬で言う馬具がクイーンの背中についていたので、乗る所に困る事はなかった。
どこに連れていかれるかと思えば、俺に献上するハチミツの所に連れて行ってくれるみたいだった。
「今回のは特にいい匂いがしてるな! いつもありがとな! あっちのハチミツも持って行っていいのか? 助かるわ。分かってるって、お前のくれるハチミツ、なんていうんだっけ? 鑑定してみるか。王蜜っていうんだな。この王蜜は、俺たちだけで食べるから安心してくれ」
クイーンから王蜜は絶対に売らないで、身内で食べてくれと言われたので了承しておく。どうやらいつも以上の自信作の様だ。明日の昼にでもパンケーキを作ってもらうか?
王蜜以外のハチミツは頓着する事もなく、俺の利益になるように使ってくれとの事だ。
王蜜とハチミツを回収してから、バイクを取り出して入口へ走らせる。馬車や歩きとは違って、バイクも悪くないな! ダンジョン農園を移動する時の道具として、候補にいれておこう。
装甲車みたいなのもあれば、魔法を使わなくても街の門をぶち抜けそうだな……っとこれはさすがに危ないな。
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