第161話 リンド出発する

 リンドの強引さはすごかった。一睡もしてない宴会の直後に話した一連の事を一時間後には計画に仕上げ、総合ギルドのトップ達に周知させたうえにすべてが煮詰まるまでは、守秘しろと強引に言い聞かせたらしい。


 リンドは実質のトップであるが気分が乗らなければ、全部部下に任せる気紛れ屋との事で、度々雲隠れしては困らせているようだ。


 仕事しろよ! と思わなくないがドワーフ気質なのだろう、先ほどまでやっていた宴会の事を考えれば、みんな酒にかこつけてサボっているようなもんだからな。


 リンドがまず俺に言ったことは「あんたの家に行くぞ」だった。急に何言ってるかと思えば、どういった風に改装したか見たいとの事だった。


 一目見て言った言葉は「どうやって改装したんだい?」だ。確かに外観は変わってないが、中身は全くの別物になっている。


「買ったのって昨日だったよね? それなのにこんなに変わるもんかね? 外観が変わってないのに中身が全然違うってどういうことだ? こんだけの技術があれば、土木や大工の人員なんて必要ないんじゃないか?」


「方法は秘密ですが、魔法を使って作業しなければいけないので負担が大きいんです。それに家を作る知識がないのであるものを再利用したり、無い知識を絞っていくつかの家を作ってるんですよ。


 壁とかはそこまで知識が無くても問題なかったんですが、家はやっぱり専門の知識のある人に任せたいと思ってるんですけど、変ですか?」


「ん~そんなもんかね? 長い期間使いたいなら、きちんとした知識のある人が作った家の方が長持ちするのは確かね。そこらへんは現地を見てみないと何とも言えないし、さっさと連れてって」


「は?」


「だって、現地見ないとわからないでしょ? だから早く連れてってよ。でも地下通路掘る時間も必要よね? どれくらい時間がかかる?」


「本当に掘っていいなら、準備も必要だから一時間はかからないかな?」


「わかった、私も一回戻って荷物を追加してくるわ。馬車は便乗させてもらっていいよね? じゃぁ一時間後に来るからよろしくね」


 うん、自由気ままな人だな。まぁコッソリ地下通路を繋げたジャルジャンの事を考えれば、許可を出してもらえたヴローツマインは気兼ねなしにできていいな。


「リンドがいなくなったから、さくっとやっちゃおうか。この建物から地下に行くようにするわけだから、キッチンから離れた位置がいいかな? 入口の位置が悪いから、リンドに相談して新しい入り口でも作ってもらえばいいか? みんなはどう思う?」


 幼女三人は徹夜明けなので寝ているみたいで、残りのメンバーに聞いてみるが特に意見は出なかった。どこに地下通路への入り口を作るかだけだしな。リンドが帰ってくる前に通路を繋げてしまおう。


 ピッポッパっと、さすがダンマススキルは魔法とは比べ物にならないくらい便利だな。汎用性と引き換えに特化型だよな。まぁ比べるのが間違ってはいるが、両方とも使える俺から見るとそういう感想が出てもおかしくないよな。


 さてどうしたものか……全員を連れて帰るわけにはいかないから、幼女三人組を連れて帰るべきだろうか? こっちはカエデに見てもらって、ピーチもいるし問題はないかな? 一応準備しておいたリビングアーマー(アダマンタイトコーティング)を1Fに設置しておこう。


 各拠点にリビングアーマーを配置してるけど、これで何体になったんだろう? 早めにこいつらの特性に気付けたのは良かったよな、汎用性が高い上にじっとしているのが苦にならない最強の肉壁。


 おっと忘れてた、二階の俺の部屋に行き無線を取り出して連絡をつける。ブラウニーたちに湖の周辺の木を刈っているゴーレムを、ダンジョンに戻して待機するように命令を出してもらう。切り倒した分は倉庫に詰めておくようにお願いし、そのまま湖を作るから注意するように伝言しておく。


 二十分程経つと全員撤収したようなので、以前作成していた海までの海底ダンジョン風味と、湖を作るための地面を一気に掘り下げる。水深は、とりあえず三〇〇〇メートル程にしておこうか、ポチポチといじっていくと海底ダンジョンと湖が完成する。


 通路はある程度大きく設定しているので、DPで作り出され海水がどんどん入っていくのがマップ先生の立体映像で確認できる。海の生態がよくわからないので、メロウに相談してダンジョンの海とつなげるか? そうすればダンジョンから魚や魔物を移動させられるしな悪くない。


 今日の夜にはそっちに戻るから食事の準備をお願いしておく。一緒に今作っているダンジョン酒蔵から、よさそうなものを出しておくようにお願いする。


 色々な準備(偽装)を終わらせると暇になったので、ハクとニコを呼んで遊ぶことにした。呼んだのになぜ来ない? マップ先生で確認すると家と倉庫の間、庭の位置に当たる所に二匹の光点に重なる様に3つの光点がある。


 これは幼女三人組だろうな、何してるんだろう? 様子を見に行くと芝生の上に寝かされている? ニコに幼女三人が頭を乗せている。普段は丸いのに今は細長く枕として使いやすいような形になっていて、ハクはその三人の上に寝そべっているようだ。


 気持ちよさそうだが起こさないといけないな。


「ニコ、ハク、シェリルにイリア、ネル、起きろ~」


 三人とも涎を垂らしてたみたいで口元をぬぐっている。


「「「ご主人様?」」」


「みんな、おはよう。寝てるところ悪いけど、馬車の準備をしてくれ。昼食食べたら一旦ディストピアに帰るよ」


「「「はーい」」」


 起きた三人は、ニコとハクを抱きかかえて馬車の準備に入った。置いてってほしかったのにな、俺の従魔なのに幼女がそんなにいいのか! クロやギンもそうだ、俺よりシェリルやイリアの言う事をよく聞いてる気がする。くそう……


 準備の終わったリンドが戻ってきたので、早めの昼食を食べてからディストピアへ出発した。


「ちょっと……何でこんなに滑らかなの? それにこの馬車の速度おかしくない? 全然揺れないし、なんでなの?」


 魔法で作ったことにしている通路を見てリンドが叫んでいる。色々濁して伝えておく。あまり深く俺たちの能力を伝えるわけにはいかないのでしょうがない。


 三十分程興奮していたが、徹夜の宴会明けだったこともあり寝てしまったので、枕とクッションを出してそこに寝かせておく。


 起きる頃にはきっとディストピアだろう、ウォーホースに後は任せて俺も寝る事にした。三幼女も眠い様子だったので一緒に寝る事にした。

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