第102話 リーファスの街に初到着

 フレデリクの街にトイレを作ってから二週間。街の外側に近い人たちの方が、トイレの利用率が圧倒的に高かった。利用率の高いのは簡単な話だ。


 家の近くや道ですれば臭いわけで、家や広場にトイレを作ってくれたから、利用すれば臭いが軽減されるのだから、利用する人が多いのだ。住んでいる人の数も多いので、臭いが気になっていた人が多かったのだろう。


 街の掃除に手間がかからなくなったので、そこに使われていた奴隷たちは、広場にある公衆トイレの掃除に回され、臭いも衛生面もかなり改善されていた。


 ちなみに地下に放置飼いしているスライムは、みんなに畑を作らせている間に、俺・カエデ・レイリー・四大精霊・リビングアーマーで捕まえにいっている。各ウォーホースには、馬車をひいてもらって3台全部連れて行っている。


 スライムがいる沼まで馬車で約四時間程で到着した。沼なのでアクアとノーマンの力に頼って、スライムを近くに寄せてもらい、逃げられない様に塀を作ってもらった。


 ニコのような可愛いつるりとしたスライムではなく、粘液状のスライムだった……かわいくない。


 馬車の素材である木や魔獣の革はスライムに消化されてしまうので、消化されないミスリルでクリエイトゴーレムを使い二台にコーティングして、積めるだけ詰め込んで街に運んだ。


 冒険者ギルドにもっていったら、かなりの量だったのでひかれてしまったが、この位でも足りないと言ったら、ミリーさんに変なものを見る目でみられてしまった。ちょっと癖になるからやめて……ご褒美とかいうほど変態じゃないからね!


 スライムは繁殖するので、どのくらいで間引くかは冒険者ギルドに任せよう。


 実験の結果を待っている間も精力的に動いていた。俺の目的であるお米の普及が可能かどうかの判断をするために、まずは商業ギルドにオニギリをもっていって、食べてもらい食用として適しているのかを判断してもらった。


 食べ慣れていないだけで八割ほどの人間が受け入れてくれた。食用としては問題ないだろう、との判断をもらえた。


 その判断をもらった足で、農業ギルドに行き水田を作る許可をもらいに行った。実験の意味もあるので、水田の指導にはこちらから人を派遣することを伝え、農業ギルドから引き続き作ってくれる人材を出してもらえるようにお話している。


 フレデリクの街での実験は、ほぼ成功と言っていいだろう。この後にどういった不備が出てくるかわからないが、臨機応変に対応していけばいいだろう。


 フレデリクの冒険者ギルドマスターから、リーファスの冒険者ギルドマスターに、今回の経緯と結果を伝えてもらう。必要性をきちんと伝言してもらい、俺に協力する旨の手紙もかいてもらう。


 リーファスに行ってから、また初めから説明しなおすのは嫌なので、先に話を通してもらってから行く事にしたのだ。農業ギルドにも畑と水路の件を伝言してもらう。


 水田は、フレデリクで成功してから伝えるつもりなので今回は実験してるものがあるって事だけ伝えてもらっている。


 戦争が終わってから、まだリーファスに行ってないけど貴族が暴走してたりしないよな? ってこの街以外に行った事ねえけどね。俺がいないからって、今回の戦争に使った金を回収するのに税金とかあげてたらマジしばき倒したろ。


 リーファスの街には二週間はとどまることになるだろうから、ある程度大きな家か宿を借り切って生活することになるだろうか? シルキーたちは連れて行く予定だから、拠点の防衛として結界の張れる四大精霊も連れてくか? ノーマンとガルドに残ってもらってこっちの屋敷は守ってもらう。


 シルキーたちには、四週間分くらいの食事を作れる食材を準備するように指示して、娘たちには服や装備などを整えるように指示する。


 三十分後、馬車の準備も整いリーファスへ向けて出発する。普通の馬車でおそらく五日程かかる距離だろうか? こうやってマップ見ると戦争した場所って大分リーファス寄りだったんだな。


 うちの馬車なら夕方にはたどり着けるかな。そう考えると、この馬車ってチートだな。馬車自体もかなりハイスペックだけど、それをひくウォーホースのスピードや力がヤバいからな。


 時たますれ違う馬車には驚かれ、馬たちが居心地悪そうに気持ちコースを勝手にずらして、御者に怒られてた。馬さんたちごめんよ。それ以外は特に問題もなくリーファスへ到着した。


 普通の馬車の五倍以上はスピード出してるってことだよな? この世界からしたらかなりのものだよな。ウォーホースだけじゃなく馬車自体に細工何とかしないと、揺れが激し過ぎて乗り物酔い以上な悲惨なことになるだろう。


 商業ギルドは基本的に遅くまでやっているので、多少高くても屋敷を借りようと思い門番の人に聞いてから向かう事にした。


 マップ先生でわかっていたが人口は同じくらいだったのに、リーファスの街はフレデリクの街よりデカいのだ。大きめの家もたくさんあるっぽいので多分大丈夫だろう。受付に担当者を聞いてみよう。


「すいません。家を貸してもらいたいのですが、担当者っていますか?」


「少々お待ちください、担当者は今外に出ていますがそろそろ戻ってくる予定です」


 ふむ、しばらく待てば戻ってくるのか。ついでに情報収集していこうかな。


「戦争があったみたいだけど、終わった後何か変わったことってありましたか?」


「そうですね、軍事活動したのでお金が減ったとのことで、税金が少し上がりましたね。ですが2日間くらいで元に戻りましたね。確かネルビ男爵が帰ってきてすぐでしたね、慌てて税金を下げてました」


 ひとまず約束は守ったみたいだけど、お金は返したりしたのか?


「その二日間に上がった税金ってどんなものですか?」


「そうですね、いつも収めている税金分の三割くらいですかね? 上がった税金が元に戻ったと言っても、いっぺんに取られちゃってるので戻っても意味ないんですけどね」


 おう、いっぺんに払わせてそのままにしてるのか。自分がやったことじゃない、まだ敗戦してない時とかいうんじゃねえか? まぁ後で貴族の家に乗り込もう。


「苦労したんですね、後でちょっと文句言ってきます。この手紙をギルドマスターに渡してもらえますか? フレデリクの街のギルドマスターからって言ってください」


「え? 貴族に文句を言いに行くんですか? 不敬罪で処刑されてしまいますよ!」


「それは無いから大丈夫ですよ。この手紙をギルドマスターに見せていただければ、その理由もわかりますので、お願いしますね」


 わかりました。といって受付のお姉さんは、奥の階段を上がっていった。


 しばらくすると、毎度おなじみのドタドタとした足音が聞こえてきた。この流れ毎回やらないと気が済まないのだろうか? 違うギルドだったりするけど、一パターンだよな。


「あなたがシュウ殿か? 彼女から話を聞いて、手紙を読ませていただいた。少しお話したいことがあるから奥の部屋に来てもらっていいだろうか?」


 特に問題がなかったので肯定してから部屋へ向かい、フレデリクの商業ギルドで話した内容を伝え、貴族の監視役になってもらえるようにお願いした。


 話が終わった頃のタイミングを見計らって、家を紹介してくれる人物が来てくれた。ギルドマスターが色々注文を付けて俺の借りる家を都合してくれた。


 初めはタダでいいと言われたが、さすがにそれは困るので適正価格を担当者に聞いて、その金額を無理やり受け取らせることに決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る