第39話 シュウの秘密の部屋

 娘たちが訓練を始めてから3週間程、シュウはほとんど家の外には出ていなかった。毎日溜まっていくDPと相談しながら自分の部屋の地下に、自分専用の素敵空間を少しずつ作成している。


 シュウが作った素敵空間の1つ目は、ゲーム部屋兼テレビを中心とした娯楽部屋。テレビは2台おいてあり、ゲームや映画、DVD用とパソコン用の大型のテレビを置いてある。


 召喚しているときに、パソコン用のゲームも沢山あるのを思い出して2台にしてみたのだ。ゲーム機やソフト、映画、DVD等は一切買っていないが、買ってすぐ置けるように専用の棚を用意していつでも買えるようにしていた。


 2つ目の部屋は、大きくて俺好みの寝心地のベッドに大きな布団セットと、寝ながら映画やDVDを見ることができるように準備したテレビがある。


 3つ目の部屋は、小説や単行本等を入れられるような本棚を用意してマンガ喫茶にひけをとらないほどに大量に並べれるようになっている。


 来る前から買っていた小説や漫画の単行本等は、すでに購入していて夕食後の暇な時間とか本を読んでいた。その本たちを3つ目の部屋に収めている。すでに本の数は、1000冊を超えるほど召喚しているが、DPに換算すると1000DPも使っていなかったな。


 娘たちの訓練の見学をした後部屋に戻った。う~む、稼いでるんだからゲームを買いそろえてもいいかな? とか思って、気になってるゲームを100本ほど召喚している。


 鼻歌を歌いながらゲームを選んでいるシュウの姿は、あきらかにこの世界では異質のものだろう。貴族の夫人がドレスを選ぶときでさえ、ここまで上機嫌になることはないであろう。


 楽しい時間は早く過ぎてしまうようだ。時間は20時、夕食の時間から30分も経っている。シルキーたちの誰かが呼びに来ただろうけど、地下にいたから気付けなかったかも。俺の部屋の前にチャイムでもつけて、地下にいても気付けるようにしておこう。


 遅れていたので慌てて食堂に向かう。


「遅れてすまない、まだ食事残ってるか?」


「お寝坊さんのご主人様がいらっしゃいました。もう少し遅かったらみんなで食べてしまうところでしたよ。さぁさぁ準備しますから座ってください」


「みんなごめん、俺のせいでご飯遅くなっちゃって。今度からないように気を付けるけど、出てこなかったら先に食べてくれ。シルキーたちにはすまないけど、そういう事があったら俺の分だけ取っておいてくれないか?」


「了解いたしました。でも、みんなで食べた方が美味しいですから起きてきてくださいね」


 配膳が終わり、みんなで「いただきます」と声をかけて食事を始める。はしたなくしゃべりながら食事をするのでなければ、お話ししながらわいわいと食べても問題ないことを話している。ここにきて四週間も経っているので楽しそうに食べる姿が見られる。


 可愛い娘たちが、楽しそうに美味しい物を食べる姿は悪くないね! とか思いながら俺も夕食を食べていた。


 夕食も終わり、今日の短剣と体術の訓練の事をあらためて娘たちに聞くと、やはり街中でもご主人様の身を守れるように大きい武器ではなく、街中でもいざとなったら使える体術や短剣を学ばせてもらっているとの事。


 俺は素直にそのことにお礼を言って、みんなのために手甲と短剣をカエデに作ってもらえるように頼んだことを伝えた。


 俺はお風呂へ入りに行く。カエデは、短剣や手甲の準備があると言ってお風呂にはついてこなかった。最近は鍛冶仕事が忙しいのか、一緒に入ろうとすることは減って、後でのんびり入っているらしい。決して一緒に入れないことを残念に思っているわけではない。


 男の入浴シーンなど書いても誰得なのでカット!


 さっぱりして部屋に戻り、迷いなく地下へ行き本部屋に突入した。


 集めていた小説の新作が出ておりノータイムで購入していたのだ。購入したときは、新作が読めることが嬉しくて何も疑問に思っていなかったが、前の世界とこの世界の時間の進み具合ってどうなんだろう?


 よくありがちなパターンでは、向こうの世界では一瞬でもこっちの世界では、数年単位で進むみたいなのがあるけど、新作が出てる事考えればそれなりに進んでいるのは間違いないだろうか?


 わくわくしながら読んでいたら、あっという間に24時を回っており寝ないと明日に影響が出るから大人しく休むことにした。少し硬めの特注で出したベッドでだ!


 ピーンポーン!


『ご主人様、朝食の準備ができました!』


 スカーレットは、きちんと部屋の前の張り紙を読んでチャイムのボタンを押してくれたようだ。


「わかった、もうすぐ行くから食堂で待っててくれ」


『え? ご主人様の声が! 何処にいらっしゃるんですか?』


「ごめんごめん、そのボタン押すと部屋の中と、お話できるようになる魔法の道具だよ」


『ご主人様、こんなことに魔導具をお使いになるとは、さすがです。食堂でお待ちしているので早く来てくださいね!』


「ありがとう、顔洗ったら向かうよ」


 食堂に向かって歩いていると、食堂からいつもと違うざわざわ感が聞こえてきた。何事かと思い食堂へ入ると、スカーレットがチャイムのことを魔導具と解釈して、いかに素晴らしい物か、他のシルキーや娘たちに熱弁していた。


 簡単に内容をかいつまむと、「お部屋の中のご主人様と会話ができる」「もしこれが私たちが身につけられるものになれば、ご主人様が近くにいなくても声を聞くことができる」等、とりあえず俺と話せる魔導具だと思っているようだった。


「スカーレット、落ち着け! 俺の部屋の前にあるあのボタンは、チャイムって言って家や部屋の中にいる人に来客を告げる道具なんだよ。俺の部屋には、地下があるんだよ。だから、チャイムがあると便利だから作ったんだよ。地下にいたら部屋のドアを叩かれても気付けないからね」


「ご主人様は、私たちのためにそんな魔導具を作ってくださったのですね」


 感激のあまり泣き出しそうになっているスカーレットをなだめながら、みんなを席に着くように促す。


 いただきますの掛け声の後にいつもと同じにぎやかな食事が始まった。娘たちが来て3週間が経つ。訓練が終わったから、冒険者の登録をしてある程度ランクを上げてからパーティーを組む予定なのだ。


 年長・年中組はそのままパーティーを組んでもらい、年少組にはレイリーを引率としてつけることを決めている。色々なことを考えながら食事をしていたら、スカーレットにおいしくありませんでしたか? と聞かれてしまったため、考え事をしながら食べてたことを謝り素直に食事を楽しむことにした。


 そして今日も変わらない1日がスタートした。

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